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忌み子〜魔獣を呼び寄せる少女〜  作者: もち猫
第二章 学園へ
15/18

獣人の国 ジュナード ④

遅くなりました。


夢を終わらせようとしたけど終わりませんでした。

夢、長すぎ。


もしかしたら次はニ、三週間UP出来ないかもしれません。

「あの…ありがとうございます。」


「そうだな。助かったよ。カルルさん、リナさん。」


「いいよ、いいよ。私達も魔力を貰ったんだし、御者をしてるのもカリィだし。」


「それって、リナが胸を張っていう事じゃないよね!?」


「それじゃあ、メアリーさん達は乗っちゃ行けないって事?」


「そうなの?お父さん。」


「い、いや、違うよ?そういう訳じゃないんだ…メアリーさん!ダイさん!それにアイちゃん!誤解ですよ!?本当にいいんですからね!!」


ボルク家族の会話にメアリー達が苦笑いするとカルルが気配でそれに気がついたのか必死に大きな声で弁解している。

そんな皆をみながらアイが今、屋根にいる精霊達と契約するべきか悩んでいるとアーニャが近寄ってきた。


「ねぇ、アイちゃん。お父さんはほっといて一緒に遊ばない?」


「遊ぶの?」


「うん。今まで、お母さん達しかいなくて移動中は結構退屈してたんだ。」


さっきのメイの言葉からして急いで契約しないと消えてしまうような精霊はいないのだろう。なら、別に今日の夜や明日の朝でもいいはずだ。それなら今、アーニャと遊んでもいいだろう。


「分かったの。何して遊ぶの?」


「うーーん。そうだ!トランプ、はどう?」


「トランプ、なの?」


「うん、そうだよ。ルールも結構簡単だからアイちゃんでもすぐに出来ると思うよ。」


アーニャはそういうと周りをキョロキョロと見回し、一つの箱に駆け寄ると何かを持って帰ってきた。


「これだよ。…お母さん!トランプ、やっていい?」


「ん?あぁ、いいよ。でも、それも一応商品だから無くさないようにね。」


「はーい。」


「あれ?アン?僕には聞かないの?」


「じゃあ、アイちゃんやろう?」


「ねぇ、無視しないで!?」


「えっと…。」


「あ、大丈夫だよ。お父さんは無視しても。」


「アンが、アンが反抗期に…。」


「ほら、メアリーさん程じゃないけど私の魔力あげるから、元気だしたら?」


「ありがとう…リナ。」



「これはミルスミートの魔道士さんが作ったやつで、木の板の大きさも厚さも後ろの柄も全部同じ様にできてるんだ。ほら。」


アーニャは父を無視するとそういって木の板の束の四分の一程をとって、さー、っと床に広げる。


「本当なの。」


「で、表はこんな風に数字と絵柄が書いてあるんだ。数字は一から十三まで、絵柄は炎、光、水、剣だよ。それ以外には二枚だけジョーカーっていう特別なやつがあるよ。数字も絵もどの国でも通じるからいい品だよね。ただ、一寸の狂いもなく同じ厚さ、大きさ、柄じゃないとできない遊びが多いからそれが出来る細かく魔法を操れる魔道士じゃないと作れないのが難点だけど。」


今まで本当に商人の家族なのだろうか、と思う程自由であったが、今のトランプに対しては、流石、商人の娘、という様な捉え方だ。


「それをどうやって遊ぶの?」


「うーーん。そうだねー。たくさん遊び方があるんだけど…。神経衰弱にしよっか。あれはルールが簡単だし。」


「し、神経衰弱、なの?衰弱しちゃうの?何かの魔法なの?」


「あ、大丈夫だよ。神経衰弱っていうのは記憶力をよく使うやつで、集中しすぎて疲れるね、つまり、神経が衰弱しちゃうね、って意味なだけで魔法とかじゃないから。」


アイが、あわあわ、としているとアーニャがアイを落ち着ける様にそう言う。


「そうなの…よかったの…。」


アーニャの言葉を聞いてアイは、ほっ、と胸を撫で下ろした。


「じゃあ、ルールを説明するね……………………………………………………………」



ーーーーーーーーー



「あ、アイちゃん。強い、よ。なんでそんなに記憶力いいの…。」


十回程勝負したが結果はアイの完勝であった。

…まぁ、アイには【天才頭脳】に知神の加護があるのだから当然の結果といえば当然の結果であるが。


「大丈夫なの?」


両手をついて落ち込むアーニャを心配してアイがそう言った。

心配するなら負けてあげなよ、と思うかもしれないがあいにくアイは嘘がつけないたちである。気がついたら正解の物を裏返していた。


「アン、アイちゃん、休憩するよ。」


そんな事をしているとリナがそう言って来る。


「あ、お母さん。もうそんな所に来たの?」


「うん。どうやって気がついているのか分からないけど空にもあの子来てるよ。」


「本当!?」


アーニャはそう言うと馬車から飛び降りた。


「アイも行くの!」


それに続いてアイも飛び降りる。


「あ、ごめんね、アイちゃん、置いてっちゃって。」


外に出るとアーニャが厚い布を右腕に巻いていた。


「何してるの?」


「えへへ、秘密。見てればわかるよ。」


アーニャはそう言うと布を巻き終わった右腕を横にあげてもう片方の手の指をくわえると指笛を吹く。


するとはるか上空を旋回していた青い鳥が下降して来てアーニャの右腕にとまった。


「わぁ!すごいの!」


「でしょ、でしょ。私の友達なんだ。ここ辺りから町の近くまで一緒にいるんだ。」


アーニャの右腕にとまる鳥はまるで青空の様な青である。大きさは縦三十センチくらいだろうか。目はクリクリとした黒目である。


「綺麗なの…。」


「だよね。この子はシニーっていうんだ。いつだったかな、私達、家族がこの辺りでお昼を食べてたらやってきて私のお昼を分けてあげたらこうやって来てくれる様になったんだ。」


「この子も魔獣さんなの?」


「ううん。違うよ。シニーは普通の鳥だよ。」


「?よくわからないの。」


「えっとね。魔獣っていうのはね、私達みたいに魔力を持ってて使おうと思えば魔法も使えるの。それに、命精もいるね。でも普通の獣…シニーは鳥だね、は魔力を持っていないから魔法を使えないの。それに命精もいないよ。」


「そうなの。多分、分かったの。」


「じゃあ、お昼食べに行こっか。」


「分かったの。」


アーニャがそう言うと青い鳥…シニーは自分から飛んで行き、リナがお昼の準備をしている辺りの地面に着地した。

アーニャは、もうこれはいらない、とばかりに馬車の中に布を投げ入れるとアイと共にシニーの後を追い、メアリー達の所に向かう。

着くとリナには、好きな所に座れ、と言われたので円を描く様に、ダイ、メアリー、アイ、(シニー)、アーニャ、カルル、と座った。リナはカルルの隣に座る予定である。


「あれ?今日はお肉があるんだ。」


リナがお昼を配るとアーニャがそう呟いた。


「うん、そうだよ。今日は珍しく肉が食べられる魔獣が来たんだよ。それをダイさんが退治してくれたからね。」


「へー、ありがとう。ダイさん。」


「お世話になってるからな。」


「それじゃあご飯を食べようか。」


「「「「「「この世の恵みに感謝します。」」」」」」


「それにしてもダイさん見事な剣術でしたね。やっぱりルラミカーニャの出身なんですか?髪も栗色ですし。言葉も標準語とはいえルラミカーニャ語ですし。」


「まぁ、一応ルラミカーニャの騎士の端くれだった事もあったな。」


騎士の端くれどころではなくダイは元々ルラミカーニャの宮廷騎士である。


「そうなんですか。あれで端くれなんですね。その騎士の最高位の人達を集めた宮廷騎士団の人達はどれほど強いのでしょうか。流石、ルラミカーニャ、ですね。」


「まぁ、ルラミカーニャは騎士の国だしな。」


「あ、そういえばメアリーさん、ダイさん。さっき匂いについて教えて欲しいって言ってましたけど私達よりアンの方が匂いについては知ってるから私達よりアンに聞いた方が有益な情報が得られるかもしれませんよ。」


リナが思い出した様にメアリーとダイに話しかけた。


「ん?お母さん何か言った?」


リナが、アン、と呼ぶとシニーにパンをあげていたアーニャがそれに反応して顔をあげる。


「メアリーさんとダイさんが匂いについて知りたいらしいよ。私達はアンみたいに細かく嗅ぎ分けられなくてただ魔力からするって事しか知らなかったから…アン、教えてあげたら?」


「そうなんですか?」


「ええ、そうなのよ。アーニャちゃん、教えてくれるかしら?」


「いいですよ。匂いはですね…なんと言ったらいいのでしょうか、多分魔力の質によって匂いが違うのだと思います。一つの魔法にあまり魔力を使わない人の方がいい匂いがするんです。逆に匂いがしない人…お父さんとかそういう人は同じ魔法を使うのに沢山魔力を使ってます。多分魔獣はこういう人から嫌な匂い…美味しくなさそうな匂いを嗅ぎ取っているのだと思います。私達はお父さんがいるお陰であまり魔獣に襲われませんし。」


「そう…。」


「それは、魔力が完全に漏れていない…例えばアダマンタイト覆われていたりしてもするのか?」


「アダマンタイトですか?やってみた事はないですけどすると思いますよ。魔法で作られた炎などからもしますし。物になった魔力は漏れないのでしょう?ただ私には非常に弱くしか香りませんが。魔獣ならば普通に嗅げるかもしれませんね。」


「そうか、ありがとう。」


「アーニャちゃん、ありがとうね。」


「いえ、別にいいですよ。」


アーニャが話し終わってシニーに再びパンをあげながらお昼ご飯を食べ始めるとメアリーとダイは目を合わせて頷くとお昼ご飯を食べ始めた。


『あぁ、だからアイは魔獣達に狙われるのね。』


トランプをしている時以外ずっと静かにしていたメイがそう呟く。


『どういう意味なの?』


『アイには【魔力増幅化】っていうスキルがあるのよ。これがね基本鑑定ボードだと、内部魔力、外部魔力ともに百倍にする、ってなってるんだけど更に詳しく見ると、魔力を活性化させて百倍にする。活性化させる為、高位魔力に変化する、ってなってるのよ。』


『なるほどぉ。この子がいうのが本当なら高位魔力っていうのは多分かなり上質な魔力でとてもいい匂いを放ってる、ってことかぁ。』


『そういうことよ。』


『どうにか対処できないの?メイ。』


『……このまま追われ続けるのは大変そう。』


『だよね!フウのいうとおりだよ!できることならアイにはもっとたのしくいきてもらいたいもんね。』


『それが、私には何も出来ないのよ…。不甲斐ないわ。』


スウ達三人の言葉にメイはゆるゆると首を振り無念そうに肩を落とした。


『アイは大丈夫なの。だから、メイ、元気だして、なの。』


『そうだよ。私達だって何にも出来ないんだから。』


『メイ、げんきだして!』


『メイの所為じゃないよぉ?』


『……皆の言う通り。』


『ありがとう。アイ、スウ、ピピ、ヒナ、フウ。』


『そういえばメイはなんでアイの事が分かるの?それにスキルって何なの?』


本当に今更だがメイにアイはそう問いかける。

今まで気になっても聞く機会がなかったのだ。


『あれ?アイにはメイ、はなしてなかったっけ?』


『私達、命精はね、自分がいる生き物の事を【子】って呼ぶの。で、命精は自分の子の事なら何でも分かるのよ。』


『スキルは何て言うのかな、アイの力?みたいな感じかな?アイがやってる精霊との契約も気配察知も全部スキルだよ。』


『そうなの?精神力とか基本鑑定ボードとか何なの?』


『…精神力は、スキルを使う時に大体使う力の様なもの。』


『そう、そのまま。せいしんのちからってかんじだよ。』


『基本鑑定ボードはね、命精が自分の子の情報を教える時に作り出す物で、名前、称号があれば称号、年齢、生日、種族、性別、魔力、能力を魔法を使った人から言葉の情報を引き出して提出するの。』


『出してみてあげたら?』


『そうね。アイ、魔力勝手にとっちゃうわね。』


『お願いなの。ありがとうなの。ただ、周りの皆に見えない様にして欲しいの。』


『分かってるわ。』


メイがそう言うとアイの目の前に純白の陣が現れその中から灰色の文字が書かれた半透明なボードが出てきた。


因みに文字はメアリーが絵本を一冊だけ持ってきていてくれ、この前寝る前に読んでくれたのでルラミカーニャの文字ならば読む事ができる。と言ってもルラミカーニャの言語は全国共通語らしいので物凄い田舎に行かない限りそれほど困る事はないだろう。

ただ、たった一回読んでもらっただけで文字が覚えられた様にアイには【天才頭脳】と知神の加護がある。田舎に行ってもちょっと村を歩けば大丈夫だろうが。


出てきた物はこうだ。




名前

アイ・クリスティン


称号

むむむ、ここは教えないわよ!


年齢

三日

(以下略、大体は【獣人の国 ジェナード ②】後書き、スキルの内容は【家】の後半部 をみてください。不親切ですみません。)



『へぇー。凄いの!でも、この称号って何なの?』


『そ、それは、そう!秘密よ!ヒ、ミ、ツ。それに、アイが他人からどう言われてようとアイなのは変わらないでしょ!だから称号なんて気にしなくていいのよ!』


『そ、そういうものなの?』


『そうよ!ほら、お昼ご飯食べなさい!冷めちゃうわよ!』


『わ、分かったの。』


何となく言ったアイの質問に何だか必死に言い訳?をするメイにアイは流されてまたお昼ご飯を食べ始めた。


『そうそう、沢山食べないと成長しないからね。』


『メイ…食べる量は変わってないよ。』


『メイ、あせりすぎだよ。』


『アイが嘘が下手なのはメイに似たのかなぁ。』


『…確かに、似てる。』


『もう!スウ、ピピ、ヒナ、フウ!うるさーーい!』


『メイは怒りっぽいね。』


『わたし、にげるー。』


『あたしもぉ。』


『…逃走する。』


『待なさーーい!』




ーーーーーーーーーーー






「お母さん!今日も幌の上に乗っていいでしょ!あ、あとアイちゃんも一緒に乗りたいな。」


お昼ご飯が食べ終わり馬を休ませる為にもしばらく休みを取り(この間は皆で神経衰弱をしていた。もちろんアイの完勝である。)再び馬車に乗り込み出発しようという頃アーニャがリナにそう聞いた。


「いいよ。アイちゃんも体重は軽そうだし、シニーを馬車の中に入れるのも可哀想だしかと言って一人ずっと外にいてもらうのも可哀想だし、アイちゃんを大人の中に一人残すのも可哀想だしね。」


「ありがとう!お母さん。…じゃあアイちゃん行こう?多分アイちゃん一人じゃ行けないから私がアイちゃんを抱っこして跳ぶね。」


屋根(幌)の上にどうやって行くのかと思ったらどうやら狼の獣人の特性をいかして跳んで行く様だ。


「ありがとうなの!」


多分アイにも出来るだろうがわざわざ断る必要もないし、言えばどいてくれるだろうが屋根(幌)の上には精霊達が群がっていてよく見えない。


「シニーはいつもの場所にとまってね。」


アーニャがそういうとシニーが飛び立ち精霊達の中に消えていった。

きっと屋根の何処かにとまったのだろう。


「じゃあ、行くよ。」


アーニャはそういうとアイを抱き抱え、高く跳んだ。


屋根に着地するとアーニャは抱き抱えていたアイを屋根に降ろす。


「はい、とうちゃーく。アイちゃん幌…屋根の上だよ。」


アーニャが着地すると他の精霊とお喋りをしていた精霊達が、サー、っと引いていき(精霊なのでアーニャとぶつかる事はないが気分だ。)そこにアイがいる事が分かると物欲しそうな目でこちらを見つめた。

声をあげないのはメイに怒られない為だろう。


『ごめんねなの。もう少しだけ待ってほしいの。多分今日の夜くらいには契約出来ると思うの。』


アイがそう謝ると精霊達は、仕方ない、という様に後ろの方でまたお喋りを再開した。


『アイ、私達も話してくるね。』


『メイにとらんぷつくってもらってさっきアイがやってたのやるんだ。』


『…神経衰弱。』


『きちんと見えない様にするから心配しなくていいわよ。』


『あたし、絶対勝つぅ。』


『分かったの。いってらっしゃいなの。』


「ん?アイちゃんどうかした?」


きっと無意識に精霊達を見ていたのだろう。それは精霊が見えないアーニャには何もない屋根を見つめているだけである。


「ううん、何でもないの。うわぁ、高い所から見る景色って綺麗なの。」


アイはアーニャが嫉妬をする様な人には思えなかったがアーニャには精霊の事は話さずに精霊達が引いた事により見える様になった景色に目を向けた。メアリーと約束したのだ、そう簡単に破ってはいけない。


「だよね。アイちゃん、あっちに座ろう?シニーの隣。」


アーニャの指す方を見るとシニーがこちらを見ていた。


「分かったの。」


「アンー!出発するから座ってねー!」


アイ達が座った時、丁度リナの声が下から聞こえてきた。


「もう、座ってるから出発していーよー。」


アーニャがそう答えるとガタゴトと馬車が動き始める。


「ここ、私のお気に入りの場所なんだー。風が気持ちいいしお日様も気持ちいいし景色もいいし。」


「本当なの。」


「そうだ。何かお話してあげようか?」


「お話なの?」


「そう。アイちゃんはどんなお話知ってるの?」


「【魔法使いの猫】っていうお話しか知らないの。」


「ん?それしか知らないの?じゃあ、【建国物語】とかにする?」


「ありがとうなの!」


「キュー」


「ん?シニーも聞きたいの?じゃあいくよ?


昔昔のお話です。


この頃世界はもっと多くの国が存在して毎日啀み合っていました。


同じ種族であっても戦争は絶えず、また同じ髪色…同じ人種であっても戦争は絶えませんでした。


団結力があり仲間思いの犬や狼の獣人でさえも同じ人種で啀み合い、殺し合っていた。

普段他の種族と無干渉であり続けるエルフでさえも内部で戦い、外部でも戦っていた。

そんな時代です。



繰り返される戦争に大地は荒れ、食べ物もなくなり人々から笑顔が消えました。


中でも二つの大陸の間にある今のルラミカーニャである栗髪族の多く住まう土地は特に酷くそこでは毎日の様に戦争が起きていました。


小さな子供までが戦争に駆り出され、命を落としました。


そして更に人々から笑顔は消え、ただただ意味のない領地広げの戦争は増え続けました。


ところがある日、今のルラミカーニャである場所に天から一本の光が降り注ぎました。


雷ではありません。

幻覚でもありません。


光が消えるとそこには六人の男女がおりました。


その中の一人の女が前にでて言いました。


ーー無駄な争いはやめなさい。私はこんな事をして欲しくて貴方達をつくった訳ではないわ。


その者はまるで猫の獣人の様な者でした。


しかし、そのきらめく尾っぽは、その澄んだ瞳は決して獣人の物ではありません。


そう、獣神・ジュナミード様です。



もう一人、男が前にでて言いました。


ーー今から天罰を下す。


その者は人の赤髪族の様に真赤な髪をした男でした。


しかし、その黒々とした瞳はまるで全てを見透かす様に凛としていて、ひとたびその手を振り上げれば青白い光が人々に降り注ぎ腹を空かせた者は腹が満たされ傷を負った者の傷は癒え戦う指示をしていた者は傷を負った訳でもないのに酷い痛みに襲われました。


そう、魔神・ドラリューズ様です。



もう二人、老男と女が前にでて言いました。


ーーーこの荒れた大地も戻さなくてはならないな。


ーーーここはかなり荒れているから力を合わせてやろう?


老男は白い髪と髭が同化して顔の周りを覆われている者でした。


女は青々とした髪を持つ者でした。


しかし、その瞳はその髪はまるで宝石の様にきらめき、二人が地面に触れれば荒れた大地は綺麗に戻り、人による魔法の多用により疲れた精霊達は活気付き、精霊達に直せなかった物も直りました。


そう、鍛治神・カキニード様と精神・ニャーシテール様です。



もう一人、女が動かず言いました。


ーーーならば、私はこの世界にいらぬ物を壊してこよう。


その者は鎧を身につけた、まるで女騎士の様な女でした。


しかし、その瞳はその髪はその鎧はキラキラときらめき、一瞬姿がブレたと思えば最強の兵器と言われたものが、尋問する為に作られた物が壊されました。


そう、武神・パミオン様です。



もう一人、男が一人の青年に歩み寄り言いました。


ーーー君は誠実な青年らしい。どうだろう、この後君が栗髪族をまとめてくれないかい?


その者はクリーム色の髪をした男でした。


しかし、その瞳は優しさに溢れローブを着たその姿はとても知的でその気配は決して人の物ではありませんでした。


そう、知神・ミルスウェル様です。


そして知神様に話しかけられたこの青年は後に初代ルラミカーニャ王になる者でした。



魔神様が言いました。


ーーーじゃあ、皆、他の土地にも天罰を下しに行こう。ここほどではないから一人でも大丈夫だろう。


魔神様は魔法に長ける緑髪族が多く住まう土地へ。獣神様は獣人が多く住まう土地へ。精神様は【精霊樹】のあるエルフが住まう島へ。知神様は頭の良い銀髪族が多く住まう土地へ。武神様は武に長ける黒髪族が多く住まう土地へ。鍛治神様は鍛治に長ける赤髪族が多く住まう土地へ。


神々はそれぞれの場所でそれぞれのやり方で争いを止めました。



栗髪族が多く住まう土地は、ルラミカーニャ、となり争いを止めてくれた全ての神を敬い、

緑髪族が多く住まう土地は、シュワリューズ、となり争いを止めてくれた魔神様を敬い、

獣人が多く住まう土地は、ジュナード、となり争いを止めてくれた獣神様を敬い、

エルフが住まう島は、エルテール、となり争いを止めてくれた精神様を敬い【精霊樹】を守る様になり、

銀髪族が多く住まう土地は、ミルスミート、となり争いを止めてくれた知神様を敬い、

黒髪族が多く住まう土地は、サミオ、となり争いを止めてくれた武神様を敬い、

赤髪族が多く住まう土地は、ニードメイズ、となり争いを止めてくれた鍛治神様を敬う様になりました。


そして、その国々はもうこんな事が起きない様にと協力し合う様になり、大陸と大陸の間にある事、全ての神を敬っている事、からルラミカーニャの言語、通貨が全国共通で使える様になりました。


それからは争いは起こらず平和な時が続きました。


そして今に至ります。


っていうお話だよ。」


「その、【精霊樹】って何なの?」


「【精霊樹】はね、私達はエルフさんが守ってるからなかなか見る事は出来ないんだけど精霊が生まれてくる木なんだって。なんでもそれが空気中の魔力が集めてるからその近くの場所の空気中の魔力が上がって果物とかにまで染み込んでるらしいよ。」


「そうなの?」


「そうだよ。物凄く綺麗なんだって。」


「キュー!」


シニーがアーニャの言葉をまるで肯定するかの様に鳴いた。


「ん?シニーは見た事あるの?精霊樹。」


「キュー。」


シニーが再び肯定するかの様に鳴く。


「へー。まぁ、鳥だし簡単に入れるのかな?」


「アーニャお姉ちゃんはシニーと話せるの?」


「ううん。なんとなくわかるっていうか。アイちゃんも分からない?」


「うーん、なんとなく分かる様な分からない様な、なの。」


「私もそんな感じだから大丈夫だよ。」




ーーーーーーー




「今日はこの辺で野宿する事にしたからアン、アイちゃん、それにシニー!降りてきて!」


あれからアイ達はたわいもない話をして過ごしていた。

リナに呼ばれたのは日が赤くなり始めた頃だ。


「あ、分かった!お母さん!…じゃあ、アイちゃん。また抱っこするね?」


「分かったの。」


アイから了解を得たアーニャはアイを抱くと屋根(幌)から跳び降りた。

シニーもそれに続いて地面に飛び降りる。


アーニャがアイを降ろすとメアリー達が近づいてきた。


「ねぇ、アイ。ちょっと話があるの。」


「話、なの?何なの?」


「それは、ちょっと待ってね。…あの、すみません。リナさん、カルルさん。ちょっと家族三人で散歩をしてきてもいいですか?」


「散歩?別にいいですけど一応暗くなる前に帰ってきて下さいね。」


メアリーの問いに真っ先に答えたのはリナである。


「ダイさんがいるから大抵の魔獣は平気でしょうけど魔獣や獣にも来をつけて下さいね。」


カルルが魔獣や獣への注意を促した。


「はい、ではちょっと行って来ます。」


『精霊さん!皆一緒に来て欲しいの。』


どうやらメアリー達とだけになれるらしい、と知ったアイはこの機会に精霊達との契約をしようとそう呼びかける。


「じゃあ、行きましょう?」


「あぁ。」


「分かったの。」



ーーーーー



「この辺でいいかしら。」


メアリーがそう言ったのはもう完全に街道は見えず周りの木々しか見えなくなった頃だ。


「そうだな。この辺なら街道からも離れてるし人里からも離れてる。」


「あ、話をする前にちょっと契約をしてもいいの?」


「契約?あぁ、いいわよ。」



「ありがとうなの。」


アイはそう言うとフウに契約帳をだしてもらい契約を始める。


「《我、汝を従精とする。………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ならばこの契約書に印を示せ。》』


途中でヒナから、無詠唱でスキルは使えないのか、と言われやってみた所出来たため最後の方は無詠唱でやっていた。


「………?なんか命精さんが四人いた気がするの。」


命精は、リナ、カルル、アーニャの三人の命精しかいない筈である。


「気のせいなの?」


「えっと…契約は終わったのか?」


「あ、終わったの。ありがとうなの。それで話って何なの?」


「あのね、今日のお昼にアーニャちゃんに匂いについて聞いたでしょう?」


「うん、聞いたの。」


「それで俺とメアで話し合ったんだ。」


「話し合ったの?」


「あぁ。

アイの美味しそうな匂いを完全に消すには魔力を消すしかない。」


「でも、そんな事をしたらアイが死んでしまうわ。それなら…」


「「身代わりを置けばいいんじゃないかって(ね)(な)。」」


「身代わり、なの?」


「そう。この前アイが魔力の塊を放つ事で魔獣大群をそっちに向けたでしょう?それと同じ様な事よ。今回の場合は距離が出来るから出来るだけ大きい方がいいのだけど。」


「分かったの。」


アイはそう言うと空気中の魔力を自分の魔力に【魔力高速変換】に変え吸収しながら出し、物凄い大きさの魔力の塊を作り出した。それはどんどんと大きくなっていく。

一度吸収しているのは魔力を固めるには一度吸収しなければならないからだ。


「ちょ、ちょっと待て、もうそれくらいでいいぞ。アイ。」


「ねぇ、アイ。本当に無理してない?」


想像以上の量にメアリーとダイが焦っている。


「これでいいの?大丈夫なの。アイは無理してないの。お母さん。アイには【魔力高速変換】っていうスキルがあるから平気なの。」


「それより早く遠くへ行かないと魔獣達がやってくるぞ。」


「ええ、そうね。もしかしたら鼻のいいアーニャちゃんも気がついているかもしれないから回り込んで反対側から帰りましょう。」


「あぁ。」



ーーーーーーー



「あ、お帰りなさい。メアリーさん、ダイさん、アイちゃん。」


「ただいまなの!」


「そう!メアリーさん、ダイさん、アイちゃん。今、あっちからとっっっってもいい匂いがするんですけど何か知りませんか?」


アーニャは森の方を指差して言った。


「ごめんなさい。知らないわ。」


「俺も分からないな。」


「し、知らないの。」


嘘が下手なアイ。メアリー達が隠している事をしりアイも隠したがどもってしまった。


「…そうですか。やっぱり森ですし高位の魔獣でも来たんでしょうか。」


幸いアーニャはそんなアイに気がつかなかったようだ。


「そうかもしれないわね。」


「むぅ、仕方ないです。我慢します。…あ、そうそう。もうそろそろ夜ご飯が出来上がりますから待っていて下さい。」



ーーーーーーー



「メアリーさん達はテントって持ってますか?」


リナがそう聞いてきたのは夜ご飯を食べ終えてとうとう寝ようという時だ。


町の外に出るものはテントを持っているのが普通なのだが、アイ達はそんな物が入るものは持っていない。

アイは何も持たず、メアリーは水筒だけを持ち、ダイは水筒と剣だけだ。


「えっと…。」


この言葉はメアリー達を最大のピンチに追いやった。

テントは持っているには持っている。しなし、それは空精魔法で収納してあるのだ。

しかし精霊魔法を使える事はメアリーの大きな特徴であり、また、アイやメアリーが精霊魔法を使える事を知ればルラミカーニャ宮廷魔導師メアリーに辿り着かなかったとしても調査されればアイの事がバレる可能性もある。

テントは持っていない。という手もあるがそれは変である。また、今日、地面の上で寝る事になってしまう。


ーーどうしましょう。


ーーもうこれは、メアがオリジナル魔法でテントが作れる、っていう事にするしかないんじゃないか?


ーーでもそれって目立たないかしら。


ーー精霊魔法が使えると分かるよりはマシだろ。オリジナル魔法は作ろうと思えば誰でも作れるし。


ーーそれも、そうね。


「あの、どうかしましたか?」


メアリーとダイが地面に文字を書いて話し合っているとリナがそう聞いてきた。


「いえ、なんでもありません。…テントはこの辺でいいでしょうか。」


メアリーがリナ達のテントの隣辺りを指差して言う。話し合いの文字はすでに消してある。


「あ、はい。」


『フウ、ここにテント、出して欲しいの。魔力なの。』


さっきのメアリー達の話し合い(文字)を見ていたアイが空気を読んでフウにお願いした。


『…はい。』


『ありがとうなの。』


「わぁ!お母さん!テントが出てきたよ!」


「凄いですね。空精魔法ですか?」


カルルがそう聞いてくる。


「いえ、私のオリジナル魔法ですよ。」


「そうなんですか?凄いですね。魔力も全然漏れていないみたいですし。」


アーニャが鼻をヒクヒクさせながら言った。魔力の匂いを嗅いでいるのだろう。


「ありがとう。」


「いえ、本当の事ですし。あ、夜は気にせず眠ってもらっていいですよ。シニーが守ってくれますから。」


「そうなの?シニー、凄いの!」


「キュー!」


シニーが胸を張るように鳴いた。


「それではおやすみなさい。」


「おやすみなさい。」


「おやすみなさい。アイちゃん、また明日も遊ぼうね。」


「ええ。」


「今日はありがとうな。」


「また明日なの!」



精霊についてです。(命精以外)


精霊は生き物の、それも生き物が外にだした魔力しか吸収出来ません。

そして魔力がなくなれば消えます。

精霊はそこにいると精霊が何もしなくても勝手に環境を良くさせる効果があります。

逆にいないと荒れます。

精霊は人が普通に魔法でだした水精だったら水などの魔力を吸い取り外の空気中の魔力にして普通の水にします。

戦争で疲れたのは仕事のしすぎです。

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