1-28:73年目の秋は深まるばかりです
誤字訂正しました。ご指摘ありがとうございます。
豊かな実りの秋ですよ、馬肥ゆる秋、思わず歌いだしそうな樹です。
空もいつもより高く感じますよね、空気が澄んでいるからでしょうか?不思議ですね。
前世で何か理由を聞いた気がしますけど、残念ですけどまったく覚えてません。
73年以上前の事ですからね。もううろ覚えに近い知識が沢山あります。
内政強い、内政チートなんてもう無理ですね。
そもそも、内政しようにもわたし樹なんですけどね。
会話も出来ない、歩けない、そもそも人じゃないですし、内政する場所も無いですし、いったい何重苦なのでしょうか?あ、苦ではないですかね、ある意味面倒な事をやらなくて良いですし、楽?
ご飯も根っこからの水と酸素なんですよね?実感あんまり湧かないんですけど。
それこそ意識せずに生きてますから、枝も葉っぱも勝手に伸びますしね。
唯一出来るのが実を付ける事ですけど、最近はこれも自然に任せています。
変な実が出来たら怖いですもんね、気を付けないとそのうち・・・あ、駄目です。何かこれ以上考えちゃいけない気がしてきました。
とにかく、実りの秋です!
今年も木の実がいっぱいです。前世のリンゴや栗みたいな実もあります。リンゴってやっぱり木の実でいいのですよね?木の実と言ってリンゴや梨、みかんなんかがイメージ出来ないです。
ぎりぎり柿はOKですか?ドングリ、椎の実なんかはそのまんま木の実なんですけどね。
あ、なんか又脱線してる気がします。
えっと、そういえば森に住む人族が増えました。
先日に渡り鳥さんが言ってた人族が草原に何か住み着いてます。
ほら、軍隊が置いてった板とか毛布とか残ってた物で家を作ったみたいですね。
食べ物はみんなが珍しがって食べちゃってましたから、でも今は秋ですから食べ物はなんとでもなるかな?
その後も少しずつ人が増え始めてるみたいなんですけど、皆さんはあんまり気にしてないみたいです。
あ、ちなみに襲わないの?って聞いたら、相変わらず不味いから嫌、食べるお肉ないよ?など皆さんから不評なのです。ところで、なんか不味そうでは無く不味いですか、実体験ですね、あ、戦争の時ですね、そうですか、これ以上聞かない方が良さそうですね。
ただ、相変わらず罠外し?嵌め?ゲームは続いているみたいです。
でも、あの人達うちの森のウサギさんや鳥さんを捕まえようとしてますけど無理っぽいですよね。
なんか最近はウサギさん達に襲われてますから。うちのウサギさん達強いですからね、時々あの後ろ足で蹴られて吹っ飛ぶ大型猫さんも見ますし。もうウサギじゃないですよね、あれは。では何かと言われると困りますけど。
っという事で、さっそくわたしの実験を開始ですよ!
え?唐突ですか?前から言ってるじゃないですか、エルフっ子や鬼っ子増産計画ですよ!
ほら、今エルフっ子は一人ですし、寂しいですよね?もちろんわたしがですけど。本人はあんまり気にせずみんなと遊んでますよ?
とにかく、リスさんに頼んでわたしの実をこっそり届けてもらいます。
ふふふ、リスさんお願いしますね。
・・・・あれ?リスさん、そこは貴方の巣ですよね?持って行って欲しいのは人族のお家ですよ?
え?美味しそうですか、それはもちろんわたしの実ですから美味しいに決まってます。
あ、あ、何で穴を掘って隠してるんですか?これは自分のですか?あれ?おや?なんかリスさんに強奪されてしまいました。
う~~ん、美味しそうなわたしの実が悪いのですね!
ってそうじゃないんですよ!これじゃぜんぜん計画が進まないのです!お願いですから実を人族の所にこっそり持ってってください!
その後、ネズミさん、ウサギさん、ウシさん、狼さんその他近くに来られた方皆さんに同様のお願いをしたのですが、みんな皆さんの巣の中か、それかお腹の中に消えていきました。
うわ~~~ん、みなさん食い意地が張りすぎです!どうしてお願いを聞いてくれないのですか!
またもや挫折の味を知ってしまいました。
◆◆◆
俺はゾットル、キリア王国で探索者としてそこそこには名を知られていると自負している。
そして、俺の仲間であるロイド、ハインツ、サバラス、アンジェ彼らと組んだ俺たちPTにとっては噂の魔の森における生体調査など簡単な仕事のはずだった。
当初、言われていた魔物からの襲撃を注意していたが、まったくと言って良いほど魔物と遭遇する事も無く、魔物の存在すら疑わしいと思い始めていた。
そんな時、野生動物捕獲における専門家と言っても良いサバラスがウサギを発見した。
「いたぞ、事前情報通り角付だ」
その言葉に、全員がサバラスの指差す方向を見る。
「どうだ、仕留められそうか?」
「無理ね、この距離では当たったとしても致命傷にはならないわ、逃げられて終わりね」
アンジェの言葉に頷き、気配を消して近づくよう指示を出す。しかし、ウサギはこちらに気がついたのか早々に自分達と反対方向へと逃げてしまった。
「残念だな、肉はしばらくお預けか」
そう苦笑を浮かべながらも周囲への警戒を強める。この森へ入る前のおそらくフランツ王国軍の宿営地の惨状、そして今の魔物の姿。改めてここが普通の森では無い事を認識するのだった。
そして、ここからがある意味彼らと魔物達の戦いが始まる。
「くそ!駄目だ、捕獲は諦めよう。これ以上ここで時間を無駄にするわけにはいかん」
ゾットル達がこの森の調査に入ってからすでに一月が過ぎようとしていた。
幸いなことに食料はこの森で確保することは出来た。悔しいことに植物限定では合ったが。
仕掛ける罠、仕掛ける罠、すべてが無効化される、そして、それどころか此方側が逆に罠に掛かる。
そんな事が幾度も続き、ついに動物の捕獲断念を決定したのだった。
そして、ひとまず国に情報を持ち帰る事を優先することにした。
幸いにして、自分達が今まで見たこともない植物や、その実を採取する事はできたのだ。
「わかった。それであれば急ごう、まさか追ってくる事はないと思うが魔物達の行動が読めん」
「そうね、ここ最近は私達完全に遊ばれていたわ」
「急がねば危険だ」
決断した後、彼らの行動は迅速であった。そして、動物達は彼らが森を去った事に気がついた時にはもう手遅れと成っていた。そのため、遊び仲間が居なくなってしまった事を大いに嘆いたのであった。
その事をゾットル達が知らなかったのは幸いであったのだろうが。