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――時遡(トキサカ)――  作者: 素通り寺(ストーリーテラー)
第四章 呪いを打ち破れ!
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第四十一話 絶望からの光明

「そんな、事が・・・・・・だが、確かに」

「信じられんわ、完全に呪いにしてやられとったんか!」

 深夜0時、宿屋(ヒュッテ)の泊り部屋でタブレットの動画を凝視して思わず嘆く一同。そこに映し出されていたのは、先程の呪いが発動してからの一連の流れ。そしてその中で未来君が、|少しずつ幼くなっていく《・・・・・・・・・・・》姿だった。


      ◇           ◇           ◇    


 呪いの最中、あの子供が東の空を指差して「これが、ふたつめのひみつ」との言葉を残した後、その子も魔法陣もスゥッ、と掻き消えて、星々も曇天の影に隠れて見えなくなった。

 呪いが終わったか、と一同が安堵する中、鐘巻さんの声が静寂を切り裂いて夜の山にこだました!

「お、おいBoy! わ、若返ってるぞ!!」


 え、いや今更でしょ? という反応をして未来君を見た面々は、その瞬間に驚愕の言葉を吐き出した。

「わ、若返っとるー!」

「うっそでしょぉ?」

「OH・・・・・・God!」

 なんと未来君がいきなり目に見えて若返っとった。私より頭一つ高かった身長は今ではわずかな差になっとって、ある程度青年といえる風格を備えたその表情もまるで出会った頃の面影そのままの、中学生か高校生ほどの見た目に戻っとるでないで!


 え、え? と周囲の皆を見ておろおろする未来君に、マルガリータさんが立ち上がって彼の肩を掴み、険しい表情と剣幕で叫び出した。スペイン語らしかったので私やななみん、未来君には聞き取れんかったが、鐘巻さんとピーター君は理解したようで、さらに愕然とした表情になっとる。


「アマノ、あの魔法陣が出ている間、君の若返る呪いが、すさまじい勢いで進行しているって言っておられる・・・・・・」

 青い顔をしてそう通訳するピーター君。あり得ない話じゃない、明らかに”呪い”が発動している中、呪われた未来君の体に何も起きないと考える方が不自然やないで!


 ヒュッテに戻り、ななみんが撮影した記録用ビデオの動画をタブレットにDLし再生する。その映像の中で天野君は確かに刻一刻と若返って行っていた、通常では気付きにくいその現象も、10倍速で再生した時などは、彼の体が少しづつ縮んで行くのが明らかに見て取れた。



「ごめん、未来君・・・・・・私がついとりながら」

「登紀さんのせいじゃないよ、自分の体なのに気付かなかったなんて、馬鹿なのは僕だ」

 未来君のフォローにも胸中のドロドロは少しも晴れない。そうや、先だってのあの資料館から古墳まで続いていた呪いの時も彼は若返っとったんや。あの時は銅鐸の隠された真実に興奮してそんな事夢にも思わへんかったし、銅鐸の絵で未来君が”おおかみさま”に食われると知ったときから彼は怯え切ってしまっていた。身を縮めて震える彼の姿がっどこか儚く見えとったのに、それを彼がへこんでいるせいやと決めつけてしもとったんや・・・・・・なんてこと!


 さっきもそうやった。当たり前のように発動する呪いにいつの間にか緊張感を失っていたし、私とピーター君は狼狽するマルガリータさんに気が行っとって、ななみんはビデオ撮影に集中して彼らをカメラの中に収めるのに必死で、その被写体が変化している事にまで気付けなかった。鐘巻さんは鐘巻さんで、初めて見る呪いの光景が、夜空の星々の異様な輝きであることに意識が釘付けになってしまっとった。


 ―うん、もうちょっと、あたしたちとおなじとしになってから―


 三年前、あの古美術店で聞いた子供たちの言葉を思い出す。時遡の呪いを受けた者は、あの子たちと同じ歳になった時に”いけにえ”として捧げられる。


 まだ十年以上もあると思っとった! 甘かった、油断しとったんや!


 あと猶予はどのくらいなんや、またあの魔法陣が発動したらどうする? あれは任意で消せる物なんか? いや違う、私の時の月食の魔法陣も自分で出したり消したりはできんかったやないか!

 せっかく手がかりがいくつか掴めたと思っとった、あの魔法陣が発動する度に呪いの正体が明かされていくなんて期待して、発動するのを期待すらしとった、あの呪いはこっちに希望を持たせとって、その実タイムリミットを縮める為の物やったんか!


 どんっ!

 両方の手で机を叩く。自分自身の認識の甘さ、愚かさ。そして遥か昔に軽い親切心で約束した悲劇が、いよいよ加速を早めていることに、絶望と憤りをぶつけざるを得なかった。

「登紀さん落ち着いて、君らしくないよ。少なくともあの魔法陣がヤバい事は分かったんだから、それだけでも進展したんじゃないか」

 こんな時でも未来君は真面目だ。おまはん、本当にわかっとるん? もし今あの魔法陣が出て、ほんで消えなんだら、君はあと数日も生きてはおれんかもしれへんのやで・・・・・・


「とにかく、この事をプロジェクトに報告します、本部の判断を仰ぎましょう」

 ななみんがOLの顔に戻ってそう告げる。とにかくこうなってしまえばもう一刻の猶予もない、各所に散っている呪術班の陣中見舞いに行っているヒマなんかない、一刻も早く本部に帰還して対策を講じなければ、彼を救う為のこのプロジェクトそのものが無意味になってしまうのだから。


 結論は出た、休暇は中止にせざるを得ないだろう。今夜はもう切り上げて就寝し、明日にでも本社に帰還して今後の方針を検討し直す必要がある。それぞれ男女の部屋に分かれて床に就いた。


 寝られるわけ、ないでないの!

 しょうがないんで起き出して、夜空に出て大声で叫んだら少しでも気晴らしになるかと思ってロビーに出たら、なんか未来君がソファーに座ってテーブルに突っ伏して眠っとった。

「なんしょんな、こんなトコで寝とったら風邪引くで」

 毒気を抜かれた気がして、彼に何か羽織る物でもかけようと思っとったら、テーブルの上に一冊の本が置いてあるのに気付いた。ああ、交換日記やな、これここで書いとったんか・・・・・・まぁ鐘巻さんやピーター君に見られるんはちょい嫌やろけどな。


 いつもならそれを先に見るようなことはせん。ほなけど今日だけは未来君が何を書いたのか気になった。表向きは気丈に振るまっとっても、心の中では不安で押しつぶされそうになっとるんかもしれん。


 しおりの挟まれているページを、そっ、と開いた。


 ”今日は登起さん、珍しく取り乱していたね。でも大丈夫、僕は男の子だから、心配しないで。”

 ”珍しく登紀さんを元気づけることが出来て、ちょっと嬉しかったよ”

 ”大丈夫、みんな凄い人達なんだから、きっとうまくいくよ、信じて頑張るから!”


「・・・・・・つくづく、未来君、やなぁ」

 その名が示す通り、未来を見据えて諦めない彼のその気丈さが嬉しくて、私は目を閉じてうつむいた。でも、頬を伝う物は、どうしても止めることが出来なかった。


「私も、頑張るわ。なんせ正義の味方のおばあちゃんやから、なぁ」



      ◇           ◇           ◇    



「話は聞かせてもらった、後は任せて貰おう!」


 翌日、全員で本社に帰った私達を出迎えた橘医師ほか医療班は、全員が鼻息を荒くして目を輝かせ、自信に満ちた目でそう迫って来た。


「さぁ、医療班として反撃の一手を打たせてもらうよ、ついに新開発”橘ワクチン”の出番だ!」


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