第5話 無限回廊・春 3
「やはり、パーティメンバーを分割したところで変化はなかったか」
「だなあ」
翌日早朝。まだほとんどの冒険者が朝食を食べているくらいの時間。無限回廊入口ロビーに隣接して設置されている休憩所。
軽い食事だけでダンジョンに挑んだユウとバシュラムが、ホテルで包んでもらった朝食をつまみながら結果を共有していた。
「……ねえ、ロイド」
「……言うな、みじめになる……」
結果を踏まえてどうするか打ち合わせをしているユウとバシュラムの横で、食事をしながらどんよりとした空気を醸し出しているミルキーとロイド。
自分達の存在が足手まといになっている自覚は十分すぎるほど持っているが、さすがに一緒に潜った時と比較して三分の一以下の時間でクリアされるとへこむものがある。
「速いって言っても所詮五層までだし、しかも今回は確認がメインだったからクリア優先でアイテムとか完全無視だったし、普段と全然条件が違うからそんなにへこまなくてもいいわよ」
「って言われても……」
「なあ……」
あまりにへこむ二人を見かねて、ベルティルデが慰めの言葉をかける。
が、たとえそれが事実であったとしても、ミルキーとロイドが普段の攻略にまったく役に立っていないのは変わらない。
なので、ベルティルデの言葉は何の慰めにもならないのだ。
「そもそもミルキーちゃんもロイド君も、無限回廊を攻略する種類の魔法使いとはカテゴリーが違うんだから、そこを気にしてどうするの。それに、そのあたりのことを横においても、二人とも後衛だもの。ソロやペアでダンジョンアタックを考える組み合わせじゃないんだから、ね」
「つうか、ティファの嬢ちゃんがおかしいだけで、お前さん達は魔法使いとしては十分引く手あまたになれる腕は持ってる。多分アルベルト達のパーティで一緒に行動すれば、普通に十分すぎるほど活躍できるはずだぞ」
どうもあまりによろしくない雰囲気に、ベルティルデとバシュラムが必死になってフォローの言葉をかける。
バシュラムの言葉ではないが、そもそもユウとバシュラム、ベルティルデという組み合わせに混ざって、普通に戦力として活躍できるティファが異常なのだ。
この組み合わせだと、中堅である深紅の百合ですら何もしないまま終わることが多いのだから、ミルキー達が特別に無能なわけではない。
「攻略の助けにならんことと足手まといになっていることとは別の話だ。いてもいなくても戦力の面では変わらんことは否定せんが、お前達は別にこちらの足を引っ張っているわけではない。戦力にならんのなら足手まとい、という考え方はさすがにポーターに失礼だぞ」
どうにも面倒なへこみ方をしているミルキーとロイドに対し、妙な方向から釘をさすユウ。
魔法使いというプライドがあるからかもしれないが、実は冒険者としてみた場合、ポーター以下の魔法使いなんて珍しくもない。
魔法使いには根本的に体力がない人間が多く、また守られて当然と考えて敵の攻撃の射線や庇いやすい立ち位置などを考えもせず行動する者も少なくない。
ザッシュやフィーナのように駆け出しのうちにそのあたりがちゃんと強制されればいいのだが、そのあたりを一切身につけないまま中堅まで生き延びてしまうと、地雷のレッテルを張られてしまうのである。
そういった地雷に比べれば、そもそも可能な限り敵に見つからないよう動く癖がついていて、さらに十分とは言えないまでもダンジョンのワンフロアを踏破したくらいではバテない程度の体力を持つミルキーとロイドは、覚えている魔法が冒険者向けのものではないことを差し引いても十分に優秀な魔法使いだ。
「大体、五層までの攻略時間なんぞ、どの程度ドロップを確保するかと体力を温存するかの差にすぎん。さっきの方針だったら、お前達が居ようが居まいが、かかる時間に大差はない」
「そうですよね。さっきは別に脱出するために走ってきたわけでもないですし、モンスターも最短ルートを通るときに出てきたのだけ仕留めてましたし」
「俺達もそんな感じだったな。わざわざ走って時間短縮を狙うほどでもなかったから、体力温存のためにずっと歩いてたぞ」
「このくらいの階層だったら、正直、誰を連れているかよりもフロアの広さと最短ルートの歩きやすさ、それからゴールまでにどれだけモンスターと遭遇するかのほうが影響は大きいわね」
「そういうわけだから、食ったらさっさと行くぞ」
割と身も蓋もない事実を言って、ミルキーとロイドを追い立てるユウ。
ユウに追い立てられて、慌てて最後の一口を飲み込んで、荷物を持って立ち上がるミルキーとロイド。
一連のやり取りを唖然とした表情で見守っている冒険者達をしり目に、さっさとダンジョンへ入っていくユウ達。
「特殊ダンジョンの攻略条件に引っかかるとまずいからクリアはせんが、最初の階層はドロップを無視して最短ルートを通るとどれぐらいの時間がかかるか、を実証しておくか」
「だな。ベルティルデ、アイテムの回収を精霊に任せたりはできるか?」
「どうせ手が空くから、それくらいは問題ないわ」
先ほどの言葉を証明するために、ユウの提案を飲んだ上で二度手間回避を検討するバシュラムとベルティルデ。
なお、精霊によるアイテム回収は、茂みなどが一切ないだだっ広い平原だからこそできるやり方である。
なので、森やら茂みやらがごちゃごちゃ存在するレアメタルスライムマップでは、残念ながらそういうやり方で手抜きをすることはできない。
「では、一気に行くぞ」
そう宣言して、普段とそう大差ない速さで進み始めるユウ。
そのあとをとことこついていくティファ。
襲い掛かってきては何が起こったかも分からぬまま仕留められるモンスターを見なければ、平原だということもあってその姿は妙に牧歌的だ。
スタートから五分後、このフロアのゴールに到着する。
「ふむ、さっきより早く着いたな」
「スタートもゴールも、すごくいい位置にありましたよね」
「割とモンスターも出てこなかったしなあ」
「逆に言うと、討伐漏れが多いからこのあとが面倒なんだけど」
あまりにあっさりついて唖然としているミルキーとロイドを放置し、結果についてそんな感想を言い合うユウ達。
なお、ティファの言葉にあるように、実は特殊ダンジョンでもスタートとゴールは毎回違う。
もっと正確に言うならば、特殊ダンジョンで固定されている項目はフロアのタイプと出現モンスターだけで、フロアの広さ及びスタートとゴールの位置、宝箱の有無とその内容、モンスターの出現場所は入るたびに変わる。
隠し通路や隠し宝箱、隠しフロアへの入口などについては発見されていないので何とも言えないところだが、恐らくこれらがあったとしても、出現位置はランダムに変わる可能性は高い。
「さて、取りこぼしを始末して回らねばならんわけだが……」
「今回のフロアはそんなに広くなさそうだから、余計なこと考えずに外周から内側に向けてぐるぐる回ってしらみつぶしにやるのが一番手っ取り早いんじゃねえか?」
「そうだな。手抜きを考えると、碌なことにならんか」
バシュラムの言葉に同意し、モンスターの気配が最も多い場所に向けて移動を開始しようとするユウ。
そこに待ったをかけるように、ティファの首にかけられていたブルーハートがピカピカ光りながらふわりと軽く浮かび上がる。
「むっ? どうした?」
「えっと、多分ですけど、ブルーハートに考えがあるんじゃないかと……」
「考え? どんな?」
「わたしが持ち主ですけど、宝石が考えてることは分かりません……」
「……それもそうか」
ティファの実にもっともな言い分に納得しつつ、どうしたものかと迷いを見せるユウ。
リュックのことがあるので、どうにも信用しきれない。
かといって、毎回却下して、勝手に暴走されるのも困る。
そのあたりの理由で少し迷い、悩んでいても仕方がないと腹をくくる。
「影響が少ない今のうちに、何をしようとしているか確認しておいたほうがいいか」
「えっと、それはつまり、ブルーハートにやりたいことをやらせてみる、っていうことでいいんですよね?」
「ああ。やらせてみてくれ」
ユウのゴーサインを受け、不安になりながらもブルーハートを解き放つティファ。
鎖を外されて自由の身になったブルーハートが、空高く飛び上がったかと思うと、くるくる回りながら魔力弾をばらまき始める。
三回転ほど魔力弾をばらまいて回ったたところで静止し、今度は上に向けて魔力を解き放つ。
すると、解き放たれた魔力が空中で拡散し、魔力光線の雨となって先ほどの魔力弾で仕留めきれなかったモンスターを正確に貫いていく。
わずか数秒で、ブルーハートはこのフロアのモンスターをすべて仕留めてしまった。
「……なるほどな」
「……細かいことは後回しにして、まずは精霊にドロップを集めてきてもらうわね」
「ああ、頼む」
予想をはるかにぶっちぎって派手で無情なやり口に複雑な感情を見せつつ、まずは事後処理を進めるユウとベルティルデ。
第一層はウサギやネズミといった、割とどんな環境でも出現するタイプの空を飛ばない小動物型モンスターしか出てこない。
小動物型モンスターだからといってすべてが弱いわけでもなければドロップにいいものがないわけでもないが、第一層にはそういうのはいない。
なので、ティファはおろかミルキーやロイドの修行にすら微妙で、場数を踏ませる以上の意味は薄く、ブルーハートにすべて任せたところで影響がないと言えばない。
問題は、ティファの魔力をどれくらい食っているか、なのだが……
「ティファ」
「えっと、普段使う初級魔法五発分ぐらいです」
「まったく問題にならんか……」
「はい……」
ネックになりそうな魔力消費すら、残念ながら極めて効率的としか言いようがない水準である。
「……ティファの関連でいちいち驚いてたらキリがない、とは思ってたけど……」
「……さすがに当のティファがドン引きしてるようなことだと、俺達も反応に困るよなあ……」
あまりに身も蓋もない状況に、己の場違い感も併せてしみじみとそんな感想を抱いてしまうミルキーとロイド。
仕方がないとはいえ、もはや二人して単なる傍観者だ。
「簡単すぎて気に食わん、というのは、俺の勝手な言い分なのだろうな」
「まあ、分からねえでもないがなあ……」
次々と集まってくるドロップアイテムをしまいながら、むっつりとした表情で不機嫌そうに言い放つユウ。
その言葉に苦笑しつつ、感覚的にはユウの味方をするバシュラム。
今回に関しては、いくらなんでも簡単すぎるのは事実で、これが当たり前になると人として堕落しそうで怖い。
「ドロップアイテムを全部回収しなきゃいけない、ってことを考えると、今回みたいに障害物が何もない環境ならともかく、少しでも茂みや沼地みたいなのがあるフロアではやめたほうがいいわね」
感覚的な理由で嫌がるユウとバシュラムに、実利的な点でベルティルデが否定的な見解を示す。
精霊の力で回収できるフロアならともかく、そうでないフロアでこれをやってしまうと、間違いなく取りこぼしが出てきてしまう。
レアメタルスライムのフロアでどれほどアイテム回収に手こずったか、それを思い出せば下手なことはできない。
「えっと、そもそも今の攻撃、一体どれくらいのモンスターまで通用するんでしょうか?」
「分からんが、放射された攻撃の一発一発は、それほど大きな魔力が込められていたわけではない。恐らく、レッサーデーモンになると一撃で、とはいかんだろうな」
「わたし自身ではよく分からなかったんですけど、消費量的にやっぱりそんなものですか」
「さっきの攻撃は、な。だが、そもそも今のが限界なのかどうか自体、胡散臭い」
「あう……」
ユウのその指摘に、今までが今までだけに一切反論できないティファ。
ブルーハートが利用できる魔力がこんなものなのでは、という仮定も、例のリュックを作った際に勝手に使用した魔力量により否定される。
「ねえ、ユウさん。一ついいかしら?」
「なんだ?」
「正直言って、このままブルーハートを発動体に作り替えるの、ちょっと怖いわよね?」
「……そうだな」
「いい機会だし、問題なさそうなフロアはブルーハートに何ができるかの確認に使ったほうがいいんじゃないかしら?」
「確かにな」
ミルキーに言われ、真剣に検討するユウ。
ミルキーの指摘通り、もともとブルーハートは発動体のパーツとして作られたものだ。
その経緯が経緯だけにどうしても忌避感が先に立ち、つい過剰に警戒して使わないようにしてしまうが、ティファの今後の魔法制御を考えると、発動体になったブルーハートを使わないようにするのは難しい。
ならば、何ができるのか分からないというリスクがありすぎる状況を放置するのではなく、よそに影響が出ず外に出るだけでやり直しができる今のうちに、確認すべきことは確認しておいたほうがいいのは確かだ。
「……よし。ドロップアイテムの回収に問題が出そうなエリア以外は、ブルーハートの機能確認に使おう」
結局、ユウはミルキーの提案を採用し、徹底的に検証することにする。
「問題は、次はいきなり山岳フロアだってことだがなあ……」
「別に、殲滅能力だけしか確認項目がないわけじゃないでしょ?」
「つっても、他に何がある?」
「まず思いつくのは、付与系は変な機能があったのだから、探知系の機能も持っていないのか、ね」
とにかく殲滅することにばかり発想が行くバシュラムに対し、そう突っ込みを入れるベルティルデ。
いくらティファの魔法=過剰火力による完全殲滅というイメージが強いとはいえ、さすがにそれはあまりにも脳筋的な発想にすぎる。
「えっと、ブルーハート。ここのフロアに何か隠れてたりしますか?」
ティファの問いに対し、特に反応しないことで回答するブルーハート。
だが、この反応ではこのフロアが見たままで何もないのか、それともブルーハートにそういう機能がないのかは分からない。
「……えっと、ブルーハートには、そういうのを探す機能はないんですか?」
質問が悪かったと判断し、聞き方を変えるティファ。
ないことを前提にした聞き方をするあたり、ティファがブルーハートに対して抱いている気持がよく分かる。
さすがにティファのその聞き方は心外だったのか、ブルーハートが気分を害したようにピカピカと光って、それくらいできるわと言わんばかりに飛び回る。
「……多分何かはできるんだと思うんですけど……」
「結局のところ、発声器官も表情筋も存在しない無機物だからな。頑張ってゼスチャーをされても、実際にどうなのかは判断できん」
激しく自己主張するブルーハートを見て、ちょっとおろおろしながら予想を口にするティファ。
それに対し、冷めた表情で分からないものは分からないとばっさり切り捨てるユウ。
そもそもの話、若干とはいえ意思のようなものが伝わっているティファに対してすら通じていないのだ。
他の人間に分かるわけがない。
「っつうか、そういうのは次のフロアでやったほうがいいんじゃね?」
「坊主の言うとおりだな。ここでもめてても始まらん」
「宝石相手にもめるっていうのも、なんだか変な感じだけどね」
ロイドの突っ込みをバシュラムが支持し、ベルティルデが何とも言えない気分で感想を言う。
それを聞いたティファが、ユウにばっさり切り捨てられて落下したブルーハートを拾って、どことなく恥ずかしそうにゴールをくぐる。
話し合いの間にドロップアイテムの回収は終わっており、次のフロアのモンスターも大したものは出てこないと分かっているので問題ないが、単独で次のフロアに移動するなど危険極まりない。
普段のティファには見られない軽率な行動である。
「ティファが進んでしまったことだし、俺達もさっさと行くか」
「そうね。でもあの子、ブルーハートができてから、割とこういうこと増えたわよね」
「うむ。ある意味では、ようやく子供らしくなったと言えなくもないが」
「それ自体はいいんだけど、あのままで大丈夫なのかしらね……」
らしくないティファを見て、どうにも言いようのない不安を感じてしまうミルキー。
何が不安かといって、ブルーハートはユウとティファに対してのみ、やたら過剰に反応している節があることだ。
ティファに対してはともかくユウに対してというのがきな臭いというか、看過してはいけないような気がしてならない。
「会話も念話もできん宝石の考えていることなど、最初から理解しようとすること自体に無理がある。あれが何かを企んでいたとして、その影響がどう出るかなど考えるだけ無駄だ」
現実を見て割り切ったユウが、ミルキーの不安を切り捨てる。
世の中、起こってから対処するしかないことというのはいくらでもあるのだ。
「ティファ、あまり先走るな」
「あうっ、ごめんなさい……」
一足先に次のフロアに移動してしまったティファに、追いついたユウが軽く注意する。
注意されてしょんぼりするティファの胸元で、ブルーハートがピカピカ光る。
「……なんだか、非常に張り切ってます……」
「やりたいようにやらせるか。ただ、殲滅だけは避けてほしいところだが」
諸悪の根源だというのにやたら元気なブルーハートに、がっくり来るティファ。
それを見て肩をすくめつつ、検証なので好きにさせることにするユウ。
ユウから許可が出たと見たブルーハートが、唐突に十歩先くらい先の山肌に魔力光線をぶち込む。
魔力光線が消えると、その先にはぽっかりと洞窟が。
「隠し部屋というやつか。これで、精度は不明だが隠し通路や隠し部屋の類を探し出す機能はあると証明されたな」
「こう、便利すぎて涙が出てきそうなんだが……」
シーフ系泣かせにもほどがあるブルーハートの機能に、今までベルティルデと二人で苦労して何とかしたあれこれを思い出して、本気で泣けてくるバシュラム。
ティファを追って移動したら、その直後にこれだ。
これで解錠や罠探知や解除などがあれば、本気でシーフなど必要なくなってしまう。
「便利なのはいいが、肝心のティファの魔法の規模を抑える機能だけはなさそうなのが、どうにも評価しづらいところだな」
予想以上に多機能なブルーハートを見て、正直に思うところを口にするユウ。
せっかくいいところを見せてどや顔をしていたところに、一番目か二番目に評価してほしいユウからのダメ出しを受けてポトリと落ちるブルーハート。
もともとユウとティファが求めていたものは、過剰すぎて扱いに困るティファの魔力を使いやすく制御するための道具だ。
いくら便利機能が多数あろうが、いくら魔力の使用効率がよくなろうが、適切な魔力量で適切な規模の魔法を発動するという機能がなければ、必要な道具にはなりえない。
まだ発動体に加工する前段階なので多くは求めないが、大きな魔力を使って大規模な魔法を効率よく高精度で使うだけなら、別にあってもなくても大差ないのが現実である。
「まあ、現時点で使う機会がないだけで、そういう機能がないとも限らないわけだしさ。もうちょっと長い目で見てあげましょうよ」
「あの、ミルキー先輩は本当にあると思いますか?」
「……発動体に加工したら、さすがにあるでしょう」
楽天的なことを言って励まそうとし、冷静にというより冷徹に突っ込んでくるティファに心が折れて日和ったことを言うミルキー。
そのやり取りを聞いて奮起したか、有名どころのアーティファクトでもここまで多機能ではないというほど多彩な機能を見せつけるブルーハート。
「求めているのが発動体でなければ、どんなアイテムより評価できるのだがな……」
「わたしが欲しいのは冒険者をする上で足りない部分を埋める道具、ではなくて、ちゃんと普通に魔法を使えるようになる道具、です……」
「かといって、さすがにまったく評価をしないのも不当だ」
「実際……不本意ながら、すごく役には立っています」
三十層までクリアしたところで、ブルーハートについてそう評価を下すユウとティファ。
結局、ちゃんと高評価を得ながらも、最初の印象の悪さと求めている機能に対するズレの合わせ技を克服しきれず、ユウとティファからの好感度はさほど上がらないブルーハートであった。




