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第1話

「ご飯どころか、ゆっくりお風呂までいただいてしまったよ…」


 ジグは自分は魔王であると名乗ったのに、お料理がとても上手でした。

 新鮮な野菜のサラダにジャガイモのポタージュ、よく焼かれてソースで味付けされたお肉のソテーはどれも絶品。

 「魔王様このお肉ってゾンビ肉とかではないですよね」と聞いたら「それは『ブタ』って生き物のお肉だよ。あとゾンビ肉は腐ってるだろうから食べないことをお勧めするけど……」ですって。

 ごく普通か! とても美味しかったです。


「それにしても、亡霊ファントムね……」


 お風呂場の鏡に映った自分は、体格も顔も変わらずーーけど髪と肌が真っ白に、瞳は金色になっていた。

 なるほど、確かにこの白さは亡霊と言われるだけあって、まるで死んでるみたいだね。

 顔立ちは生前の日本人だったころと大きくは変わらないのに、不思議とこの色が馴染んでいる。


「亡霊に魔王だなんて、本当にファンタジーRPGの世界だよね。ディアボロス魔王国も、ゲームに出てきそうな名前だし。

 あ、ゲーム、そうだねRPGなら……メニュー画面とか出てきたりして。」


 ぽよん。

 メニュー画面、と口にした途端。目の前に半透明のタッチパネルが現れた。


「メニュー画面、ほんとに出てくるんかい……!!」


 どんだけテンプレRPGの世界なんですか。ここ。

 宙に浮かぶ半透明のメニュー画面には『ステータス』『道具』の2項目が表示されていた。

 試しに『ステータス』を触ってみる。



 リンネ 

 亡霊ファントム Lv.1

 権能 前世の記憶 アイテム収納



 うん、とってもシンプル!!

 当たり前だけどレベルは1。権能は『前世の記憶』と『アイテム収納』。


「『前世の記憶』はともかく、『アイテム収納』?」


 名前からするとそのまんま、アイテムが収納できる能力だと思う。

 問題は、どこにどうやって収納するか。


「こんな感じで、収納〜なんて……うわっ」


 手に持っていたタオルが消えた。慌てて探しても、周囲には見つからない。

 えっ、なくした?

 一通り探しても見つからないので、ふとメニュー画面にあった『道具』を押してみる。



 ふわふわタオル ×1



 ……あった?のかな

 メニュー画面に触れると、ぽとりと先ほどまで持っていたタオルが落ちてきた。

 うーん。すごく不思議体験。


「リンネー、大丈夫? 溺れてないー?」

「溺れてないよ!! 亡霊ひとをなんだと思ってるんですか!!」

「ごめんごめんー、のぼせる前に出ておいでよ!」


 メニュー画面で遊んでたら、結構時間が経ってしまったらしい。

 早く出て、ジグに詳しく聞いてみよう。



「うん、メニュー?自分のレベルなら誰でも見られるけど、道具アイテムっていうのは聞いたことないなぁ」


 リビングでジグが出してくれた温かいココアを飲みながら、先ほどあったことを話す。

 魔王やメニュー画面は完全に異世界RPGなのに、お風呂やココアが普通にあるのは不思議だ。

 生活様式は、私のいた世界の現代日本と大差ないと思う。テレビやパソコンとかはないけどね。


「権能に『アイテム収納』があるなら、そのせいじゃないかな? いいなぁ、便利そうで。」

「ジグにも権能があるんですか?」

「僕は魔王だから、もちろんいくつかはあるよ。ちょっと待ってねー」


 ジグが立ち上がり、なにやら呪文を唱え始める。

 するとジグと私の足元に2つの魔法陣のようなものが浮かび上がり、その2つの円が光りながら接触した。

 うーん、とてもふぁんたじー。


「……ステータス共有」


 目の前に半透明のメニュー画面が現れ、上の文字が書き換わっていく。


 ジグ 

 魔王 Lv.1

 権能 ダンジョン作成 召喚 室内インテリアコーディネート 氷魔法Lv.1


「……って弱!!レベル1って私と同じだ!?」

「うん、僕まだ実戦経験ないんだよね。戦いとか痛いし怖いし……」


 戦闘用の強い権能持ってないしねー。と、のほほんと笑うジグ。

 確かに戦いで役に立ちそうなものが氷魔法くらいしか見当たらない。それもレベル1だけど。

 というか室内インテリアコーディネートってなんだ。趣味か。上質な暮らしか。


「このステータスって、個人情報じゃないんですか?」

「うん、本当はあんまり召喚した魔物に共有したらいけないって言われるねー。情報も弱点も筒抜けになるから」

「いやいやいや!! もっと危機感持ってくださいよ!? 私、一応不本意ながら魔物ですよ!?」


 あまりのうかつさに思わず目を剥いて叫ぶ。

 私が愛と平和を愛する亡霊もとじょしだいせいだから良かったけど!


 しかしジグはどこ吹く風で手に持ったココアを飲むと、おっとりとつぶやいた。


「いいんだ。僕の従僕サーヴァントは、君しかいないからね」


「さーゔぁん、と……?」



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