2-85:エルフっ子再登場
何かおじさんが喋ってますが、うん、興味が無いので眠気が襲ってきます。すでに半分撃沈してますよ?
目を閉じて、いかにも聞いているふりしてうんうん頷いて、あ、今意識飛んでた?
とにかく早くお話終わんないかな?せっかくここまで来たんだから若い子の服装だって見たいのです。今ってどんな服が流行なんだろ?ミニスカートとかはありかな?それとも清楚なワンピースでいっちゃう?
ぽ~~っとそんな事を考えていたら、突然頭を何かにぐわしっと掴まれて、一気に意識が覚醒しました。
「寝るなばかもん!この状況で良く寝れるな!」
「ぬ~~~何が起こったのですか?」
流石に目が覚めて目をキョロキョロさせます。だって、頭は掴まれてて動かないんで。
そして視界に入るのは、うんおじさんや、もう少し顔を遠ざけてもらえるとありがたいです。ドアップがキモイですよ?顔真っ赤にして、目じり吊り上って、まるで鬼ですね!ってあ、そうか元々鬼でした。
でも、だからこそ寝る前に見る顔じゃないですね、夜中に飛び起きそうです。
「こっちが下手に出ていれば調子にのりやがって!」
「下手ってなんでしょう?何かそこも含めて認識に差が有るような?」
ともかく、先程の流れで私とおじさんとの貿易協定は破綻したんです。このおじさん頭が固いですよね。
もう少し柔軟に物事を対処しない、どんどん問題が脹れあがていくような気がします。
「うるさい!ともかく、この街で暮らすなら大人しくしていろ!これ以上こちらに迷惑を掛けるな!」
「竹米は迷惑では無いですよ?感謝されてしかるべきだと思うのですが」
「く、きさま・・・」
短気ですね。ぜったい友達少ないのです。あと、部下から嫌われているんです。
「う・る・さ・い!」
むぅ、つい言葉に出していました?大型猫さん達に視線を向けるとうんうん頷いてます。これは失敗しました。
「冷静になりなさい幼子よ、ここで竹米の供給を止めれば供給を止めた者に不満が集まりますよ?」
ぬふふ、どうですか?伊達に100年以上生きて来ていないのです。これぞ女神モード!この慈悲深き慈愛の眼差し、口元に微笑を浮かべ、この口調です、私だってやれば出来る子なんです!
「なぁ、馬鹿にしてるのか?なんだその気持ち悪い表情は」
「ぬお~~~この女神のような表情を気持ち悪いとはなんですか!」
「女神?なんだっ不幸とか、貧乏とかの女神か?」
「どうせなら暗黒のとかもっとスケールのデカいのがあるですよ!なんですか不幸とか貧乏って!」
「いや、スケールなぁゴヘェ」
すっごい上から目線で見下ろして来やがるこのじじい!くそう、地獄みしたるぞ~~と憤慨マックスイツキちゃんへと変身を遂げようとしたんですが、じじいが突然真横にいた大型猫さんにどつかれました。
うん、床の上でピクピクしています。ナイスです大型猫さん!
「ぬふふ、チャンスです!イツキちゃんス~~パ~~ミラクル、ジャンピングキ~~~ッどふぇ!」
留めを刺そうとジャンプしてじじいの上に着地しようとした私も、横から飛んできた大型猫さんのとても猫さんパンチとは言えない威力のパンチで壁に叩きつけられて熨斗烏賊状態に・・・。
「う、ううう、ひ、酷いのです」
「ぐるるるるる」
大型猫さんがなぜその猫の顔で出来るのかと言うほど呆れた顔でこっちを見てます。
むぅ、天誅を阻まれたのですよ?ここで叩きこまなければなのですよ?
ぷるぷると震える足に力を入れて机に手をかけて立ち上がって、何とかじじいへと向きを変える。すると、あちらも振える足で立ち上がっています。そして、お互いの視線が交差するのです。
ここで先に一撃を入れた方が勝つのです!
振える足に力を入れ、一歩踏み出そうとした時、今まで聞いたことのないため息が背後から聞こえました。ついでに、頭を後ろから押さえられ前へと出れません。
「馬鹿と、馬鹿が、一緒、大変、面倒」
ぬおう、この如何にもな話し方はあのエルフっ子です!なぜここになのです!
「敵です!天敵が現れました!応援求ムゴムゴムゴ!」
薬草さん経由でそとのジャガイモさんへと応援を頼もうとしたら、口を押えられました。ぬぅ、体格でも力でも完全に負けているのです。手が振り払えないのです!
ジタバタしている私を他所に、エルフっ子はじじいへと視線を投げつけますが、その視線は決して友好的な感じではないですね。もしや、敵の敵は味方?
「馬鹿、騒動、大きく、すっごい愚か。短慮、視野狭窄、思い込み、全部だめ」
おおお、どんどん言ってやるのです!そうですよ、このじじいは全然ダメダメです!
ぬふん!口を塞がれているので鼻息が思いっきり馬鹿にしたように出ました。
「ぐぬぬぬぬ、しかし巫女殿、この糞餓鬼が」
「糞餓鬼、でも、始祖・・・様」
ん?糞餓鬼を否定してくれないのです?あと、様を付けるの嫌々じゃなかったですか?
何となくでは無く、思いっきり釈然としませんよ?
そんな私を他所に、漸く口を解放してもらえた私は、大きく息をしようとした時、ドバン!と大きな音と共に扉が開かれました。
「ゴホゴホゴホ、ヒック、ヒック」
驚いて咳き込んで、そのせいでシャックリが、と大災難に見舞われてる私を他所に、駆け込んできた衛兵さんみたいな人が息を整えてエルフっ子とじじいに向かって叫びました。
「役所前の道に、見た事も無い魔物が発生しました!」
そして、その場にいた全ての視線が私に注がれます。なんで?




