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1-30:73年目の冬真っ盛り

気温がぐっと下がって、風邪をひかない用注意している樹です。

冬場は相変わらずモコモコ樹皮さんの奪い合いから始まるのです。だから、貴方達冬眠から起きてまでモコモコを剥がしに来なくても良いじゃないですか!

え?寒くて起きた?モコモコもっと寄越せ?ちょっと待ちなさい、貴方達何様なのですか!

剥がされると寒くなるのはわたしなんですよ?

最近貴方達少々増長しすぎではないですか?わたしだって怒りますよ?


わたしが凄んでもみなさんまったく、一切、これっぽっちも気にせずにモコモコを剥がしにかかります。

これはもう、動物達にわたしの偉大さを思い知らさなければなりませんね!


ふふふ、秘儀、樹液分泌!


「ギャイン!」「ピッ!」「キュ!」


動物達が慌てた様子でわたしから飛び離れます。

ふふふ、どうですか、この何とも言えない匂いの樹液は!

動物は人間の数千倍でしたっけ?嗅覚が鋭いのですよね?わたしは樹ですから匂いなんて関係ないのです。

そこで思い切ってなんかすごい臭いをイメージして樹液を分泌してやったのです。


目の前では必死に爪や手を地面に擦り付けている姿が見えます。

やったのです!これでモコモコ樹皮は守られたのです・・・ん?なんでしょう?何か臭くないですか?

あれ?わたし今まで匂いなんて感じてなかったですよ?


此処に来てもしかして進化ですか?このタイミングでですか?神様わたしの事嫌いですか?


臭いのです!なんか目に来る臭さです!ふぎゃ~~~~誰かモコモコ剥がしてください!

あ、あ、みなさんどこ行くのですか?その白い眼差しはなんですか?狼さん、唾を吐くのは行儀が悪いですよ?ってそんな事より誰かモコモコを剥がしてください!何か泣けます、目に来ます!目は無いですけど!


動物達がさっさと去って行ってしまってからもわたしの苦闘は続いたのです。

葉っぱから、幹から、必死で水を出して洗い流したのです。

こんなに必死になったのはこの樹生で初めてかもしれません。なんとか自分から匂いが薄まったのですが、地面に染み込んだ匂いとかが後を引きます。


くぅぅ、あ、そうだ!芳香剤で対抗するんだ!

という事で今度はフローラルの香りを発生させます。・・・あれ?なんでしょう?何か予定と違います。

むぅ!こうなったら檜の香りをイメージします!今時代は森林浴なのです。

あれ?おや?なんか周りの匂いが・・・玉ねぎのような?何とも言えない匂いになってきました。


どっかで記憶がある様な・・・・あ!これ子供の頃に近くの文化センターでバレー習ってた時に嗅いだような?おばちゃん達の汗と香水が合わさった更衣室で嗅いだような?の感じだ!

酷いです!誰ですかこんな事するの!あ、わたしでした!

うきゃ~~何これ!お願い誰か助けて~~~あ、オオワシさんが飛んできました。

助けてくれるのですね!さすがオオワシさんです!って、あれ?下りずに帰って行きました。

ひどい!わたしを見捨てていくな!


あ、ミツバチさん達が巣の中で動きを活性化させました。

寒いですもんね、ごめんなさい、水を出したから気温下がっちゃいました?

ほえ?良い香りがしているですか?この匂いですか?ミツバチさん嗅覚可笑しくないですか?


そ、そうです!今気が付いたのです!子供達の所に意識を向ければ匂いが気にならないかもしれません!

急いで意識を子供達へと向けました、けど、駄目です!匂いがほんわか漂ってくるのです。


ふえ~~~ん、誰かなんとかしてください!


◆◆◆


雪が滾々と降り積もっていた。

そして、ビルジットはその様子を窓から静かに眺めている。

暖炉の火が赤々と燃え部屋自体は暖かく保たれている。しかし、ビルジットは体の芯から熱が奪われるような感覚を感じていた。

彼の執務机の上に置かれた報告書には、今年の冬に凍死や餓死するだろうと思われる人数が報告されていた。それは、この首都においても同様であり、流民、難民が流れ込んでいる現状を考えれば他の街に比べ人口比率はともかくとして死者の数は最も多いだろうと思われた。


「閣下、何か良い景色でも見えますかな?」


ドアをノックしその後許可を出す間もなく入室してきたロマリエは、窓の外を見つめるビルジットを見ながら尋ねた。


「地獄しか見えないですな。真っ白な悪魔が笑い声をあげて飛び回っている。せめて雪さえ降らねば、例年に比べ一度でも二度でも気温が高ければ、言っても意味のない事ですかな」


「そうですな、これでは北方の領地ではどれほどの被害が出ているか。この雪ではまともに外で食料を探す事も出来ないでしょう」


「で、ロマリエ殿はそのような報告をしにおいでになったので?」


「いえ、先日魔の森へと調査に出していた者達が戻りました。残念ながら魔物自体は手に入れる事は出来ませんでしたが、森に生息する植物などを何点か持ち帰っております」


「その報告はすでにお聞きしていると思いますが?」


「はい、その中において特筆すべき事が出ましたのでご報告に」


「特筆すべきこと?」


「持ち帰った物の中に見た事も無い実が有り、それを鉢に植えて育成したところ早くも5センチほどに育ちました。それ自体も驚きではあったのですが、その植物を育てさせていた者からの報告の中に見過ごす事の出来ない報告がありました」


ロマリエはじっとビルジットの目を見ながら語る。そして、ビルジットはそのロマリエの視線から只ならぬ気配を感じた。


「その植物の周辺で育てていた植物が、急激に成長、又は回復したそうです。そして、その状況に半信半疑ながらも品種改良をしようと持ち込んでいた麦の傍に置いた所、今にも枯れそうだった麦が持ち直したとの事です」


「な、なんと!」


ビルジットは報告のあまりの内容に驚きの声を上げ、それ以上の言葉を続ける事が出来なかった。


◆◆◆


ん?どうしたの?え?孫が遠くに行っちゃった?う~ん、わたし孫とリンク出来ないからいいや。

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