1-44:76年目の春ですね
う~~ポカポカ陽気に思わず二度寝しそうな樹です。
相変わらず日向ぼっこしかする事が無いんですけどね~
何か前にこのままではいけないって思ったような気もするんですけど、何をしようと思ったのかすら忘れましたよ?まったりすれば良いじゃないですか、だって樹なんですから。
あ、そういえば冬の初めに何か人族が来ましたよ!
何かうろうろして、モコモコさんを眺めて、触って、地面に落ちている破片を集めて帰っていきました。
何がしたかったんでしょう?
あんな破片集めてもあんまり防寒の効果は無いような気がしますよ?
地面を睨み付けて、何か落ちていないか必死で探しているんです、見ててなんとなく可愛そうな気がしてきました。しょうがないですね、少し木の実を分けてあげましょう。
そんな事を思いながら一人2個くらいでいいかな?っと木の実を6個落してあげました。
うん、わたしは慈悲深いのですよ!
人族の3人は突然落ちてきた木の実に呆然としています。
そして、慌てた様子で木の実を拾い上げると大事そうに厚手の袋に仕舞い込みます。
そして、今度は必死で木の上を睨み付けます。
むむ?木の実を探してるのでしょうか?
でも、もうあげませんよ?わたしだって疲れるんですから。
という感じで放置してみていると、木の実がもう無い事が解ったのか次は慌てた様子で袋をお腹側に抱えるように担いで?走り出しました。
背中側に担いだ方が走りやすいのに、変な人達ですね。
そんな感じで眺めていたのですが、しばらくして改めて考えると人族とのある意味これがファーストコンタクトだったのですよ!
むぅぅ、なんかあまりに淡々として終わってしまったのです。
なんという事なのでしょう!と言っても話しかける事すら出来ませんが!わたし樹ですからね!
いい加減なんとかしないと・・・どうなるのでしょう?
このままで何か問題あるのでしょうか?
無いですね?わたし別に人族に関わらなきゃいけない事なんてないですものね。
なんだ!別にいいじゃないですか!お昼寝しましょうそうしましょう。
Zzzzz・・・むにゃむにゃ・・・はっ!
駄目です!このままではずっと美味しい物食べれないじゃないですか!
そうです!思い出しました!もしこの状況で味覚が発生したらって思ったのでした!
いけません!何とかしないとです!でもどうすれば良いのでしょう?
そんな事を悩んでいたらいつの間にか春になっていました。
うん、おかしいですね?話してて自分でもおかしいなって気がしてきました。
どこで眠ってしまったのでしょうか?
とにかく、今年の目標は味覚を取る前に何とかご飯を食べられるようにしようです!
・・・あれ?でもご飯食べる口を作ったとしましょう。
舌も作って味覚もばっちりになったとします。でも、食べた物は口から胃へ行きますよね?
その後は腸へと行って、その後排泄されますよね?
困りました、植物には胃や腸に換わる器官があるのでしょうか?
根から栄養を取るのですから、根に口を作ったと仮定しましょう。
次は幹を通って枝や葉っぱに栄養や水が行きわたるのですよね?
という事は血管のような気がします。おお!そういえば植物って心臓がないですね!
駄目です!前世の知識が当てになりません!
前世の知識じゃなく、前世のわたしの知識ですか?いえ、そこを指摘されてもどうしようも無いですね。
だいたい、前世の記憶なんてまったく使えませんよ!くどい様ですけど樹に生まれ変わってどう生かせと言うのでしょう。
あ!でも前世の知識で思い出しました。ほら!植物の妖精とか普通にメジャーですよね!
食べ物の精気を吸い取るなんていうのもあった気がします。
そうですよ!せっかくファンタジーの世界に生まれ変わったのですから妖精とか精霊を目指せば良いのですよね!ふふふ、盲点でした。枝や根っこを動かす事、幹に顔を作る事ばかりに気が行ってました。
これで勝てます!わたしの時代がはじまるのです!
・・・ところで、この世界ってファンタジーですよね?
え?え?魔法すら見た事が無いのです!だからちょっと不安になっただけなんだからね!