Act5: とりあえず関係者は一列に並べ
私は見つけた。見つけてしまったのだ。
その
- まごうことなきカンニングペーパーを。
何この舞台裏の隠し技的な物。嫌に現実味があっていっそ怖いわよ。
私は様々な不満を胸に抱きながらも口を開いた。
「始まるのね・・・・」
-カンペの人も真っ青な大根役者とは私のことである。
文化祭の時に演劇部で催した劇で私が恐れ多くも主役に抜擢された時、後々泥棒猫になる予定な友人も監督に抜擢されていたわけで、その彼女から
「お願いだからぁ!立ってるだけでいいからぁ!喋らないでぇえ!口パクでぇぇ!舞台袖に喋り役の人入れるからぁあああ!」と泣きながら頼まれたのは懐かしい思い出である。でも主役が吹き替えって、そこのところどうなのよ。泥棒監督さん。思わず笑っちゃうわアッハッハッハ!
仕方なしに遠い目をしながら舞台を仰げば、スポットライトが直に目を焼き舌打ちをしかけた。気分は最悪、カンペの人の掴めそうにない胸倉を掴みあげて「この蛆虫が!」と吐き捨てたくて堪らない。
しかし猪飼の時計というのは何のことだか、さっぱりぽんである。
今古いとか思った奴、後で舞台裏に集合。特にそこでカンペ揺らしてる野郎、お前、ダッシュな。
でも本当になんのことだか。
私が猪飼からそれを受け取ったという覚えもないし。
訳が分からないからとりあえずカンペの人を睨みつけると、彼(?)は必死に私の足元を指差していた。ゆっくりと視線を落とせばそこにはアンティークの懐中時計が落ちていて、私はぼんやりと
ああ、これが猪飼が出そうとしていたやつかぁ
と根拠もないのにそれがまるで事実だとでも言う様にすんなりと受け入れた。
鎖を指に絡め持ち上げると、意外に重くて私は少しだけ驚いた。
持ち物まで「イガイ」とか凄い徹底済みだわ、凄いよお前。
そしてそれを胸元に持っていき両手で包むように握りこむと拍手喝采、どうやら無事に終わったらしい。カンペの人がカンペを嬉しそうに横に振っているように見えるが、私はそれを見て盛大に足を打ち鳴らした。
” お前にしては良くやった ”
とりあえず関係者は一列に並んでみろ、まずはそこから始めようか。