１－６２：７８年目の冬です
何か周りが慌ただしい秋も終わり、漸く静かな冬が・・・来ると良いなぁと思う樹です。
最近冬眠準備に入る動物さん達が、モコモコさんを剥がしに来るのですが皆さん何処かドンヨリした雰囲気を漂わせているのが気になっちゃいます。
肉食の方達はなんか最近のお食事が不満だったみたいですね。
漸く殆ど処理を終わらせたそうです。
ただ、草食さん達は秋の味覚争奪戦が大変だったそうです。何でもいつもより頭数が増えてしまって森全域で木の実を探す羽目になったそうです。なぜでしょう？普通にこの森は豊かなのにと思ていたら、なんかわたしの子供達が秋に人型木の実を作るのに力を使いすぎて普通の木の実が半減したそうです！
ふふふ、どうりで例年よりわたしの処に木の実を貰いに来る動物さん達が多かったはずです！
子供達など所詮はわたしの劣化版コピーでしかないのですよ！
わたしなど人型木の実を作って、更にはいつもより多めの木の実を作っても余裕綽々なのです！
威厳回復です！みなさんわたしの偉大さを痛感した事でしょう！
ほれほれ、モコモコだけでなく木の実だって作っちゃいますよ～美味しい木の実ですよ～～
枝に保存を考えたドングリのような木の実を沢山成らして落とします。
リスさん達が大喜びです！クマさんもわたしの木の実に気が付いたのか慌てて向こうから走ってきます。
チャンスなのです！ここで一気にわたしの偉大さ、ありがたさを感じてもらうのです！
わたしがせっせと木の実を作っていると、ドングリ系木の実があまりお好きでない肉食さん達がぐて～とこちらを見ていますね。
どうしたのでしょうか？え？胃が重いですか？食べすぎですか？腐らせるのは良くないですものね？え？え？食べすぎというより食中りに近いですか？それはいけません！水分はちゃんととるんですよ？お腹に良い木の実も作っちゃいましょう・・・えっとキャベツっぽい木の実でいいですよね？
肉食の方達がキャベツ木の実を食べてますが、あまり評判は良くありませんね、え？どうせならもう少し歯ごたえが欲しいですか？要求が高度ですね、味は意外と受け入れられています、不思議です。
動物さん達と交流してたら今度はエルフっ子達が連れ立ってやってきます。
おお、何でしょう。わたしってもしかして人気者ですか？え？違う？季節最後のハチミツ集めですかそうですか。ハチさん達も冬眠ですからね。
木の実はなんか人型のがいっぱいあるので当面それを食べるですか。変に育つと不気味ですからね、あれは呪いの木だと言われても素直に納得しちゃいますよ？
それでも、エルフっ子達もハチミツ以外に落ちている木の実も集めているのでもう少し追加しておきました。わたしってすっごい気が利きますよね？気配りさんですよね！
そんな事を思っていると、森にいる子供達からそれなら栄養をくれ！みたいな思念が届いてきます。
みなさん秋に張り切りすぎたのでグロッキー状態っぽいです。
あの時の皆さんはどっか壊れてましたもんね。おそらく持っている以上の力を使ってしまったのでしょう。
だから、だからこそわたしは栄養剤など作りません！あなた達は勢いで行った過ちを自分の体に刻み込まなければならないのです！勢いとはいかに恐ろしい物か、それを身を持って知らなければならないのです！
間違えてはいけませんよ？これは日頃の恨みとか報復ではないのですよ？親の愛なのです！
え？いつも勢いでやらかしてるのはわたしですか？お前が言える事じゃないですか？
ひ、酷いです！いいからさっさと栄養剤送れなんて！ぜったい、ぜったいに送って何かやらないから！
貴方達なんか栄養不足で苦しめばいいのです！寒い冬に碌にモコモコすら作れなくて凍えて泣けばいいのですよ！や～～いや～～い、ざまあみろ～、いつもわたしを苛めるからこんな事になるんです！
何か怒りやら憎しみやらの思念がバシバシ飛んでくるんです！
ちょっと、貴方達怒りはともかく憎しみってなんですか？！
わたしは貴方達の母親なのですよ！え？ならさっさと栄養剤ですか！
むっき～～～わたしは貴方達のお財布ではないのです！なんですかその態度は！
こうなったらお仕置きですよ！自分達が悪かったと謝るまで許しませんからね！
ふふふ、ご飯だって作ってあげない・・・あれ？作ってませんね、ご飯。
お小遣いだってあげない・・・あれれ？あげた事無いですね、お小遣い。
そ、それならお母さん出て行っちゃいますよ！って・・・わたし動けませんよ？
はっきりいって育児放棄してますものね？っていうか木の育児ってどんなのでしょう？
それと、この場合のお仕置きって何をすればいいのでしょう？
・・・・き、木の実つくってなんてあげないんだから！
え？ところで森の外はですか？
何で森の外の出来事をわたしが知っていると？興味ないですよ？
え？その後のですか？さぁ？ただ、わたしはホラー嫌いなんです！
