ある部屋
ここはある部屋の一室。
どこにでもある男の部屋でベッドに本棚に机とこじんまりなしたキッチンと洗面台に風呂がある
ある男はこの部屋で電話をかけていた
トゥルルルル・・・・・トゥルルルル・・・・ブツ
「はいこちらひきこもり代金支払いサポートセンターにございます」
「こ、こちらに電話するとお金をあ、くれる、支給してもらえるとのことで」
「引きこもり暦は何年ほどですか?」
「あ、えとその・・・・・29年ほどです」
「一人暮らしですかそれとも実家ですか」
「一人暮らしです」
「それでは買い物や家事は行っていますか」
「えー、いえほどんど出ていません」
「では、体積を計算するので体重身長年齢おねがいします」
「あーえと、38歳179センチ104キロです」
「では後日代金を振り込ませいただきます」
ブツッ・・・・・ツー・ツー・・
「あーやれやれ、これでまた当面はくらせるな」
今の世の中は働くことに多く税金を掛けているせいでだれもが働かないしかも人口が増えすぎて外出まで
制限されている、つまり働かないことが生きる道だ
男は自分の腕を見る白く筋肉のかけらもない贅肉の塊
体を起こそうとしてあまりに気だるいのでやめた
「ああ、昔の海が見たいなぁ」
小さく元気で少年だった海の匂いのする熱い日差しの海
母と父がいた、人口削減のために家族で暮らすには莫大な税金がいる自然に決別した
男は数センチ先の機械のスイッチに触れる
すると起動音がして目をつぶると海が見えたけれどそこには母も父も居らず
海の匂いもしない
男はまたスイッチを押した、すると心臓に電気が送られて男の一生は終わりを告げた
ここはあるビルの一室。
どこにでもあるデスクの上にはPCが並び、背広の男がふと目を留めた
「住民番号K1254652584が死亡しました」
「了解しました」
「にしても人口が減りすぎでは、このままでは世界規模で人類が滅亡です」
「政策だ」
「しかし人口が爆発的に増え対策のための措置がこれでは消滅しては意味がありません」
「いいのだ」
「なぜですか」
「人が多く望んだのは平和で能力の差別のない飢えも欲望も満たす世界だ、しかし機械が働き、ロボットがたくさんの美人を生んで相手をさせても政治は不満が絶えない」
「それはそうでしょう政治は人類の脳です」
「だが人は判断を誤る」
「それはそうですがこのままでは・・・・」
「それが人類の幸福だと認めたのだ」
「誰か認めたのですか」
「人類最高の人工知能だ」