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三題噺

ガラス玉に移る涙

作者: あきまさ

かの国は戦続きであった。


戦争の原因はよくわからないが、きっかけは知っている。


そのきっかけとは他国との領土問題による戦争であった。今の状況は互いに前線を維持しており、いつ戦争がおこるのかわからない状況であった。


ここはそんな戦争をしている我が国における軍学校である。


政府は軍国家にするに至り、最低限の戦い方と銃や装備の使い方などを専門に扱う学校を開設した。


俺の名前は――っとここでは名前は取り上げられ、ナンバー07という番号が当てられ、セブンと呼ばれている。名前を与えられていないのは、敵に傍受された際に情報を渡さずにする処置なためであるからだ。


「なんだっておれがこんな目に……。」


俺の口癖みたいになりつつあるこの言葉であるが、そういいたくなる気持ちもわかってほしい。


これは数時間前までに遡る――


「おい、セブン。言いつけておいた、講堂のパンは買ってきたのか!?」


俺に怒鳴りつけてくるのは、女性にしては長身であり、顔立ちは整っており、炎を連想させるような緋色の長髪をしており、左目には眼帯をしている。

この教官は俺たちの部隊の教師役みたいなところで、日々の訓練や座学、演習など様々なことを教えてくれる。

だが今回のことについては、教師なしからぬ要件で俺たちを困らせてくる。


「いえ……教官殿の申しつけであった、焼きそばパンなるものは売り切れてしまいましたであります!コロッケパンならここにあるでございます!」


とビシッと姿勢をただし、敬礼をする。


「何やっているんだぁ!貴様ぁ。罰として学内ランニングの刑だ!ちなみにコロッケパンはいただくとする」


と無茶難題を要求してくる。よくある部下いびりなのだが、スケールが違う。

この学園の広さは広大であり、移動にも車を使うほどであり、それをランニングともなるとフルマラソンに匹敵するほどである。


事の発端はある訓練の始まる前に至る――


「よし、お前たち!今日の訓練は敵である私からの攻撃をいなしつつ、5分間逃げ切ったら勝ちというシンプルなルールだ」


腕組みをし、仁王立ちになっている教官。彼女は戦争で片目が負傷となり、射撃に不利があるため、教官役となっているがその実力は本物であり、いまだかつて彼女に勝てた生徒はいないという逸話も存在する。


「特に、セブン。お前はこの軍学校で最下位の成績だからな!気合い入れておけよ」


ビシッと指をさされて大きな声で名指しをされてしまう。それをみて周りの生徒達は口元を密かにほころばせている。


「はいっ!了解であります!」


と気合入れたものの、結果は見事に最下位をとってしまい。連続最下位の歴史をまたしても更新する羽目となってしまった。


「またお前か……。いったいどれだけ最下位記録を更新したら気が済むんだ。まあいい、今日も罰は罰だな。購買に行って焼きそばパンを買ってくるんだ」


と言われ、購買に行ったもののやはり時間も相まってか、行列ができており競争になっていた。


やっとたどり着いたものの残っていたのはコロッケパンのみであり、今の罰ゲームになった経緯である。


これが俺がため息交じりに愚痴も言いたくなる経緯であった。


俺がランニングしていると、校舎の向こうからナンバー08に配属された、エイトが俺に向けて手を振る。


「せんぱーい。大丈夫ですか?生きてますー?」


と片手にはドリンクを持っており、ハイ先輩にと手渡してくれる。

エイトは俺からしたらよくできた後輩であり、今もこうしてランニングの間にも水分補給のためドリンクを差し出してくれたりもする。

演習の成績や学校の成績も俺なんかよりも上位に位置しており、とても俺なんかが先輩などと慕われる資格などないんだが


「エイト、ものすごくうれしいんだが。俺は落ちこぼれだから、そんな先輩に近づいたら、お前に悪いんだが――」


と続けようとするがエイトは軽く無視し、


「先輩、あれなんでしょう。」


といい、草むらの影を指さす。俺もつられて見てみるが、太陽光の反射で何があるのはわかるのだが、近づいてみるまでわからなった。


近づいてみてみると、それは一個のガラス玉であった。

ガラス玉の中には澄んだ淡い青がグラデーションになっていて、光にきらきらと反射しており、鮮やかな情景を映し出す。


エイトはそれを手に取り、ものすごく興味を示し


「先輩、見せてください。わぁあすごくきれいなガラス玉ですね」


といい、至極気に入った様子である。俺は手に取って眺めていたガラス玉をエイトへと手渡し。


「エイトにやるよ、ドリンクもらったお礼に。どうせ俺には使わないかもしれんし」


「本当ですか?ありがとうございます。大切にしますね」


といい無邪気な笑顔を俺に向ける。エイトの笑顔を見たのはそれが最後であった。


あれからしばらくすると戦争は急に始まりを告げ、俺たちの部隊は戦線に出されることとなった。

そして、戦へと出された俺たちを待っていたのは想像を絶するような地獄であった。

様々な兵器や銃などで数多の敵味方が死んでいき、そうして戦争はこちら側の勝利を迎えた。

俺は死体のそばに隠れるように気絶して倒れていたため、運よく生き延びることができたのだが、俺の学園の仲間達は誰一人帰ってくることはなかった……。


唯一、戻ってきたのは、仲間たちのネームタグとエイトに渡したガラス玉のみが俺の手元へ渡された。最初は実感がこそ湧かなかったのだが、教官に


「今だけは、泣いてもいい」


とだけ、伝えられエイトは泣き崩れた。

泣いた涙は、地面に泉を作り、思い出とともにぽろぽろとこぼれていく。


戦争が終わり、俺は苦しんでいる人たちを救うため、日々奔走している。

教官も教師として一緒についていくこととなり、後世に戦争の悲惨さを伝えていく活動をしている。

俺たちはこれからも子供たちの希望を探す方法を模索していく。


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