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1話

 桜が満開になる春、空は青く澄み渡り、花見日和の今日。

 元気な女の子3人と男が1人。

 楽しそうに歩きながら、仲良く歩いているのは陣木家の4人兄弟。


「兄貴!早くしないと花見の席なくなるぞ!」

「へいへい」


兄貴と呼んでいるのが長女の陣木 癒(じんき いやし)。地元の鳴宮高校に通う1年生。周りからの評価は、名前と印象と、言葉遣いのギャップが酷すぎる残念美人である。名前が癒なのだから、おっとりとした話し方をイメージするかもしれないが、言葉遣いが荒々しいのだ。


「お兄ちゃん!早く早く!」

「ほいほい」


 お兄ちゃんと呼んでいるのが次女の陣木 力(じんき ちから)。地元の清水中学校に通う3年生。誰もが認める元気っ娘である。

 クラスメイトの中では力と関わることが、1日の元気の源と言い切る人間もいるくらいだ。人間に不可欠な日光と絡めて、“太陽の笑顔”と呼ぶ生徒もいる。


「おにぃ、早くしないと殴るわよ?」

「今すぐ参りまぁぁぁぁぁぁぁぁす!」


 おにぃと呼んでいるのが三女の陣木 水(じんき すい)。次女の力とは双子である。今は物騒なことを言ってはいるが、周りからの評価は優しいの1つである。

 とにかく優しく、転んでいる子がいればいち早く駆け付け、声をかけ、水道まで連れていき、傷口を流した後は自前の絆創膏を貼るところまでをするのだ。

 兄に対しては、秘密にしておこう。


 そして、気のない返事から手のひら返しのように死ぬ気で返事をしているのが、長男の陣木 守(じんき まもる)。長女と同じ高校に通う高校2年生である。最近の悩みは妹からの扱い、気づいた時には妹達からの扱いが酷くなっていたのだ。いきなり呼ばれては蹴られたり、パシりとして扱われたり、罵倒されたりと災難なのだ。


 だから俺は妹達を、鬼妹等(キマイラ)と呼んでいる。



 時は遡り、花見する前夜。

「では、第370回妹会議を始めるぞ!」

「「おぉー!!」」


 開会を宣言する癒。それに合わせて掛け声を出すのは双子の力と水である。


「今回の議題は、花見でドッキリ!兄貴とイチャイチャ大作戦!だ!」

「お兄ちゃんとイチャイチャかぁ。今回は成功できるかな?」

「成功させるのよ、絶対に成功させてみせるわ」


 この会話から察することのできるように、この妹たちはお兄ちゃんが大好きっ娘なのである。対象である守には気付かれておらず、むしろこの会議が逆効果となっているわけなのだが、本人達は気づいていない。


「この前は、愛は痛さよ!私からの愛のプレゼント大作戦!だったわけだけど、普通に兄貴を殴り飛ばしたり蹴り飛ばしたりしただけで、怒らせちゃったんだけどな!」

「あれはいい感じになるかなぁって思ったんだけどなぁ~おかしい」

「おにぃがドMだったら喜んでくれたのに」


 以前の作戦は、次女の力が見ていたドラマの中で「愛ってのは痛いのよ!」というセリフを聞き思いついたのである。

 ちなみにこのドラマ「私の愛は鎌のよう」というタイトルで、ヤンデレなヒロインが好きになった相手を、言葉や暴力、時には凶器を使い恋愛を成就させようとするラブコメである。

 ネットの掲示板などでは、「NOTラブコメYESホラー」や「今世紀最大のホラードラマ」とまで言われているものである。

 

「とりあえず問題は明日だぞ!力!水!」


 明日は一年に一回、陣木家恒例の花見である。

 イチャイチャできる機会としてはテンプレイベントとも言えるであろう。


「去年は何したんだっけ?」

「去年はあれでしょう?おにぃ露出未遂事件が起きたじゃない」

「去年はあれだな、お花見といえばお酒だよね?お酒飲ませて酔わせちゃえ大作戦!だった気がするぞ」


 去年の花見は守に酒を飲ませて、酔わせてセクハラされたら本望だ!の気持ちで行われ、守に酒を飲ませることには成功したのだが酔った守には脱ぎ癖があったようで、服を脱ごうとする兄を妹たちが一生懸命止めるという花見で終わったのだった。


「でも、あの時は勿体ないと後悔したわ。おにぃの裸を堂々と見る機会だったのに」

「そんなこと言わないの~、お兄ちゃんが警察の人にお世話になったらどうするのよ」

「それはそれよ、公然わいせつ罪で捕まってもおにぃは私の愛おしいおにぃだもの」

「なっ!お兄ちゃんは私のだから!」

「はいはい、そこまでお前ら少しは落ち着け」

「「は~い」」

 このまま放置にしておくと、兄は私のだ戦争が勃発してしまうので、姉である癒が二人を止めたのだった。


「取りあえず、今回は私の案を採用してもらうぞ!さっき言ったタイトルの通り、今回はドッキリを仕掛けて、兄貴とラブラブしよう!という作戦だ!」

「それで、ドッキリって何するの?」

「それは今から3人で決めよう!」

「癒ねぇも本当に適当ね」

「褒めるな!褒めるな!」

「「……ほめてないから(わよ)」」


 癒は計画性がないのだ。


「んー、じゃあ私から提案!お兄ちゃんに仕掛けるドッキリは色仕掛けでどうでしょうか!」

 

 次女である力は色仕掛けを提案する。男を虜にするという点では色仕掛けドッキリは正解にも思える。 

 しかし、そこで水が一言。


「あんたに色気ないじゃない」


 次女・力VS三女・水による第1次色気あるもん戦争の始まりを告げる声が響いた。


「私にだって色気ぐらいあるわよ!」

「どこにあるのよ」

「私身体から溢れるこの色気がわからないの?」

「あなたの貧乳からは悲しさが溢れてるわね」


 力は貧乳である。力は貧乳である。

 何回でも言おう、力は貧乳である。


「うっさいわね!水だって、そんな大人ぶった口調だけど、熊さんパンツ履いてるじゃない!あ、わかった。難癖つけてきたの水自身に色気がないからでしょ~!熊さんパンツに色気ないもんね~!」

 

 水は熊パンツである。水は熊パンツである。

 何回でも聞かせよう。水は熊パンツである。


「力……。言ってはいけないこと言ったわね!あんたにはないけど私には色気あるわよ!脱いだらあんたより胸あるし、くびれあるし、おにぃなんて悩殺よ!」

「熊さんパンツだけどね」

「うるさいわね!このー!」


 口論では収まりがつかなくなってきたのか、口喧嘩から取っ組み合いに発展してしまった。

 一方長女の癒は、自身はスタイル抜群なのでお色気ドッキリでもいいかなぁなんて思い始めるのであった。

 


 妹がいないけど妹大好きな作者です。ご感想・ご意見・ご指摘・妹をお待ちしております。


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