異端児
「うざいんだよ! さっさと視界から消えろよ異端児が!」
そのセリフが耳に入ってきてすぐに鈍い音が俺の左頬から脳にかけて鳴り響いた。
鈍い音の後、俺の身体は右側にうずくまる様に倒れこみ、左頬に痛みが急速に押し寄せてきた。
(あれ? なんで俺倒れてるんだっけ?)
倒れ込んだ目の先にはアスファルトが一面に広がる。
なぜそんな状況になってしまったのか、そんな疑問を解決したいと思い、先ほどまで自分が立っていた方を振り向く。
そこには、両手を合わせて指を鳴らしている大男とその後ろに立っている性格の悪そうな顔をした男が二人立っていた。
初めの鈍音から数秒たって、頬の痛みと目の前の状況を見て思い出す。
(あっ、そっか……俺、こいつに殴られたんだったな)
普通の人ならもう少し焦る、もしくは恐怖するんだろうが暴力を受けるのは慣れたものだ、今の状況とは裏腹に頭の中は冷静だ。
「おい、聞こえなかったのか? 早くどっかに行きやがれ!」
大男はこれでもかと眉間にシワを寄せて怒鳴りかけてくる。
後にいる男二人は俺の方を見ながらクスクスと笑い声を堪えている。
(こっちはお前に殴られて倒れこんでんだよ、ちょっとの間も待てないのか? このゴリラは)
急に殴られた上に、後ろの二人は無様に倒れ込んでいる俺を笑っている、そんな状況に腹が立って無意識に後ろの二人、大男の順に睨みつける。
「あ? なんだその反抗的な目は?」
睨みつけられたことで大男の眉間の間隔が更に狭まる。
後ろの二人はヤバい雰囲気に勘づいたのか、笑う事をやめて少し怯えた表情になった。
「いいぜ、お前がそんな目つきを出来なくなるまで……」
言葉を言い切る前に大男は表情を緩ませ、不敵な笑みを浮かべる。
「いや……顔の原型が保てなくなるまでぶん殴ってやるよ!」
そう言った瞬間、大男は右手の拳を握りしめて腕を振り上げた。