1-24:72年目本格的に冬到来する前に
誤字訂正しました。ご指摘ありがとうございます。
少しずつ気温が低下していくのを感じる樹です。
朝方の寒さに身が竦むようになってきましたね。
わたしも、モコモコ樹皮さんを作って温かくしようとするのですが・・・なんで皆さん作る傍から剥がしていくんですか!
リスさん、ひどいですよ!え?これ冬に温かいのですか、そうですか、でもそれ剥がされるとわたしが寒いのです!え?がんばれ?ちょっとそれ酷くないですか?
オオワシさん!うんうんって頷きながらも自分も剥がしてますよね?
っていうか貴方今戦闘指揮の真っ最中じゃないですか!え?嫁に頼まれた?それは仕方ないですね。
んん?あ、エルフっ子さんも鬼っ子さんも動物さん達の行動に影響されてるじゃないですか!
あ、それは食べれませんよ!それは防寒具ですよ!
何が何やらてんてこ舞いです。冬の支度が整わないじゃないですか~~~
わたしがそんな事を言っていると、およ?ミツバチさんどうされました?
え?そろそろ皆さん巣から出てこれなくなる?
あ、活動可能な気温じゃなくなってきたんですね。
蜂力?ですけど巣の中は快適温度ですからね。働き蜂さんが体を震わせて温度を上げて、日差しなどで温かくなりすぎたら今度は外気を取り入れて温度を下げる。すごいですね、蜂さん達真面目にすごいです。
え?あ、はい、そうですね、お願いできればありがたいですね。でも気を付けてくださいね。
何かミツバチさん達が巣篭りする前に攻撃してきてる人達を一斉に攻撃してくれるそうです。
この世界のミツバチさんって針を刺しても死なないのです。それに、毒も強力だそうです。
今の時期、働き蜂さんが少ないとみなさん揃って凍死されちゃうので、一当てくらいしか出来ないそうですが。更には、この気温ですので日差しのある日中限定との事ですので、一塊になるのではなく分散して奇襲する方が効果が有りますかね?
という事で、今まさにミツバチさんの奇襲攻撃作戦が開始されます。
他の方達との共同作戦も考えたのですが、日中での作戦となる為に残念ながら戦果を見て追撃するかの判断をする事にしました。
森中にいるハチさん達が草の中を静かに前進します。
相手は陣地で煙が上がり始めている事から、お昼ご飯の準備中ですか?この世界の人達はどんな物を食べているのでしょう?
あ、そういえば是まで数回行われた戦闘で、死んでしまった動物さん達も嬉々として集めてましたね。
ご飯ですが、お肉ですか、うんまぁ仕方がないといえば仕方がないですね。
他人に食い物にされる世知辛い世の中になってしまいましたね。
わたしが世の悲哀を嘆いていると、どうやら作戦が始まったようです。
おお!見ていてある意味すごいですね。相手の拠点周辺からまるで黒い絨毯が湧き出て、一気に拠点の中を満たしていきます。
あ、何か叫び声や悲鳴が聞こえますね。あ、火の手が上がりました。お鍋をひっくり返しちゃったのでしょうか?
おお、その後黒い絨毯はすぐに拠点から出てきて森へと帰っていきます。
ズームで見てみると結構酷い事になっていそうです。転げまわっている人もいますし、ピクピク痙攣している人もいます。アナフィラキーショックでも出ましたか?あれってミツバチで起きるのでしたっけ?
わたしが様子を確認していると、突然ズームの視界外から大型猫さんが飛び込んできて吃驚しました。
うわ~~大型猫さんと狼さんがここぞとばかりに乱入してます。ってうわ~~森から一斉にウシさんを先頭にクマさん他皆さんが飛び出していきました。
あ、一斉攻撃ですね、オオワシさん率いる航空隊も突撃です。ここで決める気ですか?
正面の障害が突き崩されていきます。クマさんはっするです。
ネズミさん、リスさん、貴方達戦闘そっちのけで食料漁ってません?
決まりましたね、人族さん総崩れです。あ、さっきまで大きな声上げてた人がいませんね。倒されちゃったのでしょうか?
では、今回の戦闘の総評です。
人族さん、いくら動物さん達だからって油断しすぎです。今までが夜襲メインだったからといって、お昼時だからといって鎧を着ている人も少なすぎです。まぁ鎧着ていたからってどうかなったかは不明ですけど。
◆◆◆
オコーナーは今必死に逃げていた。
早くこの草原地帯を抜けなければ、そればかりが頭に過る。
自分の周りでも多数の者達が同様に武器すら持たず走っている。誰もが同じ思いでいた。
今回の遠征を甘く見すぎていたのだ。たかが動物、それぞれ各個撃破していけば良い。重装歩兵によってすぐに蹂躙され、この豊かな地が自分達の物になる。
今回の作戦に参加している者達は、優先的に移住権を得られる。そんな噂すら流れていた。
その為、皆の士気は非常に高かった。それなのに、今自分達は必死に逃げているのだ。
豊かな大地で家族みんなで畑を耕す。子供達に囲まれ、実りに感謝して穏やかに暮らす。そんな未来を心の中で描いていた。それが、なぜこんな事に!
今の状況に対する怒りが心の中に渦巻いていく。
しかし、そんな怒りも自分の隣を走っていた者が突然倒れた事で恐怖に変わる。
咄嗟に見たその視線の先には大地に倒れて踠く男と、その足に絡まる大きな蛇の姿があった。
「へ、蛇だ!毒蛇だ!」
知らず知らずに叫び声を上げていた。そして、あちらこちらで悲鳴や同様の叫び声が聞こえ始める。
「う、うわ~~~~」
オコーナーは未だ強く握りしめていた槍を振り回しながら今まで以上に速度を上げ走り出した。
そして、幸いにも彼は無事に草原を走り抜ける事が出来た。
しかし、彼の苦難は此処からが本番である事にまだ気が付いていない。
本国への長い道のり、その間の食事や飲み物を彼はまったく持ってくることが出来なかったのだから。