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忌み子〜魔獣を呼び寄せる少女〜  作者: もち猫
第二章 学園へ
10/18

森の主

でも、書き溜めが…


ま、頑張っていきたいと思います!

 「…また、あの夢が始まったの。また明日も見るの?忘れたいけど忘れたくない思い出、これを見るたびにいつも思うの。アイが、あの時宮廷魔導師長に近づかなければ…。」


母や父、色々な人の命精を従精にしたからかその時分かるはずのない事まで分かるこの夢は見るたびにアイに後悔をもたらす。

しかし、母と父と義父と暮らしたあの百年間は忘れたくない。大切な思い出だ。


「みゃ!」


大きくなって(戦闘化して)枕になってくれていたミミが注意する様に鳴く。

アイに暗い顔はして欲しくないのだ。


「そうなの。もう後悔はしないんだったの。」


「にゃぁ。」


「…今日、走ったら多分【死の森】につくと思うの。」


「にゃー。」


『ん、おはよう。アイ、ミミ。』


今日は最初に目をこすったスウが起きてくる。

ミミにも言ったのは旅路ではアイは寝ている間もずっとミミに【精霊感取】をかけているのを知っているからだ。


『んー。おはよう。アイ、ミミ、スウ。』


次に伸びをしたメイが起きてきた。


『…おはよう。アイ、ミミ、スウ、メイ。』


三番目はいつも通りのフウだ。


『ふわぁ。おはよう。アイ、ミミ、スウ、メイ、フウ。』


次に欠伸をしたピピが起きてくる。

また、最後はヒナらしい。


『んんー、ふわぁ。また、あたし最後だぁー。たまには四番目でいいから最後以外に起きたいなぁ。おはよぉ。皆。』


「最後って言っても四番目の人とは数秒しか違わないの、頑張れば起きれるの。」


声に出したのは周りには人もいないし、ミミだけ仲間はずれは可哀想だからだ。


『そうかなぁ?まぁ頑張ってみるよぉ。』


そんな会話をした後は、メイに言われ自分の髪を梳かし、ミミにねだられミミにブラシをかけると再び走り出した。

ミミは既に小さくなりアイの肩に乗っている。


「…にゃ。」


走っていると肩の上でごろごろしていたミミが立ち上がり注意を促す様に鳴いた。

【死の森】に近づいているのだ、魔獣がでてくるのは当然だ。

だが、超高位魔獣であるミミがこれ程までに緊張する魔獣とは何者なのだろうか。

アイはそう考えると即座に止まり、【気配察知】をする。

近づいてくる者の正体が分かった瞬間アイは目を見開いた。

ドラゴン、だ。


『バサン、バサン、ドーン』


ドラゴンはそんな音をたてて着陸すると、


「ほほう。匂いの真逆のコンビ、か。面白いコンビだ。試させてもらうぞ!」


と言い、アイ達が答える間も開けず口から炎を放ってくる。

勿論、魔法だ。

これはブレスと呼ばれる魔法の一種でファイヤーブレスと呼ばれる。

ブレスはドラゴンしか使えない。

似たような事は出来るのだが、ドラゴンがだすブレス程の破壊力は持たないし、そもそも結界を張るにしても口がもたない。

それはドラゴンにそういう種族固有スキルがあるのではないかと言われている。

火属性に特化したレッドドラゴンはファイヤーブレスを水属性に特化したブルードラゴンはウォーターブレス、雷魔法に特化したイエロードラゴンはサンダーブレス、熱魔法の冷却魔法に特化したホワイトドラゴンはフリーズブレス、熱魔法の加熱魔法に特化したオレンジドラゴンはバーンブレス、全てに特化したブラックドラゴンは上記の全てのブレスを放てる。

上記のドラゴン達は名前通りの色をしており、今目の前にいるのは黒。つまり、全能のブラックドラゴンだ。

とにかく、ブラックドラゴンがファイヤーブレスが放ってきた。

だが、それはミミが本気を出して作り出した魔力を消す聖気の結界により防がれる。


「シャー!」


問答無用で攻撃を仕掛けてきたブラックドラゴンにミミは全身の毛を逆立てて威嚇するがブラックドラゴンはそんな事を気にせずに


「ほほう。それならばこれはどうじゃ!」


と言って大きな尾をふるう。


「ここは…近くに町はないの。ならちょっとだけ魔法を使わせてもらうの。」


アイはそれを飛び上がる事で避けながらそう呟く。

ミミは着地した時にあるだろう追撃を受けない為にアイの足元に聖気による足場をつくった。


「反撃させてもらうの。」


アイは追撃をしようとして尾をふり、空振りしているブラックドラゴンにそう言うとヒナ、スウ、ピピ、フウに頼み、まずブラックドラゴンに風の刃と炎の刃、水の刃、雷の刃を襲い掛からせる。

だが、そのくらいでブラックドラゴンの鱗に傷はつかない。

しかし、それは想定済みだ。

ブラックドラゴンの気がそちらに向いている間にアイは【魔力手】を作るのと同じ要領で【魔力大剣】を作りそれを大きく振り上げると思いっきりブラックドラゴンの脳天に振り下ろす。

勿論これくらいでドラゴンの鱗に傷はつけられないが、アイのとんでもない力で思いっきり頭を殴られたブラックドラゴンは少しふらついた。

あくまで少しだがこれでブラックドラゴンはアイ達を認めたらしい。

ドラゴンからの攻撃は止んだ。

もともとアイはブラックドラゴンに殺気がない事は【気配察知】により分かっていたので認めさせるだけの力を示してみたのだ。

ドラゴンの攻撃がやんだのでミミは足場を消し、アイはそこから飛び降りる。


「むむむ、負けを認めるぞい。そなた等はそれでも本気を出していないのじゃろう?保有魔力や子猫が大きくならない事から分かるわい。そなた等が本気を出せば、いや人間の方一人でも本気を出せば儂を倒せるのではないか?あぁ、恐ろしいのう。」


ブラックドラゴンはそう戯けた様に言う。


「買い被り過ぎなの。そもそもアイとドラゴンさんが本気を出して戦ったら他の魔獣がわんさか来ちゃうの。」


「それもそうじゃな。高位魔力を持つ者同士、悩みは同じか。全くあやつ等も火などに変わった魔力は食べれんのだから来なければいいものを。ただ、そなたが作ったその大剣はあやつ等の大好きな餌じゃがな。」


「えへへ、アイの得意魔法が無属性魔法なものだから、つい出しちゃったの。ドラゴンさんも魔獣だから魔力は食べるの?それなら、これはドラゴンさんにあげるの。」


アイはそう言うと持っていた大剣をドラゴンの口に向けて投げた。

ドラゴンはそれを手でとめ、それから口に入れしばらくむしゃむしゃとすると再び口を開く。


「高位魔力を食べるのは三百年ぶりじゃわい。母を思い出すのう。

じゃが、大剣をあんな風に投げたらあのまま口には入れられんわい。さてはあのまま儂の口を串刺しにするつもりじゃったな?」


どうやら縦に投げた事を批難している様だ。


「身長差的にああやって投げるしかなかったの。」


ドラゴンは二階建ての家程の大きさで、アイの十四倍程の高さ。

優しく口に入れろと言う方が無茶である。


「…まぁ、そうじゃろうな。

話は変わるが何故そなた等の様な者達が何故この様な場所にいる?何故自分の統括する地にいない。このまま行けば儂の森に入るぞい。まさか、占領する気じゃあるまいな。」


ブラックドラゴンは急に真剣な顔をして言った。


「アイ達に統括する場所はないの。ドラゴンさんが思っている通りアイ達が向かっているのはこの先の【死の森】なの。ただ、ドラゴンさんが統括してるとは知らなかったけど、なの。でも、占領しようとかじゃないの。森の中にアイの魔力を置いてアイの身代わりにしようと思ったの。」


「ほほう。身代わり、か。よく考えたものじゃ。確かにそなた等だけでは見た目、強くなさそうじゃし統括する地もないのなら儂の様に契約するのは難しいじゃろうな。ただ今は儂がいるのじゃ。儂がこの近くの森なら契約させてやろう。」


「契約、なの?」


「そんな事も知らんのか。いや、人間の身に生まれたのじゃ、無理もないか。契約とはの。儂等の魔力をあげてやるから襲うな守れ、というやつじゃ。普通は自分の統括する地だけでやるのじゃが、そなたは動くのであろう?取り敢えずこの辺の魔獣達に身代わり…魔力溜めを作るからそなたの魔力を感じても襲うな、と契約をすれば楽に動けるじゃろう。」


そう言われてアイはニャーシテールの言っていたドラゴンの話を思い出し、同時に、強く見えない、という言葉を思い出す。


「でもアイは強く見えないらしいの。だから、契約は難しいかもしれないの。」


「強さの方は儂が連れておるのだから大丈夫じゃ。儂は魔獣達の間では結構恐れられておっての。儂がそなたを認めていると分かればどんな馬鹿な魔獣でも認めるじゃろう。」


それを聞いたアイは満面の笑みを浮かべた。


「ありがとうなの!ドラゴンさん!」


するとドラゴンは笑って返し(牙を出している様にしか見えないがきっと笑っているのだろう)思い出した様に言う。


「そういえば、名前を言っていなかったのう。儂はカルロスじゃ、そなたは…アイか?……アイ、友達になってはくれぬだろうか?」


「こちらこそ、なの!カルロス!…仇名は、んーと、カル!」


それに対してアイがとびきりの笑顔で答えるとブラックドラゴン、いやカルロスは更に笑い(更に牙を剥き出している様にしか見えないが)、しゃがむとアイの前に何かを置く。

拾ってみるとカタツムリの殻の様にうずを巻いている貝殻の様な物だ。


「貝殻、なの?」


「そうじゃが、違うのう。正確には【絆の貝笛】じゃ。儂のスキルで作り出したものでの、それの音色は儂とアイにしか聞こえん。吹く時に思いも込めればなんとなく伝わるぞい。これは信頼できる者にしか渡さんのじゃよ。」


カルロスは

これを家族以外に渡すのは初めてじゃ。

と付け足して再び笑った。



・・・・・・・



「………誓うならばこの契約書に印を示せ。》」


今、何をしているのかと言うと命精達と契約をしている。

カルロスが死の森の中にいる魔獣の族長達を呼び出し、説明をし山の中にアイの魔力を溜めた後、何千もの命精がやってきたのだ。


「まだ、終わらんのか?」


どうして声を出して契約をしているのかと言うとさっきから急かしてくるカルロスにきちんとやっている事を知らせるため。


「そんなに急かすならカルも命精さん達の名前を考えて欲しいの。」


因みに火精や水精、空精、光精は契約したいものは自らアイの下へやってこれるためもう契約したくないもの以外は全員契約している。

今はもう契約しにくる命精以外の精霊は生まれてきた精霊だけだ。

命精は自分の子からなかなか離れられないため、こうしてアイが近づいてきた時にやってくる。


「んー、そうじゃな、アクア。」


「その子はもう水精にいるの。」


「…じゃ、ミント。」


「その子はもう空精にいるの。」


「……ならば、スーシャ。」


「その人はもう町の人の中にいるの。」


「………それならば、ベリー、はどうじゃ!」


「その子はもう火精にいるの。」


「……………。えーい!アイは一体何人と契約しておるのじゃ!」


「ん?えーと、二億三千……。」


「あー、もういい、もういい。聞いた儂が馬鹿じゃったわ。」


「《我、汝を従精とする。名は『イルト』。我は、我が死ぬ、又は汝が名を捨てる、などがない限り魔力を与え、汝を決して消滅させない事を誓う。汝は、我が助けを求めた時、汝の出来る範囲、助けることを誓うか?誓うならばこの契約書に印を示せ。》…はい、終わったの。」


アイがそう言って契約帳を閉じるとカルロスは、やっとか、と背を伸ばす。


「んんー。最後の一人じゃったのか。じゃ、次行くぞい。」


「分かったの。背中に乗らせてもらうの。」


アイはそう言ってカルロスの尾っぽの付け根辺りに飛び乗り頭の方まで駆ける。


「…それにしてもカルは大きいの。もっと小さくなれないの?」


こんな巨体が空を飛んでいたら流石に目立つと思ったアイがカルロスにそう言う。


「なれるにはなれるのじゃが、そうすると魔法を使わないと飛べなくなるでのう。そうすると死の森以外の馬鹿な魔獣達を引き連れる様になるじゃろう?大丈夫じゃ、遥か上空を飛ぶから人には見えん。」


「なるほど、なの。」


「…ただ、儂は大丈夫なのじゃがアイは遥か上空で息は出来るか?」


「そこは大丈夫なの。アイには【最適化】があるの。」


「おぉ。それはよかった。じゃ、行くぞい。」


・・・・・・・


「カル。今日はありがとうなの。」


「また、しばらくしたら迎えにくるでのう。その時はその【絆の貝笛】を鳴らすぞ。」


「分かったの。アイも何かあったら【絆の貝笛】を鳴らすの。」


今、アイ達がいるのは王都から一キロ程離れた場所。

きちんと【認識障害】をかけている。

これをかけた時はカルロスに、飛んでいる時もかけてくれれば楽だったのに、と文句を言われたが。


「元気での。」


「カルも元気でね、なの!」

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