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――ああ、今日も今日とて桜が降っている。
うらうらとした春の陽射しを鏡のように弾き、風に乗って一斉に花弁が舞い散り、点々と地面に白い斑を描く。
桜の木の背後に立ち、手に持った箒の上に顎を乗せながら、高階歩は大きな溜息をついた。
感嘆の溜息ではなく、絶望の溜息だった。
春爛漫の美しい眺めだ。
今までならさほど興味もなく、ああ咲いてるな、散っているなと思うくらいだった。
でも今は違う。季節の変わり目が怖ろしい。花吹雪を見るとぞっとする。
なぜなら――。
「どうしたんですか? 溜息なんかついちゃって」
背後から笑いを含んだ声が聞こえてくる。
振り向くと、とんでもない美少女がそこに立っていた。
白衣と呼ばれる白い着物に、緋袴と呼ばれる赤い袴。
長い黒髪を、丈長と呼ばれるリボン型の髪飾りで一つに結っている。
いわゆる『巫女装束』だ。
歩が無言でいると、隣に立って、しみじみと桜の大木を見上げる。
「綺麗ですねえ……」
そして歩と目を合わせると、にっこり愛くるしく笑う。
大きな黒目がちの瞳に桜色の唇、透明感のある白い肌が、巫女装束と相まって神秘的な雰囲気をかもし出している。
「これはまた、掃除のしがいがありそうですね。高階さん」
からかうような声に、歩はほぼ無表情で応じる。
「そうですね」
そして箒を動かし、掃除を始める。
彼女は「手伝います」と言って走っていくと、倉庫から小さめの箒を持ってきた。
「社務所にいなくていいんですか」
「大丈夫です。何かあったら、おばあちゃんが呼んでくれるので」
と、彼女は背後を肩越しに振り返って言った。