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どれぐらいの時間、立ち尽くしていたのかは分からない。
後から肩をたたかれて、歩は無言で飛び上がった。
「ごめんごめん。お客さん、気を遣って帰っちゃったか」
東が顔をくしゃっとさせ、拝むように両手を合わせている。
「大丈夫です。すみません、勝手に社務所を使ってしまって」
社務所は基本的に神社業務にしか使わない。
先ほど足立を通した応接間も、もともとは祈祷やお祓い、結婚式といった神事にまつわる相談のための場所だ。
私的な客人を招いて話すのはルール違反だった。
「いいんだよ。それより、今後もし何か参拝客の方から相談を受けることがあったら、まず私に声をかけてくれるかな」
「相談……ですか」
歩は首を傾げた。
今回の場合は相談というより、単なるゴシップのような気がする。
「霊を降ろしてほしいって、桃香ちゃんに頼んだんだろう? そういう依頼事は、私を通して行うことになってるから。基本的には、知り合いの紹介でしか受けないんだよ」
「えっ。今までにも霊を降ろすような依頼があったんですか」
「たまにあるね。数はそれほど多くないけど」
東はまるでごく普通のことのように、平然と言った。
歩が当惑しているのを見て補足する。
「梅子さんは神通力があって、業界じゃ有名人なんだよ。だから梅子さんを目当てに、そういう人が来ることもちらほらある」
「じゃあ谷口さん……桃香さんにも同じ力が?」
「さあ、それは分からんね。私はあると思ってるが、本人はないと否定してるし、そっち方面の依頼は梅子さんが一手に引き受けてるからねえ」
「そうだったんですか」
歩は呆然と呟いた。
さっき足立が言ったことも、まんざら的外れではなかったということか。
神社庁の配下に置かれた公共機関である神社という場所と、神通力や霊能力といういかがわしいイメージが、いまいち結びつかない。




