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第二話:桜井さん家

見知らぬ天井に飛び起きたが体中の痛みだした。痛みの堪えながら辺りを見回した。天蓋付きベッド、アンティーク調の机と椅子。高級そうな革のソファーが置いてあった。


「気が付いた?」


その時、ドアが開かれ声をかけられた。


「小松くんって弱っちいね〜」


声に反応して振り向くと、桜井美花が立っていた。


「どうしてって顔ね。ここは私の部屋。いっとくけど男を上げたのなんて初めてなのよ?光栄に思うように。で、あんたはあの後気絶したのよ。幸い家が近かったからね」

「そっか・・助けにいったのに逆に助けられちゃったな・・」

「本当よ!まったく、自分の実力もわかってないのに無闇に突っ込んで来るのを馬鹿って言うのよ!」


「すまん」と言って頭を下げる。

それを見た桜井は顔を背けた。


「・・・嘘よ。ありがとね。・・・××し××た×」

「え?なんて言ったの?」

「な!なんでもないわよ!!」


なんだよ、ケチ〜。



その後傷の具合を見てもらって横になると、外が暗い事に気付いた。


「桜井〜、今何時なんだ〜?」

「ん〜?今は〜二時五分前〜」


ソファーに座って本を読んでいた桜井が腕時計に目を落とすと淡々と答えた。


「げ、いつの間にかそんな時間か〜!!早く帰らんと・・」

「今日は泊らせるって電話しといた〜」

「はぁ〜!?」


俺の言葉を遮って出てきた言葉に耳を疑った。


「待てよ!さすがにマズいだろ!」

「あん?うるさいな〜。あんたの親にも了解もらったし、学校は家から通えばいいでしょ」

「そうだけど・・桜井の親には・・」

「しつこいな〜、ここには親は住んでないよ。ここは私の通学用の家!実家は別!」

「ちょっと待て。今なんて?通学用?学校に通うだけでここまでするか?」

「するのよ!」


そういう問題かね〜。まぁここはお言葉に甘えよう。正直この体で家まで帰れません。


「ありがとう・・・ごめんな」

「なんで謝んの?変なやつ〜」


へへへっと笑った俺に桜井は本当に変なモノを見る様な目で見た後、再び本を読み始めた。


なんか今まで普通に話してたけど、やっぱり気になるよな〜。

学校にいる桜井と男共をなぎ倒す桜井。どっちも同じ人物だとは思えない程の変わり様。

聞いちゃまずいかな〜。・・でも・・


「そういえばさ〜、桜井は学校と今では随分雰囲気違うよね」


パタンと本を閉じてツカツカと近付いて来る。


「誰にも言うなよ」


顔が近いですよ、桜井さん。

しかも学校の『おしとやかモード』ならドキドキするんだろうが、今は別の意味でドキドキしてます。恐いです。


「な、なんで?」

「・・宿泊料・・・いっせんまん」

「・・・へ?」

「だから宿泊料と治療費で一千万円って言ってるだろ〜!!」

「えええ〜!?だ、だって宿泊ったって桜井が勝手に決めた事だろう〜!」


傷だらけの体で胸ぐらを掴まれている俺。このシーンだけ見たら明らかに恐喝されてボコボコにされている少年の絵なんだろう。


「『小松くんが・・・いきなり家に押しかけてきて・・・ぐすん』」


いきなり『おしとやかモード』の桜井が目を潤ませて見てくる。


「嘘を付くな嘘を〜!!」

「だが、一体全国の何人が信じてくれるだろうな〜・・・」

「うっ!」

「だから口止め料代わりに宿泊料と治療費の一千万円はチャラにしてやるよ」

「そ、そんな!横暴な〜!!」

「『小松くんに犯された〜』」

「やめろ〜!!・・・わかった、誰にも言わないよ・・・」

「『ありがとうございます』」


コロッと態度を変えニッコリと微笑む桜井さん。

俺ってばとんでもない秘密を知っちゃったみたいだな〜。


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