3-3:友達いっぱい出来るかな
扉を開け教室内に足を踏み入れると、先程までザワザワとしていた教室内が一斉に静かになります。
3年クラスへと編入されたイツキちゃんなのですが、もう2週間が過ぎているのに未だにクラスに溶け込むことが出来ないのです。
くぅ、美少女すぎるのがここで仇になるとは思いもしなかったのですよ!みんな遠巻きに此方をチラチラと見るのですが、休憩時間も、お昼時間も一向にこちらへと話しかけてくる事が無いのです。
事前に聞かされていた通り、このクラスは純人族の子供ばかりです。ただ、年齢に結構幅が見られます。一番大きい子だと12歳くらいかな?最年少はぶっちぎりの私なのですが。どの子も教室にあるボロボロの年季の入った教科書を使ってお勉強です。算数はいまだ掛け算割り算の桁が増えた程度なので苦労はないのですが、授業の内容が算数、国語、歴史、生活の4教科しか無いのに驚きました。
特に生活の授業が異様です。純人族と人族(亜人)の違いから始まって、向き不向き、各種族の特徴、野生動物の生態、魔物の生態など広く浅く教えているのですが、う~~ん、内容的に純人族って駄目駄目なのです?
「先生、純人族の良さがぜんぜん、これっぽっちも感じられ無いのですよ?」
授業中に思わず手を挙げてそう尋ねてしまった私は悪くないと思うのです。
でも、尋ねた瞬間教室内が一斉に無音になっちゃったよ?この沈黙は思いっきり怖いのです。
「う~~ん、イツキちゃんは何でそう思ったのかな?」
「だって聞いている限りだと純人族が人族?より優れている点って希少生物という所と、それ故の異様な?意味不明な?団結力しかないのですよ。でも、その団結力って利害によっては簡単に崩壊するのですよね?」
「そっか、そう捕えたのね。他の皆はどう思う?」
先生は教室にいる他の子供達へと話を振ります。でも、みんな顔を見合わせてコソコソ何かを言ってるのですが、声が小さいのでぜんぜん聞こえません。
「う~~ん、誰も意見が出てこなわね。ふむふむ、みんなは純人族なので、それぞれ自分達純人族のよい所を考えて発表しましょう~~~。ある意味自己PRですね、さぁどんどん行きましょう!」
うわぁ、この先生すっごい軽いのです。で、それに巻き込まれた人達が、うんうん悩んでます。
「どっかな?難しいかな?」
目をキラキラさせてみんなを見てますが、逆に子供達はその視線から思いっきり顔を背けてますが?
私がそんな感じでポ~~~っと教室を見回していると、失敗です、先生と思いっきり目が合っちゃいました。
「そしたら、まず言いだしっぺのイツキちゃんからいこうか」
言いだしっぺって方言では無かったでしょうか?標準語でありましたか?もっとも、私自体が標準語なのかどうかが怪しいのですが、とりあえず後になれば成ほど難しくなると思うのでサクッと行きますよ。
「賃金が安く済むのです!」
「え?そこ?!」
驚愕の表情を浮かべた先生がいます。でも、確か雇われる際には純人族はすっごく低賃金なのですよね?
「う~~んと、確かに雇う際には安い方が良いのは良いのですが、ただそれは純人族だからと言うよりも、仕事の内容によるような?」
先生の言葉に、みんながうんうん頷いていますが、それって騙されてません?
「でも、先生は純人族でも知識階級だからそこそこのお給料を貰っているから解らない気がしますよ?あと、ここに来てる子も中流以上の子供ですよね?純人族がどれだけいるか解らないのですが、学校に子供を通わす事が出来るのはごくごく一部なんだと思います?」
だって、この街に来るまでに通過した町や村では純人族はみ~んな貧しそうでした。この街に来てからもボロボロの服を着た子供は皆純人族だったのです。
「う~~ん、確かに世帯収入は純人族の方が厳しいですね。でも、それは一世帯における子供の数が多いのも理由の一つではあるのよ?」
「そうなのですか?」
一世帯の子供の数ですか、う~~んと出生率とかでしょうか?この世界はまだまだ子供や赤ちゃんの死亡率は高そうですし・・・ってあれ?角付さんになれば死亡率は減る?
「うちも4人兄弟だよ!」
「あたしの家は弟が3人いるだけ!」
「うちは僕一人~~」
みんなが自分の家の状況を口々に言いますが、どの家も兄弟は3人以上居そうです。一人って言う子は一人だけです。人口増加に皆さん貢献してますね!少子化何か考えられないかも?
「純人族以外の人族は出生率2.2くらいですからね。もっとも乳幼児の死亡率は純人族が圧倒的に多いですから、最終的にはそんなに差がないようです」
「純人族も病気になったら治癒の実を食べれば良いのではないのです?生きるか死ぬかの時は背に腹は代えられないのですよ?」
治癒の実を食べると角付になっちゃうのですよね?もっとも、あれが治癒の実なんて高尚な名前なのはすっごい納得がいかないのですが!でも、あれで治るなら死ぬより良いと思いますし、この街に住む純人族ならそこまで抵抗感はないのではと推測します。
「そうですね、ただ治癒の実でも体力の落ちた子供の場合、身体の変化に耐えられなくて命を落とす事も少なくないのです。比較的子供の時であれば変化に対する抵抗は少ないのですが、それにも限度がありますから」
「ふにゅ~~~、それなら子供達はとっとと食べちゃえば良いのだと思うのですよ?」
ある意味予防接種と一緒なのです。病気に対する抵抗力も上がるし、その後の生活も楽になるのなら有だと思うのです。治癒の実があの不気味で奇怪で、拒絶反応でまくりそうな人面の実じゃなければですが!
「先生もそうなのですが、治癒の実、又は変化の実と呼ばれている実を食べる事を本能が拒否するの。傍にあるだけで動悸、息切れ、発熱などを伴うのよ?他の人も同じみたいだから、やっぱり種としての存続への本能じゃないかしら?」
先生が首を傾げますし、子供達の半分がうんうんと頷いています。まぁ見た目からして不気味ですしね。
「ところで、純人族の良さの話が止まってます?」
私と先生ばかり話をしていて、ぜんぜん授業が進んでないのです。この生活の授業自体今一つ内容が決まっていないので、これはこれで良いのかもしれませんが。
「そうね、まだ時間はあるし、他に何かあるかしら?」
「商売の駆け引きが上手~~」
皆がうんうん悩んでいる中で、一人の男の子が言います。
内容を聞いてみると男の子のお父さんは純人族の商人で、純人族で無い者達は割と値段に関しては大雑把で、細かな値段のやり取りは苦手だと家でいっつも言ってるそうです。
「そうねぇ、お互いの感情が解る人族達はあまり駆け引きをしないみたいだから」
なるほどです。相手の感情が読める事に慣れてしまう弊害でしょうか。それ故に駆け引きが疎かになるのだとは思いますが、ここで疑問が出てきます。
「それなら純人族の商人から買わなければ良いような?」
だって、騙される可能性がある商人より、騙される事のない同族?から買えばよいのよね?
「う~~~ん、そうねぇ。そうすると純人族の商人さんのお客さんは純人族が多そう?」
先生の言葉に、なんとなくそんな気がします。普通に考えればそうなりますよね?
「あれ?でもうちのジャガイモさんとか角のある人も買っていくよ?」
「あら?」
皆で仲良く首を傾げるのでした。
気が付けば50万文字達成!
こつこつ書いてたらこんなに文字数が増えてたw
なのに・・・終わりが見えないぞ(ぇ




