1-8:70年経ちました
こんにちは、激動の時代を生きている樹です。
前回から早くも10年、わたしの予想を裏切ることなくこの10年は戦いの日々でした。
当初は8神将も揃い戦いも有利に進める中、四天王も8神将も次第に倒れ代替わりをしていく。それほど厳しい戦いでした。
ニョロさんなど、傷を癒すために冬眠した後、二度と冬眠から覚めること無く息を引き取りました。爬虫類って冬眠しっぱいするって初めて知りました。
ワシさんは一時勢力を強め、正に敵なしと思われていたのですが、その後魔王の手下と思われる大鷲さんという更に力を持つ敵との戦いに敗れ、今はこの地を離れてしまいました。
わたしは、すかさず大鷲さんを勧誘、魔王の配下から四天王へとヘッドハンティングしたのです!
昨日の敵は今日の友ですよね!
その他も、次々にある者は若い者へ世代交代を行い、ある者は力ある者によって地位を奪われ、まさに下剋上の戦国時代なのです!
そんな中、わたしは時には甘い果実で、時には甘露な水で、きっと力でしか支配できない魔王配下の者達をこちらの味方へと引き込んでいったのです。
まさに、知略の勝利です!
ふふふ、わたしも伊達に70年も年を重ねていないのですよ!
しかし、そんなわたしの努力をあざ笑うような事態が進行し始めている気配がします。
なぜなら!先日四天王の大鷲さんが倒した鳥が、敵の偵察、または連絡兵だったのです!
なんと、足に何か長細い筒が取り付けられていたのです!
最初に気が付いたのは8神将のネズミさん(角付)でした。大鷲さんの残した鳥の足をカジカジして、筒を見つけてくれたのです。
そして、その筒には紙のようなものが入っていました。
なんとか皆さんに頼み込んで広げてもらうと、そこには明らかに文字っぽいものが書かれていたのです。
この世界にきて初めて文明の香りが漂ってきたのです!
なんという事なのでしょう?もしや、魔王軍は文字を使った連絡方法を持っているのでしょうか?
っという事は、文字の書ける種族を味方につけているという事です。これは脅威ですよ!
手が使えるという事は、もちろん武器も使えるのでしょう!
我が軍で武器が使えるものは未だ皆無です。
皆の頭についた角が武器といえば武器でしょうか?
この楽園が魔王軍に蹂躙されるかもしれません!
70年という平和を甘受し、文明の発達を軽んじた罪なのでしょうか?
とにかく子供たちに情報収集をお願いしました。
すると、なんと私から一番遠い場所にいる子供達から何やらよくわからない生き物が大勢こちらへと侵入し始めているそうです。
なんと!ところで、その侵入し始めている者達はどんな姿で、どれくらいでこちらに着くのでしょう?
・・・え~っと、ダメです!ニュアンスでお互い察するには少々指示が細かすぎるのでしょうか?
あ、大鷲さんが偵察に飛び立ちました!
他の者たちも同様に偵察に動き始めたようです。
彼らの情報を待って対策を練る事にしましょう。
これは、まさに楽園存亡の危機です!
◆◆◆
その頃、楽園外延部では・・・
「し、信じられん!ここはなんだ!」
「これほど豊かな土地は見たことがありません」
「ここは、まさに楽園かもしれません、先ほど、兎などの動物も見かけました」
「なんと!否、これほど緑が豊かであればそれも当たり前か」
「急ぎここの調査を進めるのだ!鳩は飛ばしたのだな!」
「はい、調査隊の増員を頼みました」
1台の馬車と、それに追従する4頭の騎馬がそこにはいた。
そして、彼らの服装は明らかに薄汚れており、所々擦り切れていた。彼らが旅した長さをそれは物語っている。
「ここが我らの新天地足りえる事を祈ろう」
そう告げると男は大地へと跪き、額を土へと触れさせるのだった。