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第67話 ミニスカートの先輩

 12月8日 火曜日


 この日も早朝からテスト勉強だ。

 

 その後はいつものように登校し、授業を受ける。……と見せかけて、テスト前ということで内職に励んでいた。

 褒められた行為ではないがテスト前限定の恒例行事だ。許してほしい。


 こうして長い時間勉強に励み、帰りのホームルーム終了と同時に教室を飛び出した。

 放課後はもちろんアルバイト。

 今日も一番に校門を抜け……な⁉

 

 驚いた。

 早歩きで校門へと向かう私を颯爽と追い抜き、先に校外へ出た生徒がいたからだ。

 

 私より早いやつがいるだと……?

 

 誰よりも早く下校することにプライドを持っていたわけではないが、正体が気になる。

 だが私がなにか行動を起こすまでもなく、その人は校門直前で急ブレーキをかけたように立ち止まり、こちらを向いた。


「やっほー、京花ちゃん!」


「ああ、先輩でしたか」


 正体は先輩だった。

 まあ、なんとなくそんな気はしてたが。


「今日はまた一段と慌ただしいですね……ってうわ! スカート短!」


 先輩は制服のスカートを何回も折り、少し風が吹けばパンツが見えるくらいの超超ミニスカートにしていた。派手めな不良女子生徒でもこんなに短くはしないだろう。生徒の模範となるべき生徒会長を務めていた人とは思えない。

 

 ってか、寒くないのか? いや、絶対寒い。絶対我慢している。

 

 ではなんのために我慢しているのか、もっと言えば誰のために我慢しているのか。


「えっとね、今日も剣崎さんに勉強を教えてもらうんだ。だからさっきトイレで短く折ってから学校を出たんだけど、どうかな?」


 やはりそういうことらしい。

 先輩は完全に剣崎さんに惚れていた。

 

 短いスカートに手を当てて少し恥じらう姿はまさに恋する乙女だ。

 こんな先輩を見る日がくるなんて、夢にも思わなかった。

 

 ところで、『どうかな?』という質問に対する答えだが。


「痴女みたいだからやめてください。ドン引きされますよ」


 昨日、帰りは先輩と別だった。

 どこまで距離を詰められたかまではわからない。

 だが、少なくとも昨日初めて出会った相手に見せる姿ではない。断言できる。


「そ、そうかな? 喜んではくれないかな?」


「相当きついです」


「でも、もし璃莉ちゃんがミニスカートはいていたら、京花ちゃんは嬉しいよね」


「え?」


 言われてみて、少し想像する。

 璃莉がパンツが見えそうなくらいの超超ミニスカートを履く。しかも私のために。


 ……控えめに言って、最高だ。嬉しいなんて言葉では収まらない。


「最高ですね……って」


 言った後、ブンブンと首を振ってから先輩に向き直る。


「私は璃莉が好きだから喜べますけど、剣崎さんは先輩のこと好きだとは限らないじゃないですか。アピールはいいですけどもう少しリスクを抑えてください。ドン引きされたら終わりですよ」


「ううっ……辛辣なこと言うなあ……京花ちゃんは……」


 だが間違ったことではない。

 むしろ忠告に感謝してほしいところだ。

 

 私は「はあ……」とため息を吐いてから、改めて先輩に問う。


「剣崎さんのこと、好きなんですよね?」


 すると先輩は恥じらいを前面に出した乙女モードで、


「うん、好き」


 と、短くはあるがしっかりと気持ちが伝わる一言を返してきた。


「だったら、慎重さも必要ですよ。攻める気持ちを忘れてはダメですけど、無謀と大胆をはき違えないでください」


「ううっ……その通りだね……これは元に戻すよ……」


 先輩はスカートに手を掛ける。

 ここで戻すのか。なんて大胆な人だ。


「無謀と大胆をはき違えないで、かあ。剣道だけじゃなく恋愛までも京花ちゃんに超されちゃったね。かなわないなあ」


「そんなことないですよ」


 事実、先輩がいなければ璃莉とのファーストキスを果たせず、ギクシャクしたまま関係が破綻していたかもしれない。

 そのほか、これまで多くの場面で私を助けてくれたし……。

 

 結局、先輩はどこまでいっても先輩で、私はかなわない。

 

 そして、そんな先輩を親しく想い、かつ尊敬し、幸せになってほしいと願っている。

 

「頑張ってください。応援していますよ」


「ありがとう、京花ちゃん。もう大丈夫、私は大胆かつ慎重に、攻めるから」


 スカート丈を元に戻した先輩の目はなにか決意に満ちあふれていた。

 

 攻めると言ったが、まさか、もう?

 いやいや、さすがにそれはないか。


 このときは常識論で決めつけていたが……。

 

 この人に常識など、通用しない。

 この人の普通は、他とはスケールがまるで違う。


 翌日、私は先輩の行動力を見くびっていたことに気付かされる。



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