3-20:お引越しです
新しいお屋敷に引っ越すのにそれから2週間かかりました。
修繕しないとダメな場所が壁とか、屋根とか結構あって、そこを直しながら部屋にあるベットとか、カーテンとか、とにかく、今までのお家にあった物だけでは全然数が足りないので。
ネズミさん追い出し計画も、野良猫を飼おうとしたら街に野良猫さんがぜんぜん居なかったのです!え?なんで?って思ったら、そもそも餌が少ない、あと野良猫さん自体が捕食対象らしいのです。
「え?猫さん食べちゃうのですか?」
「そうねぇ、食べ物が少ない時に目の前に猫さんが歩いてるとって思うと、しょうがないかな?ってお母さん思っちゃうの」
なんと!無情な世の中なのです。でも、そのせいでこの街ではネズミさんが比較的多いそうなのですが、これって疫病フラグ立ってませんか?すっごい心配なのですが。
「市場で売ってるから買って来よう」
という事で、お父さんが市場で雄一匹、雌二匹の子猫さんを買って来てくれました。でも、この猫さん達も実は食用で販売されていたそうなのです。
「我が家にこれてよかったね~」
頭を撫でながらそう言うと、なぜか手に爪を立ててガジガジ噛まれました・・・解せぬ。
「子猫を屋敷に放す前に、薬団子で一応ネズミ退治をしているが、どこまで効果があるかだな」
「おとうちゃま、ネズミさんが居なくなったかは薬草さんに聞けばいいよ」
そうなのです。あの後、薬草さんがなぜお屋敷に入らなかったのかを確認したら、ネズミがいるからだったのです。薬草さんは特にこれと言った防衛手段を持っていないので、ネズミに襲われたら終わっちゃうそうで、だからネズミさんに対してすっごく感?が働くらしいです。それで、あ、ここネズミが居る!ってなって入れなかったって言ってました。
「ああ、あと八百屋のトムさんの紹介で、住み込みで屋敷の雑用をしてくれる家族が見つかったぞ」
「あら、そうすると純人族の方ね」
「ああ、夫婦と、イツキくらいの男の子と女の子がいるから、良い友達になれると良いな」
お父さんがそう言って私の頭をポンポンします。う~~む、同じくらいの子供ですか、ちょっとプレッシャーがかかりますね。同じ学校に行っている子かな?でも、特に学校ではそんな話が出ていなかったから違うかな?
「屋敷の警護は亜人の人をお願いしているが、これはちょっと時間が掛かりそうだ。領主様伝いでも探してくださっているから移住までには見つかると思うが」
やはり純人族に仕えるという事に抵抗があるのかな?お給料は相場を聞いているので安くも高くも無いと思うのだけど、それでも中々決まらないそうです。そもそも、亜人さん達はお互いに相手の感情を察する事が出来るので、逆に察する事の出来ない純人族との交流は苦手らしいですし。
「ウニャ~~」「ウニ~~~」「ミャウ!」
私達の会話そっちのけで子猫さん達はドタバタ走り回っていますね。さっきまで私の手をガジガジしていた子も、今は他の子猫さんにジャレついています。でも、この子達の躾もしないと部屋の中が日に日にボロボロになっていくのですけど・・・。
で、気が付けばお引越しの日になってました。薬草さんも敷地へとトテトテ入っていくので、ネズミさんもお引越ししてくれたようです?どこかでお亡くなりになっているのかも知れませんが、まぁそれならそれでです。
「「「「ご主人様、これから宜しくお願いします!」」」」
おお、玄関の前にこれから我が家のお世話をしてくれるピーターさん一家がお出迎えしてくれます。
残念ながらセバスチャンではありませんでした!で、ピーターさんの所の男の子と女の子はチロチロっと私を観察しているみたいで、ここはお嬢様らしくしないとなのです。
「ああ、ピーターさん、これからお願いしますね。そちらがお子さんかな?」
「はい、長男のアランと長女のエリスです。それと、先日御挨拶させていただいている女房のアンナです。これから宜しくお願いします」
「「「お願いします」」」
ピーターさん達が一斉に頭を下げます。うん、手持無沙汰なのですよ?ここはカーテシーでもしてみせる所でしょうか?そんな事を考えている間に、お父さんがさっさと私達の紹介をしてしまった為、私もペコリとお辞儀をするだけで終わってしまいました。むぅ、せっかく色々考えていたのに台無しです。
「ここに立っていても仕方がありませんから、まずは家に入りましょう」
「あ、申し訳ありません。どうぞ、こちらに」
ピーターさんが慌てて中へと案内してくれます。改装され始めてから私はまだ中を見た事が無いのですよね。外観は所々修繕の跡が見えますね。全面塗り直しとかはしなかったみたいです。で、中を見るとうん、埃が無くなってるけど、大きく変わっては無い?依然とどことなく薄暗い感じがします。
なんかあれな雰囲気がするんですよね、なんでこんなに薄暗いのでしょう?
周りをキョロキョロ見回すと、窓があるのはあるのですが、小さすぎるのと、擦りガラスなのです。もしくは汚れていてそう見えるのかもしれませんが、扉の上の方にあるので掃除をするとなると大変そう。
「此方でお寛ぎ下さい。すぐにお茶のご用意をいたします」
私達をリビングに案内すると、ピーターさん達は退出してっちゃいました。でも、何かすっごい慣れない感じで居心地が悪いのです。
「何か戸惑っちゃうわねぇ、何をすれば良いのかしら?」
「そうだなぁ、家の雑事はピーターさん達にお任せする事になるが、そうすると私達は何をするかだな」
「畑仕事はどうするの?」
「ああ、畑仕事はするぞ?あれが我が家の収入源だからな」
「そうねぇ、ただ貰えるお金に頼っちゃうと駄目になっちゃうものね」
うん、さすが我が両親ですね。私だったら働かなくて良いなら引き籠っちゃうかも?食っちゃ寝が出来るのですよ?それなのに敢えて働くの?って思っちゃいます。でも、それはそれとして新しい生活に慣れるのが大変そうです。
「おかあちゃま、お屋敷の中をもう一回探検しよ?」
「ふふふ、そうね。あ、あと猫ちゃん達を放してあげないとね」
あ、そうだった。猫ちゃん達を入れた籠を手元に持ってきます。うん、ニャ~~ニャ~~鳴いてます。
でも、ここで出したら駄目だよね?そうすると猫ちゃん達の部屋も決めないとかな?
「猫ちゃんのお部屋を決めないと?」
「そうねぇ、出来るなら放し飼いが良いのかもだけど、お外に出ちゃうと危険よね」
お母さんが頬に手を当ててコクンと首を傾げます。でも、そうだよね、お外に出ちゃうと捕まって食べられちゃうかもだよね。何か考えないとです。
「ああ、午後にこの家の警護をしてくれる人達が来るから」
「は~~~い」
返事を返しながら、お母さんと手を取り合ってお屋敷探索へと出発しました。あ、猫さんの籠もお母さんが持ってくれてますよ。




