旅の準備
ちょっと途中で集中力が切れたので所々変かもしれません。
「ん…。もう朝なの。とは言ってもまだ殆どの人は寝てると思うけど、なの。」
アイはベットから起き上がり、部屋の壁にある窓から外を見ていった。時刻は六時くらいだろうか。
まだ外は薄明るいというくらいの明るさ。
「ニャー。」
「ミミ。メイ達は…。まだ起きてないの。なら昨日ミミのブラシかけるの忘れたし今やっちゃうの。」
アイは宙に浮く、白と赤と青と黄と緑の丸い光を見て言う。
「ニャー!」
ミミは「お願い!」と言うようにアイの膝に乗ってきた。
「あ、フウがいないからブラシが出せないの。」
「ニャーァ。」
ミミは「残念。」と言う様に鳴く。
ブラシが好きな辺り、猫というより犬の様だ。
「ニャ!」
そんな事をアイが考えているとミミが「失礼な事考えてるでしょ!」と言う様に鳴いた。
ずっと一緒にいると考えている事まで伝わってしまって困る。
…ただ「犬の様だ」は失礼な事なのだろうか。
「ニャニャニャ!」
今のミミの言葉を訳すると「当たり前でしょ!ミミはあんな風に吠えたりしないもの!ミミは優雅なのよ!」こんな感じだ。
「仕方ないの。後でフウが起きたらしてあげるの。お詫びに魔力、あげるの。」
「ニャン!」
アイがそう言うとミミは「それならいいわ!」と言う様に鳴いた後にアイの指を甘噛した。
魔力を外に漏らさないように指から直接出すのだ。
「にゃ~ん」
アイが魔力を出し終えるとミミはうっとりする様な声をだしてベットでゴロゴロする。
『んん~。あ、もうアイは起きてたの。』
白の光がメイの形になり、光が引くと伸びをしたメイがいた。
『ふあ~。あぁ、よくねた。おはよう。アイ、メイ。』
次に黄の光がピピの形になり、欠伸をしたピピが現れる。
ミミに挨拶しないのはアイに触れていない状態のミミには精霊を見る事が出来ないからだ。
『…アイ、メイ、ピピ。おはよう。』
緑の光がフウの形になり、いつも通りのフウが現れた。
『ん、おはよう。アイ、メイ、ピピ、フウ。最後はまたヒナだね。』
今度は青の光がスウの形になり、目をこするスウが現れる。
『んむぅ。ふあ~。…眠いよぅー。あぁ、あたし、また最後だぁー。おはよぉー。アイ、メイ、ピピ、フウ、スウ。』
最後に赤の光がヒナの形になり、伸びをしながら欠伸をし、目をこすっているヒナが現れた。
『皆起きたの。おはようなの。フウ、起きたばかりで悪いけどミミのブラシとタオルを出して欲しいの。これ魔力なの』
そう言ってアイはフウに魔力を渡す。
『…ん。』
『ありがとうなの。スウ、このタオルを湿らせて欲しいの。魔力なの。』
『はい。』
『ありがとうなの。「ミミ、ブラシかけるの。」
「ニャー!」
ミミは「早く!」と言うかの様に鳴いてアイの膝に乗った。
それを見てアイは苦笑し、まず湿ったタオルでミミを拭く。
すると、昨日の戦場での砂埃で少し茶色くなっていた毛色が真っ白に戻った。
『スウ、このタオル、洗っといて欲しいの。魔力なの。』
アイはスウが出した水球にタオルを入れると、次にブラシを手に取り(襲ってきた魔獣で食べるために殺した魔獣達の色々な毛をあわせて作った)ミミの毛を梳かす。
「ゴロゴロ。」
よほど気持ちがいいのかミミは喉を鳴らしていた。
「はい、終わったの。」
「にゃーぁ。」
ミミが名残惜しそうな声を出してくる。
「でも今日は昨日の命精さん達に名前をあげなきゃいけないの。ブラッシングはまた明日なの。」
「ニャーぅ」
今のミミの鳴き声を訳すと「仕方ないなぁ」といった感じだろうか。
メイに言われアイは自分の髪も梳かす。
「今日はミミ何処に乗るの?」
梳かし終わるとアイはミミに聞いた。
ミミはその日の気分で乗る場所が変わるから毎日聞いているのだ。
「にゃ!」
アイは何となくミミが何を言っているのか分かるのでミミが「頭!」と言ったのが分かり、抱き上げた。
『《精霊感取》』
アイは抱き上げるのと同時にスキルを使い、ミミにも精霊が見える様にしてから頭に乗せる。
「ミャー」
『ミミ、おはよう』
『おはよう』
『…おはよう』
『おはよう。ミミ。』
『おはよぉー』
ミミが精霊を見れる様になったため、メイ達も挨拶をする。
精霊が話す言葉はどんな生物にでも通じるので言葉をわざわざ変えなくてもいい。
また、話す言葉に意味があれば精霊はどんな言葉でも通じる。
このお陰でミミが精霊と話していても、人にはただ鳴いているようにしか見えないので安心だ。
『フウ、木の板出して欲しいの。』
アイは自分の部屋からリビングに移動し、机の前で立ち止まり言う。
『…ん。』
フウがうなづくと薄緑色の陣が机に現れ掌サイズの木の板が出てきた。
『ありがとうなの。フウ。ヒナ…』
『書けばいいんでしょぉー?』
『そうなの。魔力なの。』
アイが魔力を渡すとヒナは腕を振り、薄赤色の陣を木の板に現す。すると木の板に、
ちょっと野暮用ででかけてくるの。すぐ帰ってくるの。
と焼き記された。
「じゃあ行くの。」
・・・
『………誓うならばこの契約書に印を示せ。》』ふぅ、これで全員終わったの。じゃあ帰るの。」
四千余りの命精達に名を与え終えたアイはそういうとくるりと後ろを向き歩き出す。
『…ねぇ、俺の事、忘れてない?』
歩き出すと頭の上から純白のワンピースを着た白髪ショートヘアで黒目の精霊が降りてきた。
ミミの命精だ。
『忘れてるも何もプーがミミの中からでてこなかったんじゃない。』
悲しげな顔をした命精――プーにメイはそう言う。
『仕方ないじゃんか!俺はメイとは違って子が自分で魔力を作ったりしないから仕事に追われてんだよ!』
「にゃぁー。」
プーがそんな事を言うものだからミミがしょげてしまった。
『あ、違うんだ!ミミ、そういうわけじゃ…。』
アイの頭の上で丸くなってふて寝してしまったミミにプーは必死に弁解しようとするがもう遅い。
『大丈夫なの。ちゃんとプーの事は覚えてるの。』ミミもふて寝してないで起きるの。」
『それならいいんだ。俺、この中でたった一人の男だしなかなか外にも出れないから忘れられてるんじゃないかと…。』
「ニャミャッ!」
アイに言われ、仕方ないなぁ、とふて寝をやめたミミが「男ならそんな事ぐちぐち言ってないでさっさと働け!」と言うようにプーを殴った(精霊なので触れる事は出来ないが気分だ)。
『ちょ!もう分かったよ、働けばいいんだろ!働けば。本当、俺の子は厳しいんだから…』
「ミャッ!」
最後の一言でまた叱咤を受けたプーは逃げる様にミミの中に入っていく。
そうこうしている内にカレン達の家についた。
時刻はまだ七時ほど。
カレン達が起きているか起きていないか微妙な時間帯だ。
「ただいま、なの。」
起きているかもしれないので一応そう言ってから中に入る。どうやらまだ起きていなかった様だ。
「仕方ないの。朝ご飯でも作っておくの。」
『…私はこの木の板しまっておく。』
『分かったの。ありがとうなの。魔力なの。』
アイはそう言ってキッチンに向かう。
昨日の大量のご飯は残った分はミミが食べてしまったのでないのだ(魔獣は基本的に無属性の生物の魔力を食べるが、人間など魔力が染み渡った肉を魔力だけでなく食べる様におやつ感覚で普通のご飯も食べる事が出来るのだ)。
「…何を使っていいのか分からないの。」
カレンの家のキッチンは料理亭のキッチンと繋がっており、沢山の材料がおいてあるが何を使ってよく、何を使ってはいけないのかが分からないのだ。
「えーっと。ん?これは【明日。朝ごはん。材料。】なの?これなの!えっと、キャベツに鶏肉にじゃがいもに卵にパンなの?なら、ポトフに目玉焼きにパンにするの。」
背伸びをして机の上の木の板の横にある材料を見て献立を決めるとアイは大人二人前に子供一人前、それを作り始める(山にミミと精霊達と共に引きこもっていたので料理はお手の物なのだ)。
とは言っても五歳程度の身長なので大人が料理する様に造られたこのキッチンだと料理など出来ないので、リビングからカレンの椅子を(アイの椅子だと子供椅子なのでバランスが悪くなるのだ)持ってきて靴を脱ぎ(この国、シュワリューズは家の中でも基本的に靴を履くのだ)それにのり、料理をし始めた。
まずは薪をいれ、それにマッチで火をつける(出来るだけ魔法は使いたくないのだ。この前、料理をヒナに温めてもらったのはお詫びも含めている。お風呂は、メイがアイのことで引くはずがないので仕方ないのだ)。
鍋が温まるのを待っている間にキャベツとじゃがいもと鶏肉をざく切りし、温まった鍋にいれ、軽く炒める。
そして、調味料をいれキッチンの隅にあるタンクから水を汲み出しそれも入れる(恐らくカレンが足りなくなったらお風呂の方にある井戸へ汲みにいっているのだろう)。
次にお皿やスプーンにフォーク、ナイフを探し、それらを用意したらフライパンを温め、油をしく。
そこに、卵を三つ割り入れた。
次にパンを切り出し、お皿の上にのせる。
そして、そこに出来上がった目玉焼きものせた。
それらを用意している頃にはポトフも出来上がり、ポトフも器によそる。
それが終わるとアイは椅子から降り、靴を履いた。
そしてコップを用意してそこに水をよそる。
「おはよう。アイちゃん。なんだがいい匂いがするね。あぁ、朝食を作ってくれたのかい?ありがとう。」
カレンがキッチンに現れ、そう言うと、お盆にアイが作ったもの全てをのせ、布巾も濡らして片手に布巾、片手にお盆、と持ちリビングまで持っていき布巾で机を拭くと料理を置いていく。
「カレンお義母さん。ありがとうなの。椅子はアイが元に戻すの。」
やっと、カレンをお義母さんと呼ぶのに慣れたアイである。
「いや、私が…。可愛いね。」
自分と同じくらいの椅子を運ぶ、と言うので止めようとしたカレンだが椅子を持ち上げ、えっちらおっちら歩く(力はあるのだが前がよく見えずこうなるのだ)アイの可愛さにそれを止めた。
「おはよう。おや?もう朝食の準備が出来ているのかい?」
起きてきたグースが驚いた様な顔をしている。
「そうだよ。アイちゃんが作ってくれたのさ。」
「おぉ。それは楽しみだね。」
そんな会話をしながら皆が席に座るとグースが
「この世の恵みに感謝します。」
と言い、アイ達もそれに続き食事を始めた。(これはこの世界共通の食事の前の挨拶だ。それぞれの国で信仰している神は違うが神が天罰を下しに来た時などで神達が仲が良いことは知っているので共通にしたのだ。意味が同じと言うだけで言葉は違うが。)
「神々よこの世に恵みをもたらしてくださりありがとうございました。」
また、グースが先に言い、アイ達がそれに続く。
「カレンお義母さん。グースお義父さん。話があるの。」
食べ終わり、片付けが終わるとアイが真剣な顔をしていった。
グースはこの後、料理の仕込みをしないといけないのだがアイの真剣な顔に再び席につく。
「なんだい?」
「ごくん」
グースが質問し、カレンが唾を飲んだ。
「アイはこの後、どこか遠い所に行ってからこの国の王都に行って、魔法学校に入学しようと思うの。明日の朝には出発しようと思うの。」
「それはなんでだい?」
「わ、私達に迷惑がかかるとおもってるなら…」
「そうじゃないの。まず、どこかで対策をしないとまたこの町に魔獣大群が来ちゃうの。魔法学校は神様達が行ってみたらもっといい対策が見つかるって言ってたからなの。」
「神、様?」
「神、様?」
流石、夫婦。息がぴったり合った。
「まぁそこはそういうものって受け流してくれると嬉しいの。」
きちんと説明するとまた前みたいに放心してしまうのではないかと今回はきちんと説明しなかったアイである。
「わ、分かったよ。」
「でも、アイちゃん。魔法学校は大体、十三歳から十五歳の子が入学するんだよ?」
「分かってるの。アイにはそれをなんとか出来るスキルがあるからそれを練習してから入学するつもりなの。」
「…そうかい。ちゃんと帰ってくるんだよ?」
カレンが悲しげな表情を浮かべて言った。
それもそうだ。
アイがここで暮らす様になってからまだ一日しか経っていないのだから。
「分かってるの。だってアイは、アイ・ギバイツ・ツェミラ・クリスティン、なの。」
ツェミラとはカレン達のファミリーネームだ。
この世界ではミドルネームは尊敬する者のファミリーネームや義父、義母のファミリーネームなどをつける。
因みにカレンは
カレン・ビラクト・ツェミラ
で、ビラクトは結婚する前の自分のファミリーネームだ。
「…そうかい。分かったよ。」
「カレンがいいなら、僕に異言はないよ。ただ、町の皆にきちんと挨拶をするんだよ?」
「分かったの!」
グースはアイが了解したのを見ると料理の仕込みをしに行く。
「今はまだ起きてる奴は少ないと思うから、どこかで…そうだね、昨日の戦場とかでそのスキルとやらを練習してから挨拶に行くと良いよ。」
次にカレンがそう言いながら何か決意したような顔をして椅子から立ち上がった。
「? 分かったの。じゃあ、行ってくるの。」
そんなカレンを不思議に思いながらアイは再び戦場に向かって歩き出す。
因みにミミは作っている間も食事の間もずっと頭の上にいた。
そこに馴染みすぎてアイの頭の上でミミがゴロゴロしている事に気が付かなかったカレン達である。
『メイ、アイに【変身 上級】ってスキルがついてると思うの。教えて欲しいの。』
アイは戦場につくとそうメイに話しかけた。
『んー。えーっと、
今と同じ脂肪率、筋肉率のまま好きな年齢まで成長させる事が出来る。意識的発動。精神力使用。
また、細部を変える事も出来る。意識的発動。精神力使用。
他の者にも髪の色や目の色ならば変える事が出来る。意識的発動。精神力使用。
また、これらを保持する事が出来る。意識的発動。精神力不使用。
また、服の保管庫をつくる事が出来る。意識的発動。精神力不使用。
保管庫に入った服ならば瞬時に着替えることが出来る。意識的発動。精神力使用。
だって。』
『そうなの、体が大きくなるの。じゃあ。お母さんの服を着るの。それなら平気なはずなの。フウ、魔力なの。』
『…ん。』
フウがうなづくと黒いワンピースのような服が出てきた。
母が若い頃の物はボロボロの物が多いので歳をとってからの物だ。
十三歳になってもぶかぶかかもしれない。
『ありがとうなの。』
アイはそういうと早速、服の保管庫をつくりそこに服をいれ、早着替えをする。
キーワード(《認識障害・最適化・レベル2》など)はいらないので(これは使おうとすればなんとなく分かる)無言だ。
念じると光がアイを包み、光が消えた頃にはダボダボの服を着た(服が地面についてしまっている)アイがいた。
『じゃあ次なの。《変身・百三十歳》(アイが十三歳程の大きさになるには掛ける百で百三十歳にならなくてはいけないのだ)』
アイがそう言うとアイの体が光に包まれ、光が消えた頃には十三歳程に見えるアイが立っていた。
「変身と早着替えが同時に出来るようになるといいかもしれないの。」
アイが少し土がついてしまった服を見てそんな事を呟いていると(先に着替えないと元の服が伸びてしまうから後から着替えるという事もできない)メイが、
『どうせなら細部を変えてみたら?』
と言ってきたのでアイはこの後色々と練習する事にする。
「どうなの?」
皆の意見を聞きながら細部を変えていったアイは最後にフウに糸を出してもらい、髪を結んでから言った。
声を出しているのはミミにも意見を聞くためだ。
この町の人々ならバレても大丈夫なのではないか、という事もあるが。
「メイ達を合わせた格好にしてみたの。髪の毛の色はこの国に合わせるために緑にしたけど長さはメイと同じくらいで、横髪はヒナと同じように伸ばしてみたの。髪型はフウの三つ編みとスウのお団子で、目の色はピピの銀色なの。」
『俺は!?』
プーがミミの中から顔だけ出して言ってくる。
仕事をしながら聞いているのだろう。
「ぷ、プーは、えっと、そう!前髪なの!」
『くるしいな!おい!』
『プーは黙って仕事してなさい!プーは男なんだからアイに取り込めるはずないでしょ!』
「ミャッ!」
ミミとメイに叱られプーはしぶしぶとミミの中に入っていく。
「なんだか、プーが可哀想に思えてきたの…。」
『そんな事ないわよ。気のせいよ、気のせい。』
「そうなの?」
『そうよ。』
今のアイの姿を説明すると、
深緑の髪を胸まで伸ばして後ろ髪は後ろで三つ編みお団子にし、横髪は肩まで伸ばし、前髪は眉を過ぎたところまで。目は銀色で背丈は百五十(150)センチ程で平均的な身長よりやや小さめ。
髪の毛の長さや色、それに目の色以外は弄っていない。
服がずり落ちそうになり、やはり母の服はぶかぶかなので新しく作らなくてはと思うアイ。
その後もっと練習し、一瞬でこの髪型、この服、この姿になれるようになると(ミミは練習中はしぶしぶとアイの頭から降りた。やはり降りると精霊を見る事もできないのでつまらないのだろう)まずは町長の家に向かう。
時刻は九時くらいだろうか。
もう大体の人が起きてきて、町は魔獣大群が来る前の様に賑わっている。
「あ!あいちゃんだ!」
そう言ってアイに駆け寄ってきたのはスーシャの息子、ライトだ。
魔獣大群が来る前のように明るく笑っている。
「どうしたの?」
「あのね!このまえのおれい、いってなかったな、っておもって!このまえはおかあさんがへんになっちゃったから、いいそこねちゃって、だから、ありがとう!あいちゃん。」
「別に大した事はしてないの。でも、アイもライトくんが笑ってくれて嬉しいの。」
「うん!ぼく、もっと、もっとわらうよ!」
そう言ってライトは更に口角をあげて顔、満面の笑みを浮かべた。
「ライ!急に走り出して…。あぁ、アイちゃんね。どうしたの?」
「えっと、ちょ、リューお爺ちゃんに話が…。あぁ、そうなの。スーシャさ、お姉さん達にも話しちゃうの。」
まだ、カレンとグース以外に呼びなれないアイである。
「ん?何?」
「アイは明日の朝、旅に出ようと思うの。それからここの国の王都に行って、魔法学校に入学しようと思うの。」
「え?ん?は?へ?あ!そ、それは大変だわ!すぐに家に帰って何かつくらないと!ライ!帰るわよ!」
スーシャは最初は理解出来ない様な顔をしていたが理解できると直ぐにライトを抱え、家に向かって走って行ってしまった。
「……。ちょ、リューお爺ちゃんの所に行くの。」
『コンコン』
アイは町長の家につき扉を叩く。
「はぁい。」
出てきたのは町長の妻、ベルタだ。
「えっとリューお爺ちゃんはいるの?」
段々とお爺ちゃんと呼ぶ事に慣れてきたアイ。
「リュー、ねぇ。今ちょっと出かけててね。どうかしたのかい?」
「それなら仕方ないの。明日の朝、旅に出ることにしたからその挨拶をしにきたの。あとは魔法学校にも行きたいから基本的に入学時はどれくらい魔法が使えるのか、とか聞きたかったの。」
「ん?旅?へ?あぁ分かったよ。伝えておくよ。魔法学校は…そういえばこの前リューが
入学したときは中級魔法までしか使えなかった
とか言ってたね。
でも魔法学校は十三歳から十五歳の子が多いけど、そこはどうするんだい?」
「そこはスキルで十三歳くらいまで大きくなるの。」
「……そうかい。なら十三歳くらいの子用の服を作っておくよ。ちょっと大きくなってもらえるかい?」
少し反応が遅かったがカレン達の様に放心したりしなかったためアイはそっと胸をなでおろした(もっともカレン達に話した内容とベルタに話した内容は衝撃の度合いが違うが)。
『《変身》』はい、なの。」
ベルタに家に招き入れられたアイは変身(その姿を覚えてしまえばキーワードに歳を加える必要もなく、後から細部を調整する必要もない)と早着替えを行いベルタに見せる。
「な、服もぶかぶかだし下着もぶかぶかじゃないか。これで学校に行く予定だったのかい?」
「後から作ろうと思ってたの。」
服も母のしかなかったのだから当然下着も母のしかなく、すべてぶかぶかなため、一瞬ベルタは言葉に詰まったが、きちんとアイに聞き、アイの言葉に心をなでおろした。
もし、これで平気だと思っていたのなら王都に送り出す事などできない。
「じゃあ明日までに頑張って作っておくよ。」
ベルタはそう言いながらアイを送り出す。
「次はミランダさ、お姉さんの所に行くの。」
それからアイは町、全ての家を訪ねて(いなかった所は木の板を置いていった)挨拶をしていき、それが終わった頃には五時くらいになっており(昼食は挨拶をしに行った時、町の人が持たせてくれた)、急いで家に帰ることにした。
年明け二日前であるため、カレン達の料理亭ももうそろそろ閉まる筈だ。
「ただいま、なの。」
「おかえり。アイちゃん。早速だけどこれ、着られるかい?」
そう言って机の上にあった物をカレンが持ってきた。
「仕事の合間に作ったんだ。特に年明け前はお昼以外はあまり客は来ないからね。」
カレンが広げたのは今のアイサイズのワンピースパジャマだ。
ピンク色のワンピースで首元にはリボンがついている。
「パジャマ、なの?」
「昨日、アイちゃん今の服のまま寝ただろう?だからもしかしてアイちゃんはその服以外持っていないんじゃないかと思ってね。年明けも一緒に祝えないのだし義母らしい事ができるのはこれくらいだろう?」
「ありがとうなの。来年からはきちんと年明け休みに帰ってくるの。」
「そうかい。それは嬉しいね。」
そんな会話をしながらアイはリビングに入り、パジャマに着替えた。
早着替えしなかったのはカレンが放心しない様にするためだ。
「ぴったりなの!」
「それはよかった。」
「そういえばグースお義父さんはどこなの?」
アイは周りを見回して言う。
「グースはキッチンでご馳走を作ってるよ。アイちゃんが旅に出てしまうのならってね。」
「そうなの?」
「そういえば昨日もご馳走みたいだったし今日もご馳走で明後日も年明けでご馳走だから明日一日空くにしても太ってしまうね。」
「へ、平気なの!カレンお義母さんはそれくらいで太ったりしないの!」
「あはは、ありがとうね。もうそろそろ夕食だから元の服に着替えたほうが良いよ。」
「分かったの!」
そう言われたアイは元の服に着替えた。
「お、もう帰ってきていたんだね。アイちゃん。ほら夕食だ。」
グースが濡れた布巾とお皿を一つ持ってきて言う。
お皿を置く前に濡れた布巾で机を拭き、お皿を置いた。
「あぁ、もう。私がやるよ。あんたより私の方が運ぶのはうまいしね。」
そう言ってカレンはキッチンに消えていく。
キッチンから出てくると両手にお盆を持ち、それぞれのお盆に五皿づつ、大皿を乗せていた。
「カレンお義母さん凄いの。」
「いつもやってるからね。」
カレンがそう言いながら机に料理を置いていくとたちまち机は料理で溢れかえる。
「アイちゃんも手を洗ってきな。キッチンのでいいよ。」
運ぶ前にカレンは手を洗ったのだろう。そう言うと席についた。
「分かったの。」
アイはキッチンで手を洗うと席につく。
「この世の恵みに感謝します。」
グースがそう言いアイとカレンもそれに続いた。
そのまま楽しく会話し、食べきれなかった分はミミがまた全て食べる。
「本当によくもまぁこんな小さな体でこんなに沢山の量が食べられるね。」
掌サイズのミミがバクバクと料理を食べていくのを見てカレンが言った。
ミミは【暴食 上級】というスキルがあり、食べたものを溜め、それを魔力に分解し、それを命精が自分の魔力に変え、それを外部魔力と別に溜める事ができるのだ。
その為物を食べても排泄する事は無いし、体に吸収される訳ではない為、毒も効かない。
外部魔力がなくなればこの中から補充され、【魔力聖気変換】によって聖気になる。
プーがなかなか出てこられないのはミミの外部魔力量が多いのと、いくら作っても溜め込む事ができる事もあるだろう。
「神々よこの世に恵みをもたらしてくださりありがとうございました。」
グースに続きアイ達も言い、食事を終えた。
「アイちゃんは明日どれくらいに出発するんだい?」
アイに質問したのはグースだ。
「六時くらいのつもりなの。」
アイがミミを抱き上げながら言うとグースは頭を振る。
「それは駄目だよ。」
「?なんでなの?」
「町の皆はまだその時間には起きてないだろう?アイちゃんがいつ出るか分からない!と言って待機しているかもしれないが出発は八時くらいがいいだろう。」
「そうだね。皆もアイちゃんに何かあげたいと思うしね。」
グースの言葉にカレンも同意した。
カレンにそう言われ、そういえば「挨拶の時に皆、何かを作る」と言っていた、と思い出したアイ。
理由が分かったアイは素直に頷き、カレンにもらったパジャマを持ってリビングから出ていく。
その後はお風呂に入り、もらったパジャマを着て今日は忘れずミミのブラシもかけてから寝た。
・・・
「…もう朝なの。そういえば今日はドリィ達に呼ばれなかったの。何かあったの?」
アイは神達に呼ばれなかった事を不思議に思っていたが、ミミがアイが起きた事に気が付き甘えてきたのですぐにその事も吹っ飛んだ。
「おはようなの。ミミ。」
「みゃー。にゃん?」
今のミミの言葉を訳すると「おはよう。ブラシは?」といった感じ。
「またブラシかけて欲しいの?」
「ニャン!」
「でもフウがまだ起きてないの。」
アイは五つの光を見ながら言った。
「にゅー。」
これは「それなら魔力をちょうだい。」だ。
「ん?さてはミミそれが狙いなの?」
「ニャ!?」
これは「バレた!?」といった感じ。
「それはもう何百年も一緒にいるの。分かるの。」
「にゃにゃにゃ。」
これは「長く一緒にいると考えている事まで伝わってしまって困るわ。」といった感じ。
この前のアイと同じ事を思っている。
『…アイ。おはよう。』
緑の光がフウの形になり、光が引くといつも通りのフウがいた。
『ふあ~。あぁ、よくねた。おはよう。アイ、フウ。』
次に黄の光がピピの形になり、欠伸をしたピピが現れる。
『ん、おはよう。アイ、ピピ、フウ。』
今度は青の光がスウの形になり、目をこするスウが現れた。
『んん~。おはよう。アイ、フウ、ピピ、スウ。また最後はヒナなのね。』
白の光がメイの形になり、伸びをしたメイが現れる。
『んむぅ。ふあ~。…眠いよぅー。あぁ、あたし、また最後だぁー。おはよぉー。アイ、メイ、ピピ、フウ、スウ。今日だよねぇ。出発ぅ。』
最後に赤の光がヒナの形になり、伸びをしながら欠伸をし、目をこすっているヒナが現れた。
『そうなの。でもまだ二時間程あるの。』
そうなのだ。
アイはいつも六時くらいに起きるためあと二時間程ある。
朝食はグースが作ると言っていたのでやることがない。
『身じたくを整えたらミミと遊んであげたらいいじゃない。』
『じゃあ、そうするの。』
アイはそう言うと早着替えによりいつもの服に着替え、フウに魔力を渡して櫛を出してもらい髪を梳かすとミミに話しかけた。
「この後は八時までミミと遊ぶ事にしたの。何がしたいの?」
「ニャン!」
「そうなの。お散歩がしたいの。」
お散歩といってもただのお散歩ではない、色々な手をつかって競争するのだ。
ミミにそう言われたアイはミミを抱き上げて外に出る。
きちんとこの前の木の板(ちょっと野暮用で…)を机に置いてからだが。
すぐに離れるので精霊が見える様にはしない。
『メイ達は審判をやってほしいの。ゴールはあの山の頂上にするの。』
アイは町の外の山を指差して言った。
丁度、町の入り口と真逆の位置にある。
勿論、魔獣対策に棘のある柵がある(こういう柵があれば余程町の中に食べたい物があるか餓死寸前、それに魔獣大群でない限り大体が避けていくのだ)のだがそれは飛び越えればいいだけの話。
『分かったわ!』
メイはそういうとアイにくっついた。
『じゃ、あたしはミミにつくねぇー。』
そう言ってヒナはミミにくっつく。
『…私はゴール地点。』
そう言ってフウは山の頂上に飛んで行った。
『じゃあ、わたしとスウは上から二人を見てるねー』
ピピはそう言うとスウを連れて上空に向けて飛んで行く。
これらの情報をメイ達は同じ従精である事を利用して共有し判断するのだ。
プーは仕事で外は見られないだろうから審判はしない。
「じゃあミミ、ルールを説明するの。スタートはここでゴールはあの山。転移と町を壊す事は禁止でそれ以外はどんな事をしてもいいの。審判はメイ達でミミにはヒナがついてるの。」
「ニャー。」
ミミは「分かった」と鳴きながらアイから飛び降りた。
「《にゃん》」
今のはキーワードで、訳すると《戦闘化》だ。
ミミがそう鳴くとミミは光に包まれ、光が引くと四つん這いでもアイと同じくらいの高さの大きな虎が立っていた。
人々がよく知る白虎の姿である。
模様のない真っ白な虎だ。
この様子を誰かが見ていれば疑問に思っただろう。
白虎はその毛の色から大体が雪山にいるのだから。
「ミミったらまだ【認識障害】かけてないの。」
「にゃ。」
今のを訳すと「あ。」だ。
「もう、《認識障害・最適化・レベル2》」
アイはミミに触れながら言う。
声を出して言ったのはミミにかけた事を知らせるためだ。
「これでいいの。それじゃあ、よーい、どん!」
アイがそう言うと同時にミミは時速二百キロ程の速さでで走り出した。
目の前に現れた建物は飛び越え、家が連なっていれば屋根の上を走る。
勿論、音をたてない様にだが。
家と家の間が大きければ空中に聖気によって足場を作り(聖気はスキルによって魔力が変換された物なので魔力を消す事以外は魔力と同じ様に使う事ができる)それを蹴る。
魔法が使える点アイより有利だろう。
また、魔獣であるため身体能力もアイより高い。
一方アイは開始と同時に地を蹴り、自分の身長の七倍ほどある家の屋根に登り屋根伝いに走って行った。
ミミとは違いまっすぐではなく少し曲がっている。
山にまっすぐ行くと山の近くであるために、他より棘が多めで更に高めな柵があるのだ。
また、山もここからまっすぐ行くより少し曲がって行った方が岩が少ない。
また、少し曲がって行った方がすぐに町から出られ、本気を出せるのだ。
魔法は使わないが。
アイの頭にはミミよりも正確な地図が入っているためそこはミミよりも有利だ。
また、ミミは時速二百キロで走っているためアイの行動に気がついていない。
因みにミミが時速二百キロ程で走っているためあまり目立たないがアイも時速百キロ程で走っている。
これは【義父の願い】と【獣神・ジュナミード】の加護があってできる事だ。
また、場所によって最適化で適した体になるのでそこも有利である。
ミミが柵に辿り着き聖気によって足場をつくって登ろうとしていた時、アイはすでに柵を越え、山に向かって地をえぐりながら走っていた。
もう町をでたので地面に気を使わなくしたのだ。
町の中では屋根を壊さないよう跳ねる様にし、また、飛び上がる時の振動を減らし、着地の際も足を曲げ、できるだけ振動を減らしていたが、外に出てからは体を前に倒し、振動を減らしたりもしない。
ミミは柵を越えると時速三百キロで走る。
町中ではアイとは違い、肉球などで衝撃を和らげられるためアイより速かったがやはりまだ速く走れるのだ。
ただ、山の中に入ると大きな岩がよく出てきてうまく走れない。
壊す事は出来るのだが何となくそれは駄目な気がするのだ。
だからこそ魔獣の身体能力をもって全てを飛び越える。
また、アイも山に入った。岩があまりないとはいえ、やはり倒木や岩はでてくる。
それをうまく飛び越えて走った。壊す事も出来なくはないのだが(パンチで壊す。【義父の願い】によって体の耐久力が上がっているので骨が砕けたりもしない)駄目な気がするのだ。
地面はえぐってもいいが物は壊してはいけない、それが二人の共通認識であった。
かなりいい勝負をして頂上に先に現れたのはミミだ。
アイはゴールを山にした故に魔獣がやってきて(町にいる時よりくるのはミミがいないし、他の人の魔力の匂いによって紛れたりもしないし、近づけば鼻の悪い魔獣も気がつくからだ)それを避けるあるいは気絶させなくてはいけなかったのもある。
アイはミミがゴールしてから五秒程遅れて到着した。
「負けちゃったの。メイ達も審判ありがとうなの。」
アイがやってくるとミミは小さくなりアイの頭に飛び乗る。
今日は頭の気分なのだ。
『《精霊感取》』
アイはミミを精霊が見える様にすると町をみた。
「もう七時半くらいなの。家に帰って朝ご飯を食べなきゃいけないの。」
「ミャーウ。」
これを訳すと「分かった。」になる。
ミミの了承を得たアイは今度はミミを頭に乗せて家に向かって走り始めた。
今度はミミがいるので高い所やくぼみは聖気で足場をつくってくれ、魔獣もあまりよってこない。
「ただいま、なの。」
あっと言う間に家の前に辿り着いたアイはそう言って中に入った。
「おかえり。アイちゃん。野暮用って何をしてきたんだい?」
机を拭きながらカレンが聞いてくる。
アイの帰りを待っていてくれたのだろう。
「ちょっとそこまでミミとお散歩してきたの。」
アイはそう答えると手を洗いにキッチンに向かった。
「やぁ、おかえり。アイちゃん。もう出来るからね座って待っていておくれ。」
するとキッチンで料理の仕上げをしていた(アイのただいまの声を聞いて始めた)グースがそう言ってくる。
「分かったの。」
アイは手を洗うとリビングに戻り、椅子に座った。
ミミには町をでてから魔力をあげるつもりだ。
しばらくするとキッチンからグースが二皿もってやってきてそれを見たカレンがキッチンに向かい四皿もってきた。
「あんたも出来上がったなら呼べばいいのにね。」
「妻に全部持たせて自分は何も持たないのはとても格好悪いだろう?」
カレンがアイとカレンの前に二皿ずつ置きながら言うと、席に座ったグースはそう答える。
「この世の恵みに感謝します。」
またグースが先にそう言い、アイ達もそれに続いてから食べ始めた。
「神々よこの世に恵みをもたらしてくださりありがとうございました。」
朝食が食べ終わるとカレンとグースはアイに待つ様に言い、キッチンに引っ込んでいく。
そして出てくるとグースは二つ、カレンは十個のお皿を持ってきた。
「時間停止収納の空間魔法も使えるかい?」
そう聞いてきたのはグースだ。
時間停止収納の空間魔法とはフウがいつも使っている魔法で、そこにはアイの色々な物が入っている。
ただの収納空間魔法もあるのだがそれは時間がたち、古くなったりしてしまう物もあるのであまり使わない。
「使えるの。」
「そうかい。アイちゃんの事だからきっと使えると思ってね。この後の旅用の料理を沢山作ったんだ。とは言っても作ったのはグースだけどね。…受け取ってくれるかい?」
そう言ったのはカレンだ。
勿論、アイは喜んで受け取り、フウに収納してもらった。
「ありがとうなの!ちゃんと旅路で食べるの!」
そうこうしているともう八時くらいになっていたので皆で町の出入り口に向かう。
出入り口に着くと町の人々がたくさん集まっていた。
「アイちゃん!これ、プレゼント!元気でね!ちゃんと帰ってくるんだよ!」
「アイちゃん!」
「アイちゃん!」
「アイちゃん!」
皆がそんな調子でプレゼントをどんどんと渡してくるものだから、アイはたちまちプレゼントの山となってしまう。
因みにその中に町長の妻、ベルタもいた。
『…フウ、これよろしくなの。』
そう言ってアイは魔力をフウに渡す。
きちんとした指示を出していないがきちんとフウには伝わり、アイの足元に薄緑色の陣が現れ、アイだけを残して収納された。
「アイちゃーん!」
そう叫んで走ってきたのは町長のリューゲルだ。
「リューお爺ちゃん。どうしたの?」
「ぜえぜえ。き、聞いておらんぞ!アイちゃんが旅に出るなんて!」
「え?」
アイは反射的に伝言を頼んだベルタを見た。
「あ、そういえば伝えるのを忘れてたね。」
ベルタはそんな事を言う。
「そうか!犯人はベルか!心臓が止まるかと思ったぞい。何やら皆が続々と入り口に集まっているから何事かと思って聞いてみたら、アイちゃんが旅に出る、だぞ!きちんと帰ってくるんじゃろ!?アイちゃん!」
町長はベルタに詰め寄り最後でアイの方をガバッと見た。
「え、えっと。きちんと帰ってくるつもりなの。」
町長のあまりの勢いにアイは三歩程下がってしまったが。
「そうか…。それならまだよい。元気で帰ってくるんじゃぞ。」
「元気でね!」
「元気でね!」
「元気でね!」
「じゃあ行ってくるの!」
皆にそうやって送り出されアイは走り出す。初めは皆を驚かせないため遅めだ。
アイが向かうのはこの町から王都への真逆の位置にある魔獣の森、通称【死の森】。
距離はおよそ四千キロ。
森から王都へはおよそ九千キロなので寝る時間や朝食、昼食、夕食の時間、それに走る速度を考えると王都に着くのは一週間程後だろうか。
入学試験が行われるのは三月だが、入学試験を受けるにはお金が必要で、冒険者になるにしても新規登録には試験が必要でそれが出来るのは王都か、年に何回か町にやってくる登録団だけなので早めに王都に行き、お金を貯める必要があるのだ。
アイの力を発揮してしまえばすぐに入試分のお金は集まるが、あまり目立ちたくはない。
精霊魔法が使えるとバレてしまうと宮廷魔導師に誘われ、誘われる前に当然調査もするのでそこで自分が忌み子とバレてしまうかもしれないのだ。
カレン達は普通、この町から王都へは魔獣の住処などを避けていくと三ヶ月程かかるのであまり不思議には思っていない。また、お金がかかる事は失念している。
その日はミミと交互に走り、やってきた魔獣は気絶させる、もしくは避け、半分程進み、ミミに聖気の結界を張ってもらいミミを枕にして寝た。
…長いですね。
野菜とか牛とか、魔獣などの魔力を必要としない(内部魔力も外部魔力も命精も持たない)物は地球と同じ名前にしようと思います。
名前が思いつかなかったとかじゃありませんよ!?
アイの大きくなった身長を145センチから150センチにしました!
次はアイの夢という事でアイの過去物語にしようと思います。
投稿は20日の予定です。