2-83:理不尽に巻き込まれたのですよ?
目の前には、やたらと武装した方達が50名程立ちふさがっています。で、どの方もそれぞれの武器を構えて仁王立ち?でもおじさんばっかりです、ほら、若い美形の兵士さんとか普通いますよね?なのに全員が全員守備範囲外なのです。この世界っておじさん率高すぎませんか?誰特ですか?
「そこで止れ!ここからは我らが命に掛け通す事は出来ん!」
ん?何か集団の中でも一際ごっつい顔全面髭?って感じのおじさんが叫んでいます。だ・か・ら、おじさんは守備範囲から外れてますよ?出来れば御子息は?って思いますがこの人の子供だとごつそうですからやっぱり範囲外?
それは兎も角、皆さん槍やら剣やら構えてすっごい顔つきも厳しいからイツキちゃんは怖いのです!
そんな私の恐怖心を感じ取ったのか、ジャガイモさんが私の前へと進み出ます。でも、あっちで弓構えてますよ?ジャガイモさんだけだと私ピンチじゃないかな?
「むぅ、戦力が不足しているのです。ジャガイモさん、今攻めるのは悪手ですよ?あと、他のジャガイモさんは呼べますか?」
この場合、薬草さん達はあまり戦力にならないのです。少しでも戦力となるジャガイモさんを増やしたいのですが、移動速度を考えるとちょっと間に合わないかな?薬草さん達はいっぱいいて皆さん私の前へと布陣?していますが、そもそも30センチくらいの高さしかないですし、貴方達は攻撃手段が無いですよね?
「かよわいイツキちゃんに対して、貴方達は何をそんなに怯えてるのですか?」
うん、ここは懐柔策なのです。決して怪獣では無いのです!怪獣はまだ用意していないのです!どうせなら前に作った食虫植物さんを用意すれば良かったと後悔しても後の祭り?ともかく今ここを切り抜けないとです。
「馬鹿もん!そんな魔物を連れてどこがか弱いだ!貴様の通ってきた道を見て見ろ!」
むぅ、何を言い出すのでしょうかこのおじさんは。私の通ってきた道と問われて答える答えは一つしかないのです。
「我が覇道に遮る物はなし!全ては我が前にひれ伏すがよいのです!」ドヤッ!
ぬふふ、決まったのです!格好良いですよね?思わず見とれちゃいますよね?思わずにやけちゃいそうな表情を必死に取り繕います。
「貴様はどこの絶対王者だ!親を連れて来い親を!どんな教育をしたのか滾々と問い詰めてくれるは!」
ぐぬぬ、お母さんやお父さんを悪く言うとは、このおじさんは嫌いです!すっごいムカつくのです!これは悪です!殲滅です!こうなったら多少の不利は仕方ないのですよ、人には引けない時というものがあるのです。
このおじさん達と戦う事を決めた為、わたしから発する気配が変わったのでしょう。ジャガイモさん達の動きが変わりました。薬草さん達も先程までのニパッ!は無くなり、視線が鋭くなります。
「この手だけは使いたくなかったのです。でも、勝負とは勝たなければならないのです」
重々しくそう告げた私は、ゆっくりと腰にぶら下げた小さな袋を手に取りました。そして、その口を緩め、その袋の中身を手に取ろうとした時、前方から大きな声が響き渡りました。
「馬鹿者どもが、何を騒いでいるか!どけ!通れぬではないか!」
なんか前の集団の後方で怒鳴り散らしている声が聞こえます。ここに知り合いはいないし、援軍とは思えませんし、どうしましょうか、これ前方に撒き散らしていいのかな?
状況の変化に戸惑いながら、袋から手の平に零した植物の種を手にして困惑しちゃいます。
「う~~ん、まぁいっか撒いちゃ「待たんか小娘!」う・・・に?」
今怒鳴られたのってわたしですよね?なんで見知らぬ人に怒鳴られないといけないのでしょう?
むぅ、ともかくこれ撒いてから考えましょう。
「樹!だから待てと言うのだ!」
「あれれ?」
何でしょう、どうして私の名前を知ってるのでしょうか?え?もしかしてストーカー?危ない人?ごめんなさい、私おじさんはちょっと御免なさいなんですが。
思わず警戒した眼差しと言うか、不審者?変質者?なんかそんな人を見る眼差しで前方の集団から出てきた口髭をえらっそうに生やしてる50くらいかな?のおじさんを見ていたら、その後方からどっかで見た生き物が出てきました。
「あ、角付大型猫さんだ」
そうなのです。かつて見た角付大型猫さんにそっくりさんなのです。何かこっちを見て、大型猫のクセして溜息つくところなんかすっごいそっくりなんです。で、ついでにその頭の上に角付リスさんもいますが、食べられちゃいますよ?
「バガン!貴様先月の定例会で何を聞いておった。良く見ろ、あれが要注意生物だぞ!貴様何を見ておるか!」
何か私を指さして失礼な事行ってませんか?あ、ちがうかな?私でなくジャガイモさんを指さしているのかな?ちょっと指先からズレてみましょう・・・・あれ?何かこっちに指先が付いてくるのですが?
「あれには手を出すなと言ったな、あとジャガイモのでっかいのにも注意したよな!貴様の頭は筋肉か?それとも空っぽか?これからバガンじゃなくバカンかバカに名前変えるか?」
うん、大型猫さんとリスさんや、そこでうんうん頷くのはどうなのでしょう?ただ、私も今後その人をバカンさんと呼べばいいですか?
ただ私達そっちのけで何か話をしているんですが、私は暇なのです。うん、この手に握った種もどうするか中途半端だし、このままだと種が湿っちゃいますよね?綺麗で清潔で可愛らしいイツキちゃんのお手てですが、これまでに歩いてきたりでほんのり湿ってますし。このまま種が駄目になっちゃうと何ですし、まぁいっか。
「だから、樹も種を撒こうとするな!また世界をパニックに巻き込む気か!」
又もや失礼な発言です。
「むぅ、失礼な。またとは何ですかまたとは!この平和主義のイツキちゃんに向かって!」
あれ?失礼な髭じじい達はともかく、薬草さん達よ、何ですかその驚愕の表情は!
私は基本的に食っちゃ寝できて、毎日のんびり暮らせて、美形の旦那さんが甘やかせてくれる暮らしを望むだけの少女ですよ?平和的ですっごい謙虚で質素な願いしか持ってないのです。
「ともかく、ここでは話は進まん。とっとと役所に入れ!」
「人を進まない様にしてたのに、今度はさっさと入れとはこれいかに」
あまりに理不尽な人を見ると、思わず絶句してしましますね。