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始まりの日常

第3話までは、後日修正が入ります

「なあ、知ってるか!?今日転校生が来るんだってよ!」


朝のHR前。窓から射し込む春の暖かい陽を楽しんでいると、金田が話しかけてきた。

それにしても転校生か……。

ここは3年C組の教室だ。元々2年C組の生徒と担任がそのまま3年になったので、独特の空気というか……流れが出来ている。新しく来るヤツが馴染めるかどうか心配だ。

とりあえず何か答えないとな。


「へえ、転校生ねえ。男か?女か?」

「男らしいぜ。それも結構なイケメンらしい。ただ、聞いた話では前の学校でいじめられて転校してきたらしいぜ。」


いじめか……。更に心配になってきたな。

別にその転校生のことを心配しているわけではない。

さっきも言ったこのクラス独特の空気が壊れないかが心配なのだ。

今のところこのクラスは皆仲良しって程でもないけど、決まったグループはあるが対立やいじめなどがなく、上下の階級がない平和な空気なのだ。

特別誰かに気を使わなくてもいいこの空気が俺は気に入っている。

そのいじめられていたヤツのせいで空気が壊れてしまったら俺は間違いなく下の階級へと落ちるだろう。

俺にたいして好きじゃない奴と仲良くしたり誰かを土台に自分の権力を上げたりとかは難しいことなのだ。


「そうか、じゃあどうでもいいな。」

「いやいやいや。そのイケメンがクラスの女子を独り占めしないか心配じゃないのか!?」

「そもそもそんなことされなくても俺達に付き合えるような人が出来る気がしないからな。」

「……急に現実を突きつけてくるなよ。」

「……すまんな。」


俺も金田もそんなに顔が良いわけでも、運動神経が良いわけでも、勉強が出来るわけでもない。

唯一共通して得意なことといえばゲームだ。俺は格ゲー。金田は音ゲー。二人共日本で20位には入っている自信はある。

まあそんなわけで俺達の話題と言ったら……


「そんなことよりお前が勧めてくれたあのマジックオンラインでさ、物凄い強いやつがいたんだよ。」


マジックオンラインというのは何か格ゲーをやってみたいという金田に俺が進めたMMOだ。

広大なステージ上にはモブの敵は存在せずプレイヤー同士の接触によりPvPが始まりそこから2Dの格ゲーになるというよく分からないゲームだ。

その上マジックとは名ばかりの、基本物理で殴り合い、補助に遠距離魔法を使う程度のものだ。

しかし、ゲームのバランス自体は良く格ゲーマニアでは流行っているゲームだ。


「へえ、なんて名前のやつ?」

「『黒王』って名前のやつだよ。開始5秒で壁と空中のコンボでやられたよ。反撃しようとしても、見抜いてるかのようにカウンター決めてくるんだ。」

「ああ黒王さんか。あの人新人を鍛えるとか銘打って初心者いじめるの好きだからな。」

「知り合いなのか?」

「ああ、前回の格闘ゲーム総合世界大会で2位の人だ。カウンターに定評があって俺でも体力バーを半分削れなかったぐらいだよ。」

「は~、どうりで強いはずだ。」

「じゃあ次はあの音ゲーなんだけどさ、どうしても例の曲の一分過ぎたくらいからが追いつかないんだよ。」


次は俺が金田に勧めてもらった音ゲーについて聞いていく、そして金田はその質問に答え俺の疑問が解けた頃金田が質問する。

俺達の話題は半分以上がゲームの話題だと言ってもいい。

そうしている内に、HRが始まる。先生がいつも通り、出席をとった後転校生を教室に入れた。


「ど、どうも、鈴木 宏太です!よろしくお願いします。」


ふむ。珍しく金田のあやふやな情報が当たったみたいだ。

鈴木宏太と名乗った男は自然な茶髪をした美青年だった。

周りの女子が騒いでいる。男子も女子の気が惹かれているという意味で騒いでいた……一部の男子が違う意味で騒いでいるのは知らん。俺は何も聞いていない。


「じゃあ席は金田の横でいいか。」


先生がそう言って金田の横の席に座らせる。俺の斜め前になるわけか。


早速金田が話しかけているみたいだ。俺はそんなに興味があるわけじゃないし、授業が始まるまで寝てよう。








「であるから、こうなります。」


うん……?もう授業始まってるのか……。時間は?

やべっ、もう12時じゃないですか。これはやばい。午前の授業4つ分寝過ごすとか……ゲームやり過ぎたか。まったく……授業料が無駄になってしまった。


「やっと起きたの?よく寝てたね。」

「疲れてんだよ。だから仕方がない。―ァァァ。まだ眠い……。」

「大きなあくびだね。君のことだからどうせまた夜遅くまでゲームをしてたんでしょう?」


俺が起きたのに気付いた隣の席の『有沢 有栖』が話しかけてきた。

こいつとは中学一年のころから一緒のずっと一緒のクラスだ。そのせいか知らないがこいつとは結構仲がいい。

また中々モテるようで告白とか沢山されているらしい。決めた奴がいるみたいで全て断っているようだが。

これを聞いた奴の中には「それお前の事好きだから断ってんじゃね?」とか言ってくる奴もいた。しかし残念。こいつが好きなのは俺じゃないんだよな。

こいつにはずっと昔から好きな人がいるらしい、そいつに出会ったのは中学に入るずっと前だとか言ってたから、確実に俺のことじゃないだろう。


「まあな……。なあ、午前の授業のノート見せてくれないか?」

「仕方がないね。あの喫茶店のケーキで手を打とう。」

「対価を取るのかよ……。」

「だってそうしないと君のためにはならないだろう?それに時々見せてあげてるじゃないか。」

「んー、分かった。ケーキな。」


ゲーセンの格ゲーやるのに金ためてるんだけどな、しょうがない。

……こいつガッツポーズしてやがる。そんなにケーキが嬉しいか。


そうこうしていると授業の終了を告げる鐘がなった。

教師は黒板から離れ、こちらに向き直り礼をさせると教室から出て行った。

すると俺と同じく寝ていた、金田は目を見開き弁当を引っ掴みこちらを向いた。


「おい、鈴木と一緒に飯食うからお前も一緒に屋上来いよ!」

「は?いきなりどうした……ってお前俺はまだ弁当持ってないんだから無理やり連れて行こうとするな!!」

「おっとすまん。つい興奮してな。鈴木。先に行っとこうぜ。」

「あ、うん。」


まったく……何なんだあいつは。ていうか鈴木も結構このクラスに溶け込めてるみたいでちょっと安心したぜ。少なくとも空気が壊れることはなさそうだ。




屋上に来た。さて、金田達はどこに居るのかな……


「おう、やっときたか。遅いぜ!」

「うるせえ。お前が待たないのが行けないんだ。」


金田がでかい声でこちらに声を掛けたのですぐ場所が分かった。


「ああ、鈴木だったか?ちょっとスマンな。」

「どうぞ。」


俺は鈴木と金田で三角を作るような形になるよう間に座った。


「で、お前はなんでいきなり鈴木を連れだしたんだ?お前そんなキャラじゃないだろ?」

「ああ、よく聞けよ?なんと鈴木は黒王さんなんだ。」

「は?」


何言ってんだ金田は……。いや、ありえない話じゃないか。チャットで話した感じ俺と同年代だったし確か黒王さんは日本に住んでたはず。


「本当に鈴木が黒王さんなのか?」

「うん。僕が黒王だよ。金田君が昨日のマジックオンラインの話をしていて気付いたんだ。

えーと、君は黒王のことをよく知ってるみたいだけど一体誰なんだい?」

「俺は『クーゲルシュライバー』だ。MMOだといつも同じギルドに入ってるだろ?マスターさん。」


黒王さんとは結構仲がよく『黒と白の軍勢』という黒王さん……鈴木でいいか、鈴木の作ったギルドに俺、鈴木と副マスターの『白銀の帝王』さん、そして『腹黒爺さん』の固定メンバー4人でやっていた。


「ああ!シャーペンさんか!声が似てたからそうじゃないかと思ってたんだ。」


そういえばボイチャもしたこともあったな。

その後昼休みが終わるまでずっと鈴木と金田の3人で話し続けていた。


……あ、有栖からノート見せてもらうの忘れてた。

……授業中に写せばいいか。










鈴木が転校してきてから2週間経った。


今日は朝から嫌な日だった。家から出て駅に着いてから財布と鍵をかけ忘れたのに気付き、途中まで晴れていたのに豪雨が突然発生し服はびしょ濡れ。


本当に最悪な日。

今日は嫌な予感がしていた。

嫌な予感っていうのは確実に当たるものだ。


俺はその日の度重なる不運により体力を思ったより使っていたのか授業中に関わらず熟睡していた。

突如目が覚めるような光が教室を包んだ。

いや実際に目が覚めた。


「なんだこれは!」


誰かが叫んだ。しかしそんなこと誰もが考えたが誰も答えが見つからない事だ。

最初にまともな対処をしたのはその時授業をしていた歴史の教師だった。


「今すぐ外にでるんだ!」


その言葉に呼応して生徒たちは外へと溢れるように出口へと向かい始めた。

しかしそれより早く光は激しさを増し、一瞬フラッシュを焚いたように大きくなったかと思えば俺の意識は途切れていた。


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