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魔王でない魔王は力を求める  作者: 斗樹 稼多利
16/22

魔王でない魔王、和を味わう


 新しくメイランって猫ガキを連れに加えて、目的のヤマト共和国への旅路を行く。

 道中は特に大きな問題無く順調に進み、遂に国境にある砦が見えてきた。

 あそこで出国手続きをしなきゃならねぇから、面倒だぜ。


「や、やっと国境砦に着くんだ」

「ここまで苦難の連続だった……」


 砦が見えたらソウファンが座り込んで、メイランは感慨深そうにしてやがる。


「おいおい、国境に着いたくらいで満足してんじゃねぇよ。一直線に進んだから、さほど苦労してねぇだろ」


 普通に道を移動するより、随分と短い期間で済んだんだから、もっと嬉しそうにしやがれ。


「どの口が言うの!」

「苦労しましたよ。深くて川幅が広い上に流れが早い川を泳いで渡るし、とんでもなく深い谷をジャンプして飛び越えさせられるし、道中で遭遇したヒポグリフの群れやオーガの上位種のグレートオーガと戦わされるしで、日数はともかく散々な直進でしたよ」


 何言ってやがるんだ、その程度で。

 第一、お前らにやった力でどれも問題無く乗り切れたじゃねぇか。

 特にヒポグリフ。あれの肉は美味かったし、羽やら皮やらが高く売れて大儲けだったろ。

 グレートオーガの皮も高く売れたから俺とソウファンはDランクになって、ハンティングギルドに登録しておいたメイランもその場でFランクになったんだ、力を扱う修業にもなって一石二鳥だっただろうが。

 どんなズルをしたんだってアホハンターに絡まれたが、そっちは猫ガキが裏拳の一撃で物理的に黙らせたから、いい気味だったぜ。


「美味い肉が食えて金を稼げてランクも上がって、ついでにテメェらが力を扱う訓練にもなった。文句ねぇだろ」

「確かにそうですけどっ!」

「体力的にはともかく、精神的にキツかったの!」


 なんだよ、文句ばっかり言いやがって。

 少なくとも金を稼いだお陰でメイランはその体に合う服を買えたし、町じゃ良い宿に泊まれたし、美味い飯も食えたじゃねぇか。

 つうか精神的にキツかっただと?


「そのキツさってのは、毎晩の触手攻撃よりキツイのか?」

「前言撤回、そっちよりはマシ!」


 筋金入りの蛇嫌いだからな、この猫ガキは。

 まあ、だからこそ触手を使ってるんだがな。

 今はマントを羽織って隠してるが、俺が成長させてやった胸や尻に食い込む光景は、なかなかの眼福だぜ。


「同じくです! だから感覚に干渉して快楽を数倍にした状態で行為をして、気絶させては目覚めさせてを延々繰り返すのはやめてください!」


 おおっ、見事な土下座じゃねぇか。

 そんなに嫌だったのか? 舌を出すくらい蕩けきった顔で、半笑いしてたくせに。


「だったら早く行くぞ。チンタラしてんじゃねぇよ」

「分かったって!」

「アレに比べれば、ここまでの道のりはまだマシか……」


 そうだろ?

 テメェらが拒否したことに比べりゃ、道を無視して真っ直ぐ進むぐらい楽勝じゃねぇか。

 道中に何があろうが力でねじ伏せりゃあいいんだ。

 そんなことも分からねぇのかよ、こいつらは。

 呆れながらも砦へ向かい、出国手続きを受けたが、思いの外時間が掛かってやがる。


「おい、まだか」

「ちょっと待ってくれ。今は非常態勢で、審査には時間が掛かるんだ」


 マジかよ。

 なんでそんなことになったやがるんだよ。


「何かあったんですか?」

「君達も聞いてはいるだろう? ソウコク様の道場でソウコク様を含め、大勢が血痕だけを残して行方不明になった事件や、正体不明の巨大な猫の魔物に町が一つ壊滅させられた事件を。魔物の方はともかく、ソウコク様の件もあって強い警戒態勢を取っているんだ」


 そういうことか。

 まぁやったのはどっちも俺達だけど、証拠はねぇから通過できるだろうよ。


「待たせたね。手配書も無いし、怪しい点も無かったから通っていいぞ」


 やっと済んだか。

 ったく、チンタラやりやがって。


「いいのかなぁ……?」

「もう気にしても無駄です」


 後ろでコソコソ話してるソウファンとメイランは、なんか釈然としない表情をしてやがる。

 何をやろうがバレてなけりゃ問題ねぇんだから、細かいこと気にしてんじゃねぇよ。


「次はここから少し行った場所にある、ヤマト共和国の国境砦で入国手続きをするように。でないと密入国扱いになるからな」


 マジかよ面倒だな。

 だが余計な目をつけられて好き勝手できないのも面倒だから、大人しく従うとするか。

 どれだけ狙われても力でねじ伏せりゃいいが、強い奴ならともかく、碌に力の糧にもならなそうな雑魚ばかり相手するのは御免だ。


「分かった。世話になったな」

「これが仕事だから気にするな。じゃあ、気をつけてな」


 気をつけるほどの相手がいるのかね。

 手を振るおっさんに頭を下げるソウファンとメイランを連れ、早速ヤマト共和国側の国境砦とやらへ向かう。

 やっぱり道中に気をつけるような魔物はおらず、せいぜいゴブリンやスライム程度だ。

 欠伸をしながら軽く手で払うように瞬殺して、魔石と討伐証明の回収はソウファンとメイランに任せる。


「ペースが速いです!」

「回収するこっちの身にもなりなさい!」


 テメェらが遅いんであって、俺は悪くねぇ。

 雑魚をサクサク倒しながら先へ行き、後から二人が追いついて来るのを数回繰り返して、ヤマト共和国の国境砦へ着いた。

 砦はチャニーズ帝国と違った造りをしていて、そこにいる連中の服装も防具もチャニーズ帝国とは違い、転生者の女の知識にある着物や甲冑とかいうのを着ている。

 見たことのない建物の造りや装いに、ソウファンとメイランはお上りさんのように辺りをキョロキョロしてやがる。


「身分証と出国許可書を確認した。ヤマト共和国への入国を許可する」


 おっ、こっちはあっさり済んだな。

 仕事が早くて助かるぜ。

 返却された身分証には出国記録と入国記録が刻まれていて、これが無かったら密出国や密入国の扱いになるってことか。


「ここから一番近い町は、歩いて半日ほどの所にある。今なら暗くなる前に着けるから、気をつけてな」


 俺達が見た目子供ばかりだからか、対応してるおっさんがうぜぇ笑顔を見せてきやがる。

 別に何が出ようと問題ねぇ力はあるから、暗くなっても構わねぇよ。

 だがその町へ向かう道中は何事もなく、夕暮れ前に町へ着いちまった。


「何か出ろよ、くそが」

「「物騒なこと言わないで!」」


 どこがだよ。何か出ても力ずくで解決すりゃいいんだ、物騒でもなんでもないだろ。

 幾分ガッカリしながら町へ入ると、転生者の女の知識にある江戸時代とやらの町並みとよく似ていて、道行く奴らの格好も着物に草履や下駄だ。


「さすがは異国。国境砦もそうだったけど、建物も服装も履き物も違う」

「ああいう履き物で、走った時に脱げないのかな」


 国境砦にいた時に以上に物珍しい顔で辺りを見渡してやがる。


「キョロキョロしてんじゃねぇよ」

「いいじゃない、過程はなんであれ異国に来たんだから」

「やっぱりちょっとは浮かれちゃいますよね」


 ちっ、まあいい。とりあえずはギルドに行って、素材と魔石を売るか。

 宿で客の呼び込みをしてるガキに、後で泊まりに来るのを条件にギルドの場所を聞き出し、ギルドへ行く。

 そこから先は何度も経験した通りだ。

 提出した素材と魔石に受付の女達が驚いて、いちゃもんつけてきた連中を外でぶっ飛ばして、ランクが一つずつ上がって、売却した魔石と素材の代金で大金を受け取って、宿への道中にその金を狙って襲ってきたアホハンター共を返り討ちにする。

 あまりにいつも通りで欠伸が出るぜ。


「ったく、力の差も分からねぇアホばかりでイラつくぜ」


 そんなんだから、クソ雑魚なんだよ。

 せめて力の差が分かるくらい強くなるか、余計なことせず大人しくしてやがれ。


「見た目は子供ですからね」

「実年齢も八歳と十二歳と……ゼロ歳。ぷっ」


 よしメイラン、テメェには今晩教育的指導を受けて貰おうか。

 触手の見た目を蛇にして量を三倍にして、ついでに俺のも蛇状にして、泣き叫ぼうが泣いて詫びようが容赦なく徹底的に犯し潰してやる。

 壊れても治せるからな安心しろよ、くははははっ。


「ひっ!? なんか寒気が?」

「風邪かい?」


 さすがは猫、野生の勘でも働いたか?

 そうと決まればさっさと宿へ行くか。

 口約束を律義に守る必要はねぇが、さっきギルドの場所を聞いたガキのいる宿へ行って、金はあるからと一番いい部屋を借りた。

 靴を脱いで上がる和室とかいう部屋に、ソウファンとメイランは戸惑ってる。


「靴を脱いで過ごすって、なんか違和感ありますね」

「床に直接座るの? えっ、この座布団ってのを敷くの?」


 俺も転生者の女の知識で知っているだけで、実際に体験したことはねぇからちょっと変な感じだ。

 

「国境に近いので、お客さん達のような異国の方もお見えになりますが、大抵同じような反応をされますね」


 そりゃそうだ。なにせ文化も生活環境も全然違うんだからな。

 ガキの説明によると、床に座らせるのかと怒鳴られることもあるらしい。

 そのことをソウファンとメイランに慰められたガキから、浴衣とかいう「よいではないか」をする服の着方を教わり、風呂の場所も教わった。


「では、ごゆっくり。食事は後でお持ちしますので」


 飯を部屋に運んでくるのは上等だ。

 こっちじゃそういうサービスもあるのか。


「せっかくだから、お風呂へ行きましょうか」

「お風呂なんて初めてだから、楽しみ」


 こっちじゃ一般的のようだが、帝国じゃ金持ちしか持ってなかったから、メイランがソワソワしてやがる。

 たまにはのんびり風呂も良いかと思って行ったが、何で男女別なんだよ!  


「ちっ。何が悲しくて、おっさんや爺さんと同じ風呂に入らなきゃならねぇんだ」


 体を洗って広い湯船に入るが、いるのは見渡す限りおっさんと爺さんばかりだ。

 こんなことなら女湯に入るのを躊躇っていたソウファンを蹴り込むんじゃなくて、無理矢理にでも連れて来るんだったぜ。


「気持ちは分かるぜ坊主。俺達だって、できることなら若い女と入りたいぜ」


 だろうよ。

 爺さん以外は悔しそうにしていてやがる。

 はあぁ、せめて見目の良い男のガキでも入って来いよ。


「つうか坊主、すげぇの持ってんな」

「くそっ、密かに自信があったのに、これにゃあ敵わねぇぜ」

「ほっほっほっ、そいつは女を鳴かせるためのものじゃな」


 はっ! とっくに連れの女二人を鳴かせてるぜ。

 うち一人は女にした元男だがな。 


「ところで坊主は異国人のようだが、どこから来たんだ?」

「チャニーズ帝国だ」

「帝国だと?」


 特に隠すこともねぇから答えたら、おっさん達も爺さん達も動揺してやがる。

 なんだ? 何かあったか?

 首を傾げてたら、おっさんの一人が身を乗り出した。


「向こうでは勇者の仲間だったソウコク様が、何かしらの事件に巻き込まれて行方不明と聞いたが、本当なのか?」


 ああ、そのことか。


「本当だぜ。お陰で出国審査に時間が掛かってよ、はた迷惑な話だぜ」


 やったのは俺だがな。


「やぱり噂は本当だったのか」

「帝国で一体何が起きたんだ?」

「そういえば、大量のドラゴンが突然消えたとか、巨大な魔物に町が一つ壊滅したとも聞いたぞ」


 誰かの呟きで、視線がこっちへ向いた。

 ちっ、答えねぇと喋るまで聞かれそうだな。


「どっちも本当だ」


 なにせ実行犯がここにいるから、間違いねぇ。

 おっと、町を壊滅させたのは猫ガキで、俺は切っ掛けを与えただけだったか。

 一方でおっさんや爺さんは、肯定の言葉にどよめいてやがる。


「帝国で何が起きているんだ」

「どうする。こっちの特産品を売りに行くのは、止めておくか?」

「金は惜しいが、命には代えられないからな」


 おーおー、困惑してやがる。

 別に行っても平気だぜ、原因の俺達はここにいるんだからな。

 それからしばらく戸惑う様を見物して浴衣姿で部屋に戻ったら、ソウファンとメイランは浴衣姿で戻ってやがった。


「あっ、おかえり」


 淡々としてるメイランに対して、なんかソウファンは真っ赤になって布団とかいうのに倒れてやがる。


「おい、このザマはなんだ」

「たくさんの裸の女性がいる光景にのぼせたの。小柄な私が運ぶと不自然だろうから、宿の人に頼んで運んでもらった」


 んだよ情けねぇな。

 元男なら、むしろ眼福な光景に見惚れて長湯してのぼせろよ。


「それにしても、お風呂はとてもいい。いつでも入れるみたいだから、後でもう一回入りに行く」


 そんなに気に入ったのか。

 まあそれはいいとして……ふむ、なかなか良い光景だな。

 寝乱れて浴衣が着崩れたソウファンと、どうやっても隠せないデカい胸と尻が浴衣を内側から押し上げているメイラン。

 しかも湯上りでしっとりした肌に張り付いて、余計に体つきが分かるのがそそるじゃねぇか。

 どうせならこの場でと思ったが、もうすぐ飯だったから後にしよう。

 先に決めた教育的指導と合わせて、たっぷり可愛がってやる。


「ひっ!? また寒気が!? お風呂上がりなのになんで!?」


 勘の良い奴だ、さすがは猫。


「失礼します、お食事をお持ちしました」


 おっ、飯が来たか。

 可愛がる前に、まずは腹ごしらえといくか。

 って、肉がほとんどねえだとっ!?

 運んできたガキの話だと、こっちの国の一般的な飯は肉よりも魚や野菜が中心で、肉は禁止こそされていないが滅多に食わないらしい。

 くそっ、なんてこった。

 こうなったらさっさとヤリュウダイジロウをぶっ飛ばして喰らって、こんな国出て行ってやる。

 そう思っていたが、飯自体は結構美味いじゃねぇか。

 転生者の女の知識によると、和食ってやつらしい。

 のぼせて食欲が湧かないとか言ってたソウファンも、食べやすいとか言って普通に食ってやがる。


「あっさりしてるけど、決して物足りない訳じゃない。これがこの国の料理なの?」

「はい。味付けは他国のように濃くありませんが、素材そのものの味を引き出し、引き立てるのがヤマト流の考えなんです」


 なるほどな。

 まあこの味なら、さっさと出て行くのは止めておくか。

 たまに肉さえ食ってれば、もうちょっとこの国の飯を食ってもいいだろう。

 そんな飯の時間を終えて片付けも済んだら、また風呂へ行こうとするメイランを逃さないため傲慢の支配領域で部屋を支配下に置き、蛇状にした色欲の触手を無数に出現させる。


「そんじゃま、ゼロ歳とかほざいて笑ったことへの教育的指導を開始する」

「どこが教育的指導なの! ていうか触手を蛇にすんな! やだっ、ホントに嫌だから体中に巻きついて食い込ませないでえぇぇぇっっ!」


 嫌よ嫌よも好きのうち、ってか。

 傲慢の支配領域で外へ逃げられないし、防音もされているから好きなだけ騒いでいいぞ。

 ついでだ、隅の方で丸くなって怯えているソウファンも巻き込むか。


「うわあぁぁぁっ!? ぼ、僕は何も言ってませんよ!?」

「一人で寂しそうにしてるから、混ぜてやるだけだ。俺の優しさに感謝しろ」

「できませんよ! そもそも合意無くひん剥いて行為に及ぶ優しさなんて、この世のどこにも存在しません!」


 たった今、存在が発覚したんだよ。

 という訳で、よいではないかー!


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