1-53:77年目の春です
は~るがき~た、は~るがき~た、ふゆに~げた~
目が覚めたらいつの間にか暖かい春になっていた樹です。
もう嬉しくって思いっきり花粉でも飛ばしましょうか?
え?刺されても知らないぞ?ですか?花粉を甘く見るなですか?
むぅ!冗談抜きで何処からか殺気が飛んできている気がしますね、花粉並みですね!
とにかく、モコモコさんを脱ぎ捨てて暖かい春を歓迎するのです!
今年は桜にしましょうか?何となく梅の花は時期を逸した気がしちゃいます。
何となくですけど梅の花はちょっと肌寒い中で健気に咲くイメージが有りませんか?
という事で満開の桜の花をご堪能ください!
じゃ~~ん、どうですか?綺麗ですか?綺麗ですね?え?見えない?心の目で見てください!
わたしも自分を子供の木から見て満開の桜を堪能します。で、お団子何処ですか?お酒はないですか?
桜を見ろですか?何を言ってるのでしょう?あれはお酒とお団子があって初めて意味を成すのですよ?
という事でお団子をってあっても食べられないじゃないですか!お酒も飲めませんし!
う~~そうです昨年の目標は味覚だったのです!何か色々あって忘れていました!
今年こそ目指せ味覚の開発なのです!
わたしがそんな事を考えていると、何やら森の外から変な電波?が飛んできますね。
というかそから中で電波が飛び交っていませんか?
今まで感じた事のない電波です。という事で映像を切り替えてみると・・・おや?森の中で人族が木を切ってます!子供達の命の危機です!慌てて子供達へと意識を向けるのですが・・・あれ?
なんか子供達が人族に指示してますかこれ?
良く見ると森の中にいる人族みんな角がありますね、電波に意識を向けると、そこの木を伐れ、枝を落せと結構上から目線で指示している感じが伝わってきます。
次に映像を切り替えれば、人族のいた場所がなんか村っぽくなってます?
木造の建物が建設され始めてますね。それと・・・村の中心や周辺に木が育ち始めてますけど、あれってわたしの子供ですよね?何時の間にですね。
どことなく木の形が歪というか、人の形に見えるのは気のせいですね。
ただ、その村の中でも電波が飛び交っている気がしますけど、これって交流できているのでしょうか?
う~~んと、もしかしてこの角ってアンテナだったりします?
木は送信アンテナで、角は受信アンテナだったりしませんよね?
でも、そうするとエルフはどうなるのでしょう?またもや謎ですね!
・・・・ま、いいか、動物さん達も気にしてないみたいですし。
わたしは関係ないですからね!わたしはわたしで好きなことしてれば良いですもんね。
どうすれば味覚を開発できるか考えましょう!・・・・・Zzzzz
◆◆◆
「トールズからの連絡はまだ無いか」
「はい、まもなく到着する。到着後状況を確認、安全が確保でき次第連絡を送る。との報告があったのが最後となります」
ビルジットはロマリエの言葉に顔を顰める。
トールズは若干大雑把な所はある。しかし、その戦闘力は軍内部においても10本の指に数えられる。
又、撤退の判断は良きにしろ悪きにしろ早い、この為今までで大きな損害を出したことが無かった。
その為、今回の派遣が決まった際の指揮官に任命されていた。
そのトールズから到着後の連絡が届いていない、これは由々しき状況になっている事を示している。
「どこかの国と戦闘になったという事では無いな」
「はい、その様な状況であればあの男はさっさと撤退してくるでしょう」
「居留地がすでに敵国に占拠されても考えられんな。あの男の事だ、安易に全軍で居留地に入ることはあるまい。そうすると、魔物ですか」
ビルジットの言葉にロマリエも同意する。そして、何が起きたのかが解らない為、次の対応に対し二の足を踏んでいた。
「どうする?追加で誰かを送るのしかない気がするが、それにしても誰を送れば良いのか」
「他国を利用しますか?情報を小出しにして、他国から調査隊を送るように仕向ける事は可能だと思われますが」
「自分で賛成していないような案を出すな!わたしを試すつもりか?」
ビルジットの叱責にロマリエは頭を下げる。その姿を見ながらも、ビルジットはロマリエが自分を派遣しろと言外に言っている事をあえて無視したのだった。
すると、ちょうどその時トールズからの報告書が届いたとの連絡が入った。
「今になってトールズからだと?」
そして、その報告書には到着と同時に現地で熱病に罹り生死の境を彷徨った事、その為に報告を送る事が遅れた旨の謝罪が綴られていた。併せて、先の角付の男に対しての報告も書かれており、これは木の実ではなく現地に長く滞在した為に発症したと思われる旨書かれていた。そして、更には先の男と同様にゾットル達も同じように角が生えて来た事が記されており、そこで報告は終了していた。
「何度もあいつの報告書を見ておりますから本人の手記に間違いはありえません。しかし、この報告書の内容は信用できません」
ロマリエが一通りの内容を確認した後ビルジットにその様に告げた。
「その根拠は?」
「トールズが早く国に帰りたいなどの愚痴を書かないなど有り得ないからです」
ロマリエはこの報告書が何者かによって強制的に書かれたことを信じて疑わなかった。