地上に出てから
久しぶりの投稿です。この話のあと数話投稿してこの小説は打ち切りです。
ではなぜ投稿するのかというと、また新しいのを書こうと思ってログインしたら、書いたものの投稿していなかった話があったのでそのためです。
ではなぜ打ち切るのかというと、昔過ぎて設定やキャラの口調などを覚えていないからです。
あと少しで打ち切られる話ではありますが最後まで読んでくれると嬉しいです。
件の少年達を助けてから、ダンジョンにやってくる冒険者たちの態度が友好的になったかといえばそうではなかった。
たまにやってくる冒険者たちは俺を見かけるとレアモンスターだのなんだのといって襲いかかってくるのだ。
情報伝達がうまく行ってないのだろうか、それともあの少年たちがホラを吹いたとでも思われたか?
「まあ、もはやダンジョンにいないんだし、別にいいか。」
そう言って俺は自分のゴツゴツとした岩のように隆起した前腕を撫でる。
そうです。なんとあのリッチを倒してから体の調子がよく、なんと受肉の魔術を習得できたのだ。
このダンジョンから離れることのできなかった理由である、「どう見たって魔物にしか見えない」が解消された以上はこんなジメジメした場所にいる必要もない。
俺は終にこのダンジョンから脱出したのだ・・・!
そして俺の目の前には今木造の立派な宿屋がある。
いや少し誇張した。あちこちがボロくなっていて少しみすぼらしく、立派とは言い難い。それでも俺にとっては半年ぶりほどのまともな寝床なのだ。
あれから俺はダンジョンの近くにある街に入り、冒険者として登録し、この宿屋に止まっている。お金?それはまあ……。ダンジョンで息絶えた人達からの冥土の土産……的なあれです。
と、まあそんなことを考えつつ、宿の中に入り自室に戻る。今日は街を探索し、冒険に必要だと云われているロープやその他冒険セットを購入した。明日からは依頼を受けて冒険者としての活動を始められる。今日は早めに寝るのだ。
なんだか心が踊ってきたな。冒険といえば魔術と同じくらいにファンタジーの定番じゃないか。
俺は自室の鍵が閉まっていることを確認しベッドに身を転がす。
並列思考があるから寝ないんでいいんじゃないかと思うかもしれないが、全くそうではない。
思考は増えるだけであり、思考を1つ休ませるだけでは不十分だ。最低でも3分の1は眠らせないと次の日の活動に支障が出る。
魔法の解析・発明の2つと記憶の反芻に使っている1つ、そして自由に動かしている思考を1つこれで13ある並列思考の内の3分の1を眠らせたことになる。本当は少し足りないけど、 まあそこは少し我慢すれば良いだろう。
《アナウンス兼情報処理No.12より伝達。魔法解析完了。新魔法『月世沈弱』を習得。
概要。月の力を利用し、周囲に動きを緩慢にさせる弱体化魔術を掛ける結界を貼る。満月の日にのみ使用可能。》
お……、ちょうど、魔法の解析と、アナウンスが来たか……、じゃあ、アナウンスの紹介を……、だめだ眠い……。寝る。
やあ、眠っていない俺だ。思考の整理担当の俺だよ。この眠っている時間はほぼほぼ仕事量はいつもの3分の1引かれててやることも少ないんだ。
だから3分の1の俺が起きるまで昨日から聞こえているアナウンスについて話そうと思う。
このアナウンスは俺の新しい能力だ。
と言ってもアナウンスするのが俺の新しい能力な訳じゃない。
並列思考lv10で手に入れたこの能力は思考結合。
今まで手に入れた思考の幾つかを組み合わせることで新しい機能を作る能力だ。
思考分割化の上位互換とも言えるな。
俺はこの力を使って5つの思考を纏めた。
1つには№8と名付けステータスの担当を、1つには№9と名付け肉体(骨の本体の方)の担当を、また1つには№10と名付け肉体(偽物の肉体)の担当を、また1つに№11と名付け魔力関連の担当を、そして最後の№12には統括とそれらの情報の文章化担当を振り分けた。
そして出来たのがアナウンスシステムだ。
肉体に欠損があれば治してくれるしステータスが上がったらお知らせしてくれる。結構便利だ。
ログを見れば自分が気を失っている間に起きたことを自分の近くで起こったことのみだが分かるし。
……おっと、そろそろ3分の1の俺が起きるみたいだ。
じゃあな。
目が覚めた熟睡出来たなあ。安い部屋だったから心配だったけどラッキーだった。
さて、顔も洗ったことだしさっさとギルドに行くか。
下に降りると元気な金髪娘がいた。食堂部分ですでにたむろしている冒険者たちに朝食を配膳しているようだ。
彼女はこの宿屋の看板娘。名前はレイラで年齢は俺と近く16だったはず。
「お、レイラちゃんおはよう。」
「あ、カギヒラさんおはようございます!これから仕事ですか?頑張ってください。」
「ああ、今日が初めての仕事だからな。まあ頑張ってくるさ。レイラちゃん、俺にも朝食を頼むよ。」
「はい!すぐにお持ちしますね。」
しかしこの宿だけか分からないけど量が凄い多い。
この宿には冒険者が異様に多いのできっとそのせいだと思う。
まあ俺は消化した食料をエネルギーとして貯めて置けるようにタンクがあるからリバースするとかはないけど。
ギルドに行くと冒険者が大勢いた。この早朝の時間が仕事時なのだろう。
Fランクの仕事が貼ってあるボードに向かう。
街の中で出た黒い何かの調査、外でゴブリン2匹以上の討伐、子どものお守り、引越の手伝い、外で薬草取ってこい……色々あるな。個人的に気になるのは黒い何かだな。
悩むな。
……よし、黒い何かの調査にしよう。これなら街の探索がてらこなせるしな。
えーと詳細は、最近市民街や貴族街で黒い外套を着た何かが歩いている。そいつが出ると盗難騒ぎが起こるのでこそ泥の類だと推測される。そいつがどんな奴なのか、またそいつの手がかりを調査して頂きたい。
か、うん。人間相手ならあのダンジョンに来てる冒険者程度には負ける気しないし大丈夫だろう。
紙を引剥して依頼受け付けに向かう。
「これ頼む。」
「はい、では冒険者カードをお預かりします。……はい、受注完了ですどうぞ。」
じゃあ行くか。