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1-29:73年目の冬が来ました。

誤字訂正しました。ご指摘ありがとうございます。

段々と気温が下がり、冬の到来を感じている樹です。

リスさんやクマさん達冬眠組は早々に巣穴に潜り込んで睡眠の準備です。

うらやましいですね!え?いつも寝てるじゃないかですか?

でも、ぬくぬく巣穴で御寝んねですよ?みんなで寄り添ってお団子ですよ?

わたしはいつも一人で寝てるんです。癒しがないのです!モフモフが欲しいのです!

いつかわたしも人になって、思いっきりモフモフを堪能したいです!

ほら、異世界で擬人化とか定番じゃないですか!・・・ん?あれ?わたしこの世界に来てから魔法って見た事ないですね。ほら、前の戦いでも弓、剣、牙、どこにも魔法の要素がなくないですか?

今更ですけど、この世界って魔法あるのでしょうか?

が~~~ん、もしかして大きな勘違いをしていたのでしょうか?

あ、でもわたしが実を作るのって自然じゃないですよね?任意で実を付けれますし。

わたしだけが規格外?うん、思いっきりありえる気がしました。


んんん?という事はうちの動物さん達あれがデフォですか?うわ!嫌すぎます。

ドヤ顔するウサギ、馬鹿にして鼻を鳴らす狼、すっごい嫌な世界ですね。

わたしきっと生まれてくる世界を間違えたんです!

もっときゃっきゃうふふしながらもふもふして、それで暖かくてほんわかでスヤスヤ寝れる世界に行くはずだったんです。

そんな事を妄想してたら、狼さんに蹴られました。

酷いです、わたしの何が悪いんでしょう?ただ搾取されるだけの樹生に疲れたんですよ。慰めてくれても良いような気がしませんか?

あれ?誰も聞いてくれないです。唯でさえ冬眠している子達が居ないのです、会話に付き合ってくれる人はまったくいなくなってしまいました。


むぅ、仕方がありません、子供達の所を見て回りましょう。

そう思って、カチカチ視線を切り替えます。

う~~ん、あれ?あれ何をしてるのかな?

森の外れに暮らし始めた人族さん達が何やら集まって作業をしていますね。

じ~~~~じ~~~~ズームですよ、良く見るのですよっと凝視して見てみると、おお!どうやら井戸を掘っているみたいですね。あそこの下に水脈があるのでしょうか?

まぁ人数が増えてきて水の確保が大変になってきたのでしょう。森を抜けた先の湖はまだ発見できてないですしね。子煩悩な狼さん達が鉄壁のガードをしいていますから。

それにしても、増えましたね。最初の家族が森の外に住み始めてからまだ2か月強という所なのに、すでに50名近い人の集落が出来ています。

どうやらいくつかの家族のようですね。でも、貴方達どこから来たのでしょうか?

そこ戦闘になりそうな場所ですよ?前に大勢人がお亡くなりになった場所ですよ?

そう声を掛けてあげたいのですが、わたし声でないですもんね。


あと、この人達森の奥へと入ってこないのですよね。だからわたしから実を直接渡せないんです。くぅぅ、おっさんはいらないので、子供だけでも来ないですかね?見たところ5名くらい子供がいるんですけど。

くぅ、しもべたちに裏切られたわたしにはもう手は残されていないのでしょうか?

いえ、まだです!諦めたらそこですべて終わりだと、きっとどこかの偉い人も言ってます。

どうにかしてエルフっ子と鬼っ子を増産してやるんです!


◆◆◆


魔の森と呼ばれる場所へ到着して、私達家族は軍隊が打ち捨てていったと思われるテントをなんとか修復し、そこで一夜を明かした。

妻と交代で周囲を警戒しながらの予定であったのだが、疲れ果てていた私達は気が付いたら皆爆睡し朝を迎えてしまった。

よくあの時魔物に襲われなかったものだと背筋を凍らせたものだ。


その後、ほぼ食料の尽きていた私達は、皆揃って恐る恐る森の中へと入って行った。

そして、私達は我が目を疑う光景を見た。

実りの秋、そんな言葉を実感した事はいつ以来であろうか?森の入り口周辺にまず茸の群生を発見した。

しかし未知の場所に生えている茸だ、毒があるかもしれない。そう思いながらも食糧不足の為幾度となく山へと分け入っていた私にとって、この茸は実に見慣れた種類であった。ただ、私が知っている物に比べ遥かに大きく、瑞々しくはあったが。

そして、その後も柿、栗、驚いたことに林檎まであった。

ありえない!そんな言葉が思わず口をついて出る。しかし、子供達は喜び勇んでそれらの果実を集め始める。そして、その果実の御蔭で私達家族はどうにか命を繋ぐことが出来たのだ。


その後2カ月余りの日数の中で、我々以外に4組の家族がこの場所へとやって来た。彼らも同様に村を捨て、僅かな希望を持ってこの地に渡ってきた者達だった。


後から来た狩人をしていたという者が、我々の忠告を無視してウサギを狩ろうとして大怪我を負った。命は取り留めたものの、ウサギに蹴り飛ばされた際に身を守ろうとして両腕を骨折したのだ。

彼がいうには有り得ない力と速度だったという事だ。この事から私達は森の奥へと行く事はしない事になった。

ただ、我々が難儀したのは水の確保であった。木の実で得られる水分などしれている。その為、水源確保に必死になった。森に入らない範囲で探索をすれども一向に水場が見つからない。


そのまま雨を望む苦しい状況が続くが、この後になんと水士の家族がやって来たのだ。

今、我々は井戸を掘っている。この井戸が完成すればこの場所に暮らす大きな一歩となる事だろう。

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