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3-61:お酒は夢を運んでくるのです?

「ピカ~~~!ゴロゴロゴロ~~~~!稲光が窓から差しこみ、少女の横顔を怪しく浮き立たせたのでした。ぬふふふ」


ぬふふ~、せっかく作ったお薬を無駄にするなんてとても出来なかったので、ちょっと手を加えている所なのです。なぜかボコボコ泡立っていたお薬を、ゆっくりと布を通して濾し、不純物を取り除いている所でちょっと雰囲気作りをしてみましたよ。


「大きなお鍋でぐつぐつしたらもっと雰囲気出るのになぁ」


まだ一人で勝手にお台所は使用させてくれません。そのせいで煮込むとか、煎じるとかは一人では出来ないのです。


「明日の会議に間に合わせないとだもんね!頑張らないとなのです」


亜人さん恐怖症を克服できれば未来は明るいのです。ミシェルちゃん達だって克服出来たんだし、効果は解っているんですから同じものを作れば良い事は解っているんですが、せっかく新たな可能性が見えたんですよね。そのままにしておくのは勿体ないのです。


「香りからしてこれは絶対発酵してるのですよね?ちょっとアルコール?お酒?っぽい薫りがしますもん」


薬草さんに糖質が含まれていたのでしょうか?ほら、お酒って穀物や果実の糖が発酵分解されて出来るんでしたよね?博識なイツキちゃんはちゃんとそういう知識を持っているのです。それにもしこのお薬が実はお酒だったりしたら、きっと引く手あまたになると思いませんか?

大人の人はみんなお酒が大好きですよね?お酒を飲んだ記憶って無いのでよく解らないですけど、知識ではちゃんと知っているんです。

そしてこれは私の野望に大きく弾みを付ける事になるんじゃないでしょうか?


くんくん、くんくん


「うん、アルコールっぽい薫りがするよね、これってお酒だよね?」


香りを再度確認しますよ。あの泡立っていた現象も布で濾した事で今はちょっと紫色の液体に変身です!

カクテルですか?そんな感じで美味しそう、なんでしょうか?ジュースだったら絶対飲みたくない色ですね。つい好奇心で濾しとった布の中を見ると・・・・・・うん、このまま丸めて縛って捨てましょう。

見なかった事にしましょう。何かよく解らないドロドロしたものが動いている様に見えたんだけどきっと気のせいなのです。


「う~ん、香りは悪くないかな、でも絶対味見はしたくないし、子供だからお酒の味は解んないし、う~~~でも誰かで試さないと?」


そう言いながらも身内でのテストは躊躇われるのです。このお酒でお父さんが体調を壊したりしたらって考えたくも無いのです。え?お母さんですか?お母さんでお試し何か絶対しませんよ?


「そもそも亜人さん耐性薬だから亜人さんで試す訳にはいかないし、既に耐性がある人だと意味が無いし、できれば大人で試したい」


そうすると誰に耐性が有って、誰が無いのか情報が無いのです。


「う~~~ん、何かあったら怖いし、私ってばれない様にやらないとだし?」


試した後に責任問題になっても嫌なのです。これは思いもよらない所で問題が発覚しました。

あと、そもそも亜人さんに耐性ない人が飲んでも効果が出たか解らないと意味が無いのかな?悩みどころなのです。


「う~~ん、自分が欲しいと思わなかったから考えもしなかったけどお酒造りって結構定番チートだよね。薬草さん酒?一応果実酒?あれ?薬草さんは果実?」


薬草さんを見ると、相変わらずニパッ!ニパッ!っと笑顔100点満点なのです。


「これが売れたら・・・・・・」


ゴリゴリ薬草さんを磨り潰す日々?あ、でも果実酒って磨り潰すんだっけ?そんな事を思って視線を彷徨わせていたら、なぜか部屋から薬草さんがいなくなっていました。本能ってすごいですね。


「そっか、お酒って考えれば耐性関係無いのかな?」


あくまでも新しいお酒が出来たって思えば良い?この世界のお酒事情は解んないけど、お米とか麦とかの供給に苦労しているくらいだからお酒は貴重品だと思う。

蒸留器も作って貰おうかな、蒸留すれば消毒薬も作れるんだよね。あ、薬草さんだけでなくジャガイモさんでも作れるのかな?あれ?サツマイモさんじゃないと駄目だったのかな?

今後の事をしばらく考えてたんだけど、だんだん眠気が勝って来ます。


「サツマイモさんも作ればいいのかな?う~~ん、でも何かすごいかも?お酒でまたお金持ち?・・・・・・とにかくあとは明日考えるのです。今日はもう寝るのです」


もう目がショボショボしてるんです。じっとして考え事してると眠くなるのです。

お外もとっくに真っ暗になってるんです。え?雷ですか、あれはイツキちゃん効果音なのです。雰囲気は大事なのです。

テーブルの上のランプを消して、もぞもぞとベットに潜りこむとあっという間に夢の国へ旅立ちました。


で、で、気が付けばもう朝なのです。むぅ、なんかすっごい損した気分なのです。あ、まだ寝れるっていう贅沢感が欲しいのですが、最近は損した気分が多いのでちょっと悔しいイツキちゃん。


「イツキ、もぞもぞしていないで早くご飯食べなさい!学校に遅れるぞ」


「は~~い、ちゃんと起きた~~~」


畑仕事で朝が早いお父さんがヌクヌクお布団を無情にも剥ぎ取って行きます。う~~目をショボショボさせながらお台所へ向かいます。そこでお母さんからお水を貰って顔をパシャパシャ洗い、用意されていた蒸かしたジャガイモさんを食べて学校へ向かいます。


ただ、この時私は眠気との戦いでぜんぜん気が付かなかったのです。確かに寝る前にお部屋のテーブルに置かれていたはずのお酒の壜が無くなっていた事に。


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