恋に落ちたその瞬間に頭のネジもとんでった
今でも鮮明に思い出せる。
恋に落ちた瞬間のことを…
「リリー・ダルカン令嬢!貴方が転んだ僕に声をかけて下さった時からお慕いしてました!どうぞ打ち上げパーティーで僕とパートナーになってください…!」
(騒々しいわね…嫌だわこんな誰がいるともしれない薔薇園で)
ちょうど学園祭の頃だった。
学園祭の打ち上げはダンスパーティーが執り行われる。
婚約者がいるものは婚約者と。そうでないものはこれを機に。というのが慣わしだ。
エヴァーレットに婚約者はいない。
よってこの時も様々な求婚者をかわしてかわしてかわして薔薇園に逃げ切った所だった。
(レナもあいつらをまくのに別行動してもらったし…しょうがないわ。しばらくここに隠れてましょう)
どうなるにせよ、それほど時間は経たず立ち去るだろう。
「ごめんなさい…わたし、他にお慕いしている方がいて…」
おや、うまく行かない方だったか。
(ご愁傷さま。残念だったわね)
「……うん、そうか。何となくそんな気はしてたんだ。ただ伝えたくて、けじめつけたかったから…」
「ごめんなさい、オグノフくん…」
「…!!…い、いいんだ。時間とってくれてありがとう…!上手くいくといいね!」
「ありがとう…じゃあね」
女子生徒の立ち去る音がした。
(もうちょっとで出ても大丈夫かしらね)
「う…くぅ…」
(え、嘘でしょ?ここで泣くの?!)
ここでじっとしてたら見つかってしまうかもしれない。
そんな焦りから木陰から顔を覗かせ。
雷にうたれた。
ボトボト溢れる涙を必死になって抑えようとする姿。
大して美男でもない。そこら辺にあふれてそうな薄茶の髪に焦げ茶の目。
ただその目は、今しがた振られたにも関わらず、明らかな恋しさと切なさの熱量を持っていて…
思わず心の中で叫んだ。
(……押し倒したいっっっ!!!!)
エヴァーレット・ウルム・フォンディナート。
初恋は本能と煩悩に塗れてはじまった。
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