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御剣神社は、東京都国見市の東の外れに位置する、小さな神社だ。
石鳥居をくぐると参道があり、左手に手水場があって、正面に拝殿と本殿があり、右手に社務所兼住居がある。
拝殿の裏手には小さなお稲荷さんがあり、周囲は塀がめぐらされ、ケヤキやブナに囲われている。
桜の木は鳥居をくぐってすぐの手水場近くに一本と、拝殿と社務所の間に一本あり、どちらも樹齢百年は超えようかという立派な大木だった。
無言でせっせと箒を動かし、ちりとりで花弁や葉っぱを集め、砂ふるいで不要な土を落とす。
半透明のビニール袋は、たちまち薄桃色の花弁でいっぱいになった。
彼女のほうを見てみると、もう一本の桜の木を中心に掃き掃除をしているようだ。
袴姿にもかかわらず、手際よく箒を使っている。
「砂ふるい使ってもいいですか?」
「どうぞ」
満面の笑顔を向けられ、必要最低限の返事をしながら、歩は不思議に思う。
何がそんなに面白いんだろう、と。
毎日毎日、朝から夕方まで掃除ばかり。しかも明日になれば、また一からやり直しなのだ。
それだけではない。境内の掃き掃除が終わったら、次は拝殿の床という床を拭き、欄干の埃を払う。
また、月に二回は榊や酒や米といったお供えを取り替え、お神酒の徳利や、へぎと呼ばれる木の台や、かわらけと呼ばれる白い皿を全部洗わなければならない。
とにかく毎日毎日、掃除尽くしの生活なのだ。