本命チョコ
1話目の「公開プロポーズ」に出て来た
楓と翔が中学生の頃のお話です。
今日はバレンタインデー。
翔の周りには女子が集まってる。
その様子を、私は幼なじみの颯馬と
双子の弟の樹と見ていた。
因みに、颯馬と樹には既に渡している。
「それにしても、翔は凄いな。」
「(黙っていたら)超絶イケメンだしな。」
「…………」
私は手元のチョコを見つめる。
「…自分で食べよう…」
「何言ってるんだよ。
楓のなら、喜んで受け取ってくれるぞ。」
「今まで何食わぬ顔して渡していただろーが。」
「乙女心は複雑なの!!」
翔の事が好きだと気付いたのは、
去年のこと。
二人に相談したのがきっかけだった。
「楓。一つ良いことを教えてやる。」
「何よ?」
「あいつ、今年は好きなやつのしか受け取らないそうだ。」
「…………」
意味不明なアドバイスをする颯馬に
思い切り蹴りを入れた。
「ぐはっっ!!!」
「追い打ちかけてどーすんのよ!馬鹿!!」
走ってその場から逃げ去った。
◇
「あれ、楓ちゃん?」
「…翔…」
手に持っていたチョコを隠した。
「翔、チョコは何個もらった?」
「貰ってないよ。」
颯馬の言う通りだった。
「今年から、好きな子以外から貰わないことにしたから…」
「じゃあ、その子からまだ貰ってないんだ。」
「うん。…沢山貰えても、好きな子から貰えないなんて、皮肉だよね。何で二人には……」
全国のモテない男子を敵に回したなこいつ。
「他に好きな人が出来たのかな…
今まで毎年くれたのに…」
「…どんな人なの?」
「とっても可愛くて、頭が良くて、
しっかりしてるようで天然な子だよ。
楓ちゃんはさ、そのチョコ誰に渡そうとしたの?」
「!!?」
チョコの存在に気付いていたようだ。
「本命?」
「うん……」
「そ…か。俺が知ってる人?」
「…バレー部の、副主将………」
「………え?」
「モッテモテのバレー部の副主将にあげようと思ってました!
でも副主将さんは好きな人からしか受け取らないそうですから、ここで食べようと思ってました!!」
ラッピングを破ろうとしたけど、
翔に止められてしまった。
「ちょっと待って!!!」
翔は私の手を握った。
「そ、それって…俺…だよね?」
「他に誰がいるの!」
「それ、欲しいな…」
「好きな人からしか受け取らないんじゃないの?」
「わからない?
俺が好きなのは楓ちゃんなんだよ!」
「………えぇえ!!?」
気が付いたら、私は翔の腕の中にいた。
「楓ちゃん、好き。大好き。」
「…わ、私も…」
私は翔にチョコを渡した。
「ありがとう。」
私と翔の体温で、チョコが溶けてしまうんじゃないかと思った。




