1-39:75年目の夏です、灼熱です
暑いですね~夏ですよ夏!わたしの周りでもやたらに熱いです!
あまりの熱さに精神的に疲れている樹です!
え?熱いの文字が途中から違うですか?いえ、それで合ってますよ?
もう森の前では人族と人族が何か暴れてるんです。
う~~んと、違いを何と説明しましょうか。
最初に拠点を作り始めた人族を人族A、後からどやどややって来た人族を人族Bとしましょう。
何か試験問題っぽいですね、わたし文章問題って嫌いだったんですよね~なんか騙されてる気がしちゃうんです。むむ、って裏読みして思いっきり嵌るんです!あれって酷いですよね!
え?脱線してるですか?む、これも罠ですね!
とにかく、最初は人族Bの人達はAの人達に気が付いていなかったんです。
で、来たとたん何考えているのか森に来て突然木を伐り始めるんですよ!
何するんですか!危なくわたしの子供まで伐られるところでしたよ!
子供が伐られちゃったらその子供から見れた景色が見れなくなるじゃないですか!
こんな傍若無人な振る舞いは許してはいけません!
そして、森の皆が勝手に森に入ってきた人族に一斉に反撃を始めたんです!
もうね、季節は夏なのです!それこそ皆が元気に走り回る季節です!
春に生まれた子供達も、あっという間に大きくなっていく季節です!
という事で、人族Bさんは散々に蹴散らされたんですね。
ざまぁみろ!わたしの娯楽を奪うなど許しませんよ!って叫んでたら、なんか森の子供達の視線が冷たいのです。もう冬へと一気に戻るか進むかした気分でした。
えっと、もちろん子供達皆の事も心配してましたよ!
わたし達って樹ですから何かされても逃げる事すら出来ませんものね!
ほら、ちゃんと動物さん達に皆を助けるように指示したじゃないですか!
ちょ、ちょっとした照れ隠しなんですよ!
う~~子供達を宥めるのに一ヶ月くらいかかりました。
許すまじ人族の暴虐です!あなた達のせいでわたしの威厳と信用に傷が付いてしまったじゃないですか!
という事で報復ですよ!許さないのですよ!
そんな事を思って改めて人族たちを見たんです。そうしたら、あら?貴方達なんで同族で争っているんですか?
え?え?オオワシさんなんですか?きっと縄張り争いですか?ふむ、どうやらこの世界の人族は縄張り争いをするようですね。え?前の世界でもあったんですか?
ふむ・・・もしかしてマーキングするんでしょうか?って冗談ですよ、ほら戦争の事ですよね!
とにかく、動物さんにコテンパンにされた人族Bさん、その怪我も治らないうちに人族Aさんにコテンパンにされています。
結構死んでる人もいますね~嫌ですね~野蛮ですね~でも良いのでしょうか?
人族の戦いが終わるのをじっと待っている方達がいるんですけど。
弱った生き物を狙うのは基本ですか、うん、そうですね。
え?狙うのは人族Bだけですか?あいつらは礼儀がなってないですか?
ふむふむ、なんといいますか・・・貴方達本当に動物ですか?
動物ってそんな事を考えましたっけ?
そんな事を話しているうちに、だんだん陽が落ち始めました。
そして、人族Aさん達が自分達の村へと引き始めたその瞬間、人族Bさんに襲いかかる皆々様。
うん、どうみても動物の知恵ではないですよね。
あ、何狙ってるか思いっきりわかっちゃいました。
だって、人そっちのけで狼さんやオオワシさんは人族Bさんの物資強奪に走ってますもの。
もうなんというか、盗賊ですね!人族Bさんは逃げ惑うばかりで反撃も碌にできてません。
人族Aさん達は大慌てで逃げ出してますよ!
あ、オオワシさん、そのやたらと大人びた下着をどうするんですか?まさかエルフっ子に履かせるのでしょうか!ううう~~~ん、グッジョブ!え?意味が解らないですか?
ネズミさんやリスさんは食料へまっしぐらですし、もう人族Bさん災難ですね。
でも、これも自業自得なのですよ!森に手を出した貴方達が悪いのです!
これに懲りたら人族Aさん達みたいに身分を弁えて暮らすのですよ!
もっとも、ここで暮らす気がまだあればですけど・・・
◆◆◆
フランツ王国の移民達が、おそらく拠点を築く為に森へと入って行ったのを俺たちは確認した。
移民達を先導していると思われる兵士達の数は20名程、そして移民の数は恐らく300名は下らないと思われた。
流石に子供の姿は見られないが、ども移民達もまだ若い20代~30代の者達が主軸と思われる。
その為、もし人数に劣る我々との戦いが発生した場合、こちらの蒙る被害も相応になると推察できた。
ただ、我々はフランツの移民連中がただこのままで済むとは決して考えていない。
奴らはこの森を余りに理解していない。
それ以上に、前に軍隊を派遣して壊滅している状態で、何故これ程の数の移民を送り込んできたのか理解が出来なかった。
「ロイド、どう見る」
「解らん、あいつら何を考えているんだ?」
森で木を切り倒し始めた者達を見て、どう考えてもこのままで済むとは思えない。
「一度戻るぞ、全員で戦闘準備を整えて来よう。それ程時間に余裕はないと思えるからな」
「しかし、いいのか?」
「ああ、魔物どもに襲われて傷ついた連中を倒す。このまま居座られる前に壊滅させるぞ」
ロイドの言葉に偵察に来た面々が頷く。
ただ、中途半端な攻撃を加えれば国同士の争いへと発展する可能性が多分に含まれている。
この為、戦いにおいては一人たりともフランツ王国へ返すわけにはいかない。
「このまま放置すれば良いのではないか?魔物達が片付けてくれる気もするが」
「わからん、ただ奴らとは仲間では無いと魔物達に知らしめておく必要がある。何となくだがそんな気がする」
ロイドの言葉の裏を読み、皆が顔を顰める。なぜならそれは魔物達に知恵があるという事に繋がるのだ。
「統率された魔物の軍団が相手なのだ、それくらい考えねばなるまい」
そう言うと、ロイド達は村へと急いで戻るのだった。
体調不良などで遅くなりました。
なんか一気に寒くなってきましたね。