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3-26:イツキちゃんピンチ!

周りの子供達からじっと凝視されています。すっごく居心地が悪いと言うか、ちょっと不味いかも?

私のスペシャルビューティフォーの美貌が仇になっちゃう?もしかして売られちゃう?ともかく、この沈黙が怖いのですが、こちらから何を話せば良いのか判断がつかないのです。

そんな中、リーダーと呼ばれた男の子が口を開きました。


「あ~~、どうすっかな。ここに連れて来ちまったしな」


「う~んと、とにかくこれ分配しない?」


リーダーの発言で漸くみんなの視線が私から離れ、リーダー以外の興味はさきほどの食料に集中しているみたいです。まぁ私が何かしても体格差でどうとでもなると思われているのかもしれませんけど。


「そうだな、リンジーの所へも行かないとだし、まずは分配するか」


お?私からみんなの注意が外れました。こ、これはもしかしてチャンスかな?

そう思ってジリジリと出口へと移動しようとしたのですが、リーダーさんの言葉で断念しました。


「おい、出てくのは簡単いいが、お前ひとりでこの辺うろ付いたら二度と表の世界には帰れないぞ」


「ほぇ?」


「だてにこの辺がスラムじゃないってことだ。良くて人攫いに売られる。最悪は食われるな、まじもんで食料としてな」


「た、食べられちゃうっていうか、人を食べるのですか!」


「あ~~、あたしらでも危険な時は危険だからな」


「俺らでも一人じゃ絶対外歩かねぇ」


「死にたくないもんね」


割と軽い感じで皆が発言しますが、内容が思っていた以上に怖いのです。


「ま、表通りまでなら送ってやるから待ってろ」


リーダーさんがそう言いながら、手早く戦利品?を分配していきます。

私は黙ってそれを見ているしか無いのです。だってさ、それ以外どうしろって言うのです?薬草さんかジャガイモさん来てくれないでしょうか?


「よし、これで文句ないな。ここに入るのを見られているかもしれないからな。何時もの所で集合だぞ、俺はこいつを送ってくる」


「「「「はい!」」」」


そう言うと、子供達は持っていたカバンにそれぞれの分配品を大事そうに入れて、みんな揃ってこの家の奥へと向かいます。そうしたら、裏にも出入り口がありました。


「どうだ?誰か居そうか?」


「う~~ん、大丈夫だと思う。どう?」


「うん、誰か見張ってる感じはしないよ」


「よし、大丈夫そうだな、気を付けていけよ」


「「「「はい!」」」」


子供達は扉の横のひび割れから外を覗って、安全を確認した後に扉を開けて出来るだけ音がしない様に出て行きました。周りへの警戒もしっかりしてるっぽいです。で、私はと言うとなぜかリーダーさんがまだ動かないのでお家の中です。


「よし、あんた市場にいたんだから金持ってるだろ?表通りまでの案内料と護衛代くれ」


「え?え?なんで?」


リーダーさんがよく解らない事を言い始めましたよ?ここまで勝手につれて来たのに案内料と護衛代って何を言っているのかよく解んないのですが?


「お前馬鹿か?こっから表通りに行くのに、お前ひとりでは無理だ。お前両親はいるのか?」


突然両親の話をされて、訳が解らないなりに頷きました。


「そっか、なら二度と両親に会えなくなってもいいのか?」


私の頷きに対し、淡々と無表情にリーダーさんは話します。でも、お母さんとお父さんにもう二度と会得ない、その事を想像した途端に途轍もない悲しさが全身に広がって生きました。


「あぅ、うぇ、ぇ」


目から涙がぽろぽろと零れ、それでも次々に溢れだします。

そんな私の頭をぽんぽんとリーダーさんは叩き、私の目線に合せるように屈みました。


「な、嫌だろ?だから俺が表通りまで連れてってやるんだ。俺だって危険なんだが、お前の為に表通りまで行くんだぞ。俺って優しいよな」


リーダーさんは私に解るようにゆっくりと、そして穏やかに話してくれます。


「ほら、だからさ、お金だしな」


そう言われて私は腰に着けていた巾着を取り出して、そこからお金を取りだして渡しました。


「お、よしよし、おお、大銅貨2枚もあるな。まぁこんなけ貰っちまったら仕方がねぇな着いてこいよ」


まだ涙が溢れてよく解んなくなっている私の手を掴んで、リーダーさんは早足で歩きはじめます。

私はリーダーさんの歩く速度がちょっと速くて小走りに近い感じになっていました。


「お前さ、これからは一人で市場とか行くの止めろよ。後で後悔したって遅いんだからな」


周りをキョロキョロしながら歩くリーダーさんは、私に視線を向けることなく、それでも私に語りかけてきました。私はそのリーダーさんのそんな横顔を見ますけど、そこには何の感情も見る事が出来ません。

そして、しばらく歩いてちょっと疲れて来た時、視線の先に表通りっぽい人混みのある道が見えました。

安堵に思わずしゃがみ込みそうになる私の腕を牽いて、リーダーさんは歩きますが、あと少しという所で立ち止まってしまいました。


「???」


あれ?行かないの?そう思ってリーダーさんを見上げると、非常に厳しい表情を浮かべています。そして、今まで歩いてきた方向へと視線を向けるので、わたしもそちらへと視線を向けると、後ろから大人の、あ、この人は駄目だって感じの汚いおじさんが歩いてくるのです。で、慌てて視線を前に向けると、その前には二人の似た感じの汚いおじさんが立ちふさがっていました。


「ち、やべぇな。どっかで見られたか?」


リーダーさんはそう言うと私の手を放して今まで気が付かなかった腰の後ろに着けていたナイフを引き抜きました。突然の状況変化に私はついていく事が出来ずに、オロオロと前後の汚い男達を見ます。


「おい、行けると思ったら表通りまで思いっきり声を出して走れ!奴らに捕まるんじゃないぞ」


小声でそう告げるリーダーさんですが、まるでその言葉が聞こえていた様に男二人は狭い路地を塞ぐようにしてこちらへとゆっくりとやって来ます。


「おい、小僧、そのガキを置いてくならお前は見逃してやる。俺達も無駄な怪我はしたくねぇからな」


「そうだぜ、お前だって無駄に危険を冒すつもりはないだろ?俺達と敵対するなら今後ずっと狙われるかもしれねぇしなぁ」


そう言って何か思いっきり下品な笑い声を立てます。

この段階になって漸く、私は自分が今置かれている状況を理解しました。そして、リーダーさんへと視線を向けます。


「ああ、悪いな、俺さ、餓鬼を食い物にする大人って奴が大っ嫌いなんだわ、っと、それチビ、走れ!」


そう言うとリーダーさんは目の前に来ている男の一人へと体当たりをするようにしてナイフを突き出しました。


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