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大阪を歩く犬7  作者: ぽちでわん
19/46

黒石と栂緑地

古い一帯だった。ここまでもずっと古い面白い道を歩いてきたので今更驚かないけれど。

古い家々が建ち並んでいた。ゴミステーションには、使用する人々の名が大きく書かれてあった。山懐に近く、素敵な水路もあった。

高橋佐五郎頌徳碑があって、高橋縫製の工場があった。この工場が黒石の中心工業なのかな? 第4工場駐車場とか書かれてあった。送風管をつくる会社らしい。東に向きを変えた黒石の集落の細いメインストリートに高橋縫製の工場と駐車場が続いている感じだった。

上り道を進んで行くと大池があり、ウシガエルが鳴いていた。少しの工場があり、あとはただただ農村という感じのところだった。

ナガノ(株)や、その奥に永野昭織布工場もあった。高橋さんや永野さんという、ここに来るまでに目にした旧家の人々が始めた工場なのだろうな。

今度は中野池が現れた。

右手の山に道が一気にのぼっていっていた。上には何があるのかな? わんぱくだったら一気にかけのぼっただろうけれど・・・。

のぼるかどうか迷いつつ休憩していると、白い発泡スチロールの箱が植木鉢がわりにか並べられていて、そこに大きな昆虫の羽をひっぱりこもうと奮闘しているらしきアリ。死んだ虫の動く羽が見えるだけだったけれど、そこにアリがいるのが分かった。

この日歩いたところはそこらじゅうにアリがいて、働いていた。生き物たちの姿が拡大鏡を通しているみたいにズームアップされるところだった。死んだトカゲも見た。

結局、山(?)への道には行かず、続きを歩いていった。みかん畑かな? あと、柿畑もあった。

次に現れた戸立池には、「養魚池」とあった。

須恵器を堺や和泉で量産していた時代(古墳時代とかね)、黒石にも窯があったそうだ。陶器を焼くための土を採っていた穴などを利用して、こんなに多くの池が造られたと言われているみたい。

そんな黒石は、「黒い石の神」からきている地名なのだとか。でも詳細は分からなくてミステリアス。

古代の磐座があり、黒石古墳群も見つかっているらしい(今はほぼ消失)。そのうちの1つは今も残っていて、市内最大の石室(全長9.2m)を持つそうだ(6世紀後半の円墳?)。

和泉市には国の史跡の和泉黄金塚古墳(4世紀後半の前方後円墳)もあるけれど、そちらは石室じゃなく粘土で塗り固めたものみたいで、ランキング外。


いっきに道がのぼりになって、そこにはビニールハウスがあった。

自給自足できそうなところだなあ。みかん、柿、魚。野菜はもちろん、ここに来るまでにはたくさんの水田と、牛小屋まであった。本来の日本の姿なのだろうな。

鴨池ふれあい農園でもトマトやきゅうりなんかが元気に育っていた。道と隔てるための柵にも元気なツルが巻きついて育ち、カボチャなんかをつけていた。

ここにはかつて鴨池があったのだって。役行者(カモ氏)がやって来た時、ここにカモ池を造らせたという話があるそうだ。

陶邑でカモ氏のオオタタネコが見つけ出されているし、和泉や堺はカモ氏も縁があるところなのだろうな。

黒石から大津街道を行けば河内長野があって、その先には葛城山や御所がある。そこはまだ行ったことはないけれど、カモ氏の本拠地ってイメージだ。


峠に向かって坂道を行くと、人の姿はなくなり、代わりにトンボや、大きなバッタ。近くでウグイス、遠くでカラスが鳴いていた。

あれ? 黒石のメインストリートをやって来たつもりだったのだけれど・・・。

振り返って町を見下ろしたかったのに、失念していて前へ前へ進んで行ってしまった。車は通らないだろう、山道って感じの坂道だった。

道の横にはトタン塀が続いていた。荒れた感じで、ちょっと怖いようだった。かすかにラジオの音がしていた。山中の道って、どきどきこんなところがある。突然現れる荒れた広い塀などに隠された一角。

峠を越え、下りになってすぐのところに、大量の粗大ごみが捨てられていた。

直進の道と、右に下っていく道に分かれていた。山山山。山に囲まれた中にいた。

そんなつもりはなかったけれど、山中にいた。散歩のつもりがこんな山の中を歩くことになるとは、と思うことって時々ある。雁多尾畑、天野山金剛寺への道などなど。

ここもそうだった。鳥とわたしたちだけがいた。鳥たちは自分たちの世界に人や犬の一人や一匹入ってきても気にすることなく、自由に歌っていた。

右手に進んでいった。左に窪地があって、なんだか不思議な雰囲気があった。

黒石ではあまり何も見つけられないまま峠を越えて堺市に入っていた。大きな石室というのも見つけられなかったな。どうやら大津街道から離れてすぐの一帯が黒石の古い集落だったところで、石室もそこにあったみたい。わたしたちはそこをほぼ素通りして、集落の外れに進んで行ってしまったらしい。

池が現れて、大きなカエルたちが見えた。ぼじゃん!と池に跳んだ。

それから畑と人家が見えてきた。山際まで集落があって、人家のない山中を歩いたのは、ほんの短い距離ですんだ。

農家の横を通って道なりに下って行くと、左手に熊野権現大神の小さな新しい神社があった。

それからバス通り(府道61号堺かつらぎ線)に出た。

左折してバス通りを少し北上し、大町橋なる小さな橋で和田川を渡った。

松尾川と槇尾川の間の丘陵に和泉市のニュータウン(和泉中央駅)があり、槇尾川と和田川の間の丘陵に光明池地区のニュータウン(光明池駅)があり、和田川(和田谷)と石津川(上神谷)の間の丘陵に栂地区のニュータウン(栂・美木多駅)があり、石津川と狭山市との間に泉が丘地区のニュータウン(泉ヶ丘駅)があるって感じかな。


和田川の流れる谷(和田谷)にも上神谷、美木多、菱木など古い集落があった。

ここからは和田川沿いを、途中から栂緑地を北上して栂・美木多駅から帰るつもり。

トンボ橋を渡って北上。

田舎だった。途中、橋を渡って対岸に行くべきところをそのまま進んで上り道に。トカゲや黒いトンボに遭遇した。そして道はぐるっと回って南に向かい、引き返してやり直し。

すぐのつきあたりを右折すると川に戻れて、ここを北上していった。

田舎の感じだけれど、すぐ左手の高い位置には、府道61号線と町が見えた。

61号線の道標に「法華寺参道」とあるのが見えて、61号線に上って行ってみた。参道は更に上にと続いていた。

家紋入りの大きな家などがいっぱいあって、山里って感じのところだった。

つきあたりに「農のウォーキングロード 別所山手ルート」と看板があった。それによると右が法華寺、左には頼光塚があるらしかった。ちょっと頼光塚を探してみたけれど見つからず、法華寺方面へ。

ちょっと覗いてみただけなのだけれど、頼光塚には頼光の刀が埋められていると言われ、寺にはその碑があるみたい。

ホタルブクロかなと思われる花が咲いていた。

このあたりに別所熊野神社があるようだったけれど、それも見つけられなかった。

前方に赤茶色の煙突かなにかが見えていた。61号線に戻り、すぐの別所交差点で右折して、和田川沿いに戻った。

ここには覚えがあった。右に500mでバーべストの丘らしく、前にハーベストの丘に行った(台風の影響で休園中だったけど)ときに通ったのだったかな。

左手に栂緑地の入り口があったけれど、妙に暗かった。ここは通り過ぎて、すぐの信号を左折して緑地に入っていった。


称名寺があって、向かいに赤茶色のナニカがあった。法華寺あたりで見えていたのはこれだったのだろうな。大きな古そうな工場だった。

ここから緑道を北に3.7kmで栂・美木多駅だって。

かたつむり橋を渡った。泉北ニュータウンの架道橋で、懐かしさを覚えた。泉北ニュータウンは車と人をなるべく分けて通行させるつくりになっていて、メインの車道は下の方に通され、歩行者はその上を橋で渡るようになっている。

右手に山々を見ながら、ほたる橋、あかとんぼ橋・・・と歩いているうち、雨がぽつりと降ってきた。


めじろ公園は前にもやって来たところで、ニュータウンのただ中だというのにウグイスが鳴いていた。

そんなことを感じる余裕があったのもここまでだった。

雨が本格的に降りだした。木の下はあまり降ってこない。けれど緑道とはいえ木が途切れることも多々あって、そこは小走りで通った。

そのうちざあざあ降り始め、木の下で雨宿りしては小ぶりになると走った。緑道で木しか雨宿りできるところがないし、傘はおうちに置いてきた。買うところも無い。

そしてもう少しで駅というところで、小ぶりになることもなく激しくざあざあと降り始めた。しばらく木の下で雨宿りしていたけれど、木の下でも濡れるくらいの本降りで、わたしは自らバッグに入った。

おかあさんはあきらめて駅に走った。

こんなことは前にもあって、しばらくは折りたたみ傘を必携していたのに、ここのところその心構えを忘れていたなあ。

散歩が楽しかったとか、いまいちだったとか、そんなことはもうどうでもよかった。ざあざあ降られると、無事に電車に乗って帰れるだけでうれしかった。体が濡れていて寒かったけれど。

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