3-11:無実の証明は終わったのです!
先生達に何故か別室へと連れてこられました。
その別室に入ってから、悲壮な表情で先生が何か手紙を書いていますが、どうしたのかな?
「あ~~、イツキ君だったかな。一応説明をさせて戴きたいが良いかな?」
何かこういう場に隔離されるとプレッシャーが凄いのです。しかし、そんな物には負けないですよ!
じっと御爺さんを睨みながら、私は話の続きを促しました。
「ハッピーフラワーは過去に生まれた植物なのだ。寄生先は人、魔物を問わず、そして寄生された生き物はかつてない幸福感に包まれる。それ故にハッピーフラワーと名付けられた。しかし、そこには大きな落とし穴があっての、幸福感に包まれ、何もする気が起きず、動く事も、食事する事すら厭い、次第に窶れ、最後には死ぬ。そんな事例が相次いでな、ただ無理に引き離せばその幸福感を求め暴れたり、場合によっては自死したりとな、社会復帰すら厳しい、それ故に第一種危険植物に認定されたのだ」
「ほへぇ~~~~~~~」
余りの内容にドン引きです。なんですかその植物は!美味しい物を食べる事すら面倒なのですか!しかも依存性バリバリ?下手したら禁断症状もあるのです?それは皆さんが恐れても仕方がないと思うのですが。
「どうだね、我々が此処まで危険視しているのも解るであろう?その花をこちらに渡しては貰えないかね」
机の上に置かれた鉢植え向日葵さんを見ながら御爺さんはそう言いますが、今の話を聞いて明らかに同じ花では無いと私は理解出来ました。それ故に、もし渡してしまったら無実の罪で向日葵さんは殺されるかもしれないのです。それは生み出した責任において許容できないのです!
「この向日葵さんはそのハッピーフラワーとは違いますよ?だって昨日頭に乗っけてたけどそんな幸福感は無かったのです」
うん、筋肉痛は緩和されてたけど、頭に乗っけていてそれで幸せなんて思わなかったのです。ましてや、向日葵さんを求めて暴れたり、徘徊したりなどもってのほかですよ?ついでに、美味しい物は美味しく食べたいのです。
「なんと!この花を頭に乗っけていたというのですか?」
驚愕の表情とはこういう表情なのかっと思う表情で皆さん驚いていますが、手紙は早く書き終えてくださいね先生、話が進まないですから。
このまま、自分の体でテストしないで良くなると良いなぁって感じでこっちを見ているのですが、世の中そんなに甘くないのです。
「ともかく、まずは先生で試してみれば良いのです!」
ビシッ!と言い切る私に、先生は涙目です。何でしょう、まるで私が苛めているようではないですか。
言い出したのはこの御爺さんですからね!間違えないでくださいね!
「ふむ、致し方ない。どうだね、そろそろ良いかな?」
「ほ、本当にやるのですか?」
指を組んで拝むような姿で御爺さんを見る先生ですが、その姿は若い女の子がしないと効果はない様な気がするのですよ?
「致し方なかろう、我々の誰もハッピーフラワーの実物を見た事が無い。まぁ我々どころか、実物を見た事の有る者など世界中でも今や限られていると思うがの」
そう告げると、御爺さんが私に目くばせをします。そして、私は鉢植えを手に先生へと近づきます。
「イツキちゃん、ほ、本当に大丈夫なのよね?先生信じてるからね。先生は、まだ結婚もしてないんだからね!」
「なんと!それは重要な事なのです!でも、そうすると先程のお手紙のあて名はどなたなのです?」
「両親にです。先立つ不孝を謝っていたのです」
うん、失礼ですね。それではまるでこれからお空高くへ旅立つようではないですか。
「大丈夫なのです。すでに経験しているイツキちゃんが保証するのです。経験者は語るのです!ではちゃっちゃと行うのです。時間は押しているのです!」
いい加減ジレジレしていた私は、鉢植えの向日葵さんを持って、先生の頭の横に置きました。そして、向日葵さんはスルスルと先生の頭の上でニッコリニパニパ笑顔で花を咲かせたのです。
「「「どうだね(なんです)?」」」
皆が先生に尋ねますが、先生は何の反応もしません。可笑しいなって思って先生を見たら・・・白目を剥いていらっしゃいます?
「これって向日葵さんのせい?」
向日葵さんが必死に首?を横に振っています。ついでに葉っぱも違う違うと振ってます。
「これは、緊張に耐えられなかったようだな」
お爺ちゃんがそう告げましたが、これでは効果が解らない?
「とりあえず起さない事には・・・」
救護室の先生が、ポケットから何か壜を出して、その蓋を開けて先生の鼻の下に持って行きました。
「うぇ、ゴホッ、ゴホゴホッ」
「起きましたね」
「起きたな」
「ですね」
「気付けの薬ですから」
救護室の先生が何気に無表情なのが怖いですね。あれはアンモニアでしょうか?
「しかし、この気付けは効果があるのですね。ふむ、興味深い」
なんか救護室の先生雰囲気変わりましたか?モルモットを見るような目で先生を見ているようなのですが。
「痛みを緩和でしたね、まずはそれを試しましょうか」
「あ、あの、メフィス先生、その手に持ったナイフは何でしょうか?」
おお、この救護室の先生はメフィスと言うのですね。ただ、ちょっと関わりたくない感じが凄いです。
「ソフィア先生、お気になされず、なに、ちょっと腕を切ってみるだけです」
「え?それって気にした方が良くないですか?」
「しかし、何かしらで試さんとだしな」
皆さんも何か混乱しているみたいですが、ともかく私は静観しましょう。
で、結局2回ほどソフィア先生が気絶しましたが、特に問題なく検証は終わったのです。
終わった時にはソフィア先生ガン泣きでしたが、うん、それも良い思い出なのです。
「ともかく、これで向日葵さんの無罪が確定したのです!」
晴れ晴れとした表情で私が宣言しましたが、なぜか皆さん首を傾げています。
「どうなんだ?限りなく黒に近いグレーな気がするのだが」
失礼な!ソフィア先生が気絶した事こそ無実の証明なのです。だって、ぜんぜん幸福感に囚われなかったのですから!




