派手顔悪役令嬢は今日もモブ男子に恋してる
淑やかな仕草。
吐く吐息は淡く朱唇を彩る。
豪奢な蜜色の金髪、深緑の瞳、すっと通った鼻筋。
髪は真珠とともに結い上げられ、きらきらと陽の光をかえす。
小さな顔にはキュッと目尻があがった目が酷く似合う。そして力強い。それは気性も強く見え…実際にそれはあっていた。
ドレスは赤。所々金の刺繍を施したそれは、一歩間違えれば下品になってしまうだろう。
しかしそれは繊細なバランスで持って、豪奢な大輪の薔薇となっている。
エヴァーレット・ウルム・フォンディナート公爵令嬢。
王国の薔薇。
彼女は数多いる貴族令嬢の中で最も気高く、最も近寄り難い花。
そんな美しい花は、お茶を一口飲むと熱い溜息と共に零した。
「はぁ~…!今日もモブロフ様が尊くて死ねる!!」
「口を開かないでくださいエヴァーレット様」
スパーン!と高速で侍女の張り手が後頭部を直撃した。
明らかに不敬なのだが、高速過ぎて誰も気づけない。
また叩かれた本人もまるで気にしていない。
「だってだってレナ、先ほどのモブロフ様をご覧になって?!」
「何もない所で転んでらっしゃいましたね」
「なんっって愛らしいのかしら!こう、胸がキュン!といたしますわ」
「単に注意力のないだけかと」
「貴族令息にあるまじきうっかりさん!そこが愛しい!推せる!」
側仕えのレナは気づかれないよう嘆息する。
—どうしてこうなってしまったのか。
元々風変わりな令嬢ではあったけど、ここに来てさらに加速してしまった。
「そんなに慕わしいならさっさと婚約打診したらいいじゃないですか。フォンディナートの名前使えば一発です。本人の意思関係なく婚約確定ですよかったですね」
「それもアリだけど!もう逃げ道塞いでから落とすのもいいけれど!やっぱり私はあの目で見つめられて告白されたいのよ!」
「子爵家の三男坊が公爵令嬢に求婚できるとお思いで?」
恐らく物理的に首が飛ぶか、社会的に飛ぶ。
「求婚は私からでいいわ!そのかわり私のこともその前に好きになっていただきたいのよ!」
浮かれ調子の主に再度ため息をつく。
「そもそもですが。他の女に告白してるのを目撃して惚れるっておかしくないですか?」
しかも取るに足らない、対して魅力のない格下の令息。
そう言えばうっとりとしてお嬢様は仰る。
「だって恋をしてらっしゃる姿が最高に可愛かったんですもの!!!」
うん、頭湧いてる。
不敬極まりなくレナは断定した。
王国の薔薇。
彼女は数多いる貴族令嬢の中で最も気高く、最も近寄り難い花。
そんなエヴァーレット・ウルム・フォンディナート公爵令嬢は、モブ男子に恋をしていた。
別連載の息抜き用です。
なんにも考えず書いてます(●︎´▽︎`●︎)
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「ヒロインに異世界転生してたらしいけどそんなん知らんしとりあえずカマクラ作っとく」
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