表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

二話 ルークに出会う

 少し前まで晴れていた空には、雨雲がおおっていた。

 俺は、もうすぐ雨が降るなと呟く。

 急いで泊まる所を探した方がいい。悪天候のなか、ここで野宿をするのはさすがに無理だ。


「俺はルーク。よろしく」


「そうか……俺はもう行くから。じゃあな」


 できるだけ急いだ方がいい。それにもう腹が減りすぎてつらい。ルークと名のる少年に別れを告げ、歩きだす。が、止められた。

 ルークは目を見開き、鼓膜が破れるくらい大きな声で叫ぶ。


「待て待て待て! 今俺『よろしく』って言ったよね? なんで平然と通りすぎて行こうとするの?」


「は? 別に知り合いでもないだろ?」


「いやいや、今知り合っただろ! 自己紹介しただろ! このながれは、お前も普通は自己紹介するだろ!」


 そうなのか? と不思議に思っている中、ルークは……


「それで、お前の名前は?」


 俺のことを睨みながら尋ねてきた。


「俺はディル」


 そして、ルークは、俺に何かを求めるように目をキラキラさせて見つめてきた。なんだ?


「ディル……この姿を見てなにも思わない?」


 ルークは、まだ地面の中からでてきていない。


「ああ、速く地面からでればいいとは思うが……」


「助けようとは思わないのかよ!?」


「お前……まさかでられないのか?」


「……ああ」


「……」


 俺が黙り、呆れた顔でルークを見ていると、ルークの顔が真っ赤に染まった。はぁ、それぐらい自分でなんとか……


 ぐぎゅるるるるるるる。


 俺の腹が鳴った。

 ルークの方を見ると笑みを浮かべていた。


「俺を助けてくれたら、飯を沢山食わせてやる! だから助けて! 頼む!」

「……わかった」


 魔王の俺がまさか飯ぐらいでつられるとは、思わなかった。


 俺は、土を少し掘ってから、ルークの服を掴み、引き上げる。

 地面からでることができたルークは服に付いた土をはらう。そして、俺の方を向き『ありがとな』と言った。

 俺は、ありがとうと言われたことがなかった。人間に転生した今、言われるとは……まぁ悪くない。


 ルークをよく見ると、少し高そうな服を着ている。多分貴族だろう。

 身長は、俺くらいだった。年を聞くと13歳だと言う。


 なら、俺の年は多分13歳くらいだな。

 俺には、今まで生きてきた記憶はないし、俺と同じくらいの身長のルークが13歳なのだからきっとそうだろう。


 少しでも、自分のことを知る事ができて、嬉しくなった俺は、無意識に笑みを浮かべる。


 その表情を見てからか、ルークがニヤニヤと不気味な笑みを浮かべていた。

 だが、俺は全くそれに気づくことなく、王都にあるというルークの家まで、期待をふくらませながら向かった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ