1-18:72年目の夏です
誤字訂正しました。ご指摘ありがとうございます。
燦々と輝く太陽が眩しく感じる樹です。
去年ってこんなに暑かったでしょうか?もうちょっと涼しかったような?
そんな疑問を毎年感じています。
ここ最近は短時間(それでも数日単位です)ですがお昼寝も出来るようになってちょっと嬉しいです。
そんな中、戦争も何かそんな事あったかな?って気分になりそうでちょっと怖いですね。
その後、動物さん達は本当に今までの生活に戻っちゃいました。
あれ?本当にそれでいいんだって吃驚しました。
そんな中、わたしの危機意識に誘発されるように森にいる子供達が頑張りました!
なんと!子供達と、わたしの中でついに!ついに!リンクが形成されたのです。
残念ながら本当に初期の頃生まれた子、しかもその中で樹になった子限定でですけど会話が出来るのです。
若干、会話のテンポなどで苦労されるのですが、それでも遂にお話出来る仲間が出来ました!
快挙ですよ!凄いですよ!ボッチ卒業ですよ!
っとわたしが興奮する中、他のリンクされた子供達は、う~~ん、おめでとう?っという言葉をわたしにくれました。
以前のコシカケキノコさんとは違いますよ?幻覚じゃ無いですよ?
そして、更にはわたしの子供だからなのか、彼らが見ている映像を見る事に成功しました。
すごいです、今も一歩たりとも歩くことの出来ないワタシが周囲の状況を漸く見ることが出来るようになりました。
そして、これの御蔭で漸く攻めてきている者達の事を見ることが出来ました。
おおお~~~そのまんま人でした。特に耳が長い事も無く、身長も普通です。魔王の手下達って思ってたのですが何か違いそうです。
だって、見るからにみすぼらしい恰好なのです。ついでにどうやら残っている食料も無さそうです。
うわぁ、何かこの人達ってこのままここで生きていけるのでしょうか?
だって、草原にテントですよ?畑を作るって事もしてないのです。
まぁそんなに簡単に畑を作れるのかどうかは知らないですけど。
とにかくコソコソって感じが良く似合う様子で怯えながら森に入ってきます。で、キノコを見つければ大喜びです。何か見ていて痛々しいっていうか、うんっと、貧しさもここに極まれりって所です。
あの人達ってこのままここで生きていく気なのでしょうか?無理なんじゃない?って気がします。
だって、助け合いの精神がなんか欠如してますもんね。殴り合いとかする前に皆で力を合わせましょうよ。
わたしが言う事では無いんでしょうけど。
◆◆◆
ロマリエは決断を迫られていた。
昨年に行われた調査隊において、多少なりとも希望が見られる報告をした部隊は第12調査隊のみであった。その為、今後の方針が中々決まらない中、首都においても食糧問題がより深刻化してきていた。そして、その御蔭もあって、昨年に行われたある意味強制移住とも取れる北方の難民処理においても、この首都の貴族たちからの評価は高かった。
しかし、それは問題解決の先延ばしでしかない事は、誰もが解っている。そして、今年はまだ良いとしても次に冷夏が起こった場合どれ程の者達が餓死するのか予想を付けられる者はいなかった。
それと合わせて、調査隊は楽園、移住地といった情報は集められなかったが、それ以外の様々な情報を持って帰って来た。その中で、ロマリエを今唸らせている情報があった。
隣国フランツ王国において不穏な動き有。軍事行動の可能性大
一つの報告書に書かれたこの文字が、ロマリエの行動を縛り付けていた。もちろん、すぐに国王へと進言してはいる。そして、この国においても秘密裏に警戒態勢を引きつつあり、追加の密偵をフランツ王国に放っている。
それでも尚、ロマリエを、そしてこの国の行動を縛るのはその軍事行動の向け先がはっきりしないからであった。今は行っている情報においては、恐らく万単位の軍事行動が行われると思われる。そして、それに付随する物資の集積を確認、ただし、その物資の量は動員されそうな人数の半分しか用意されてないように見える。
この意味は、何を意味するのだろうか?
これでは、まるで・・・ロマリエの思考はここでまた硬直するのである。
この時、ドアをノックする音が聞こえた。そして、ロマリエの許可の下、トールズが部屋へと入ってきた。
「トールズ殿、会議出席御苦労でした」
ロマリエの言葉に、トールズは表情を歪める。
「毎度毎度結論が出ない事をいつまで話している気なのか。そんな事より少しでも畑を耕している方が未来の為ではないですかな?ロマリエ国土開発大臣」
先の調査隊における植民地などの調査が、第12調査隊の御蔭である程度の評価を得られた。そして、この御蔭でロマリエは上手く出世し、しかも現状の国土開発における権限を得ていた。そして、今ある意味もっとも貧乏くじを引いているのはトールズ難民対策庁長官であろう。元々、軍事畑の自分がなぜこんな役職にっと思っていた。
「そうですね、しかし、調査を進めれば進めるほど土地の持つ地力といった物が減少してきている気がします。古い文献には頻繁にこの地力の事が出ている。ただ、どうやって回復させるのか、それが殆ど明記されていないのです。腐葉土と呼ばれる物も作りました。貝殻なども砕いて撒いてみました。作物の連作障害対策に苦渋の判断ですが休耕地ですら作りました。しかし、年々作物の実りが厳しくなっていく」
「仕方ないさ、どんなに地力があろうが、天候はなんともならん。ここ近年は夏だって涼しく感じる事が有る。あんただって感じてるんだろ?地力って幻想に逃げてんじゃねぇよ」
トールズの厳しい言葉に、ロマリエは苦しそうな表情をする。彼とて原因は解っているのだ。しかし、解っているが、太陽に文句を言って改善されるならとっくにしているっと怒鳴りつけたくなるのだった。
「解っています。トールズ殿、本当に魔の森は攻略出来ないのですか?あの地は報告を聞けば非常に豊かであるっと聞いています。それに、魔物とはいえ食べられる動物達も正に数万単位でいるのでしょう?」
ロマリエの言葉に今度はトールズが顔を顰める。
「あそこはお伽噺の世界だ。俺には縁がない、行くなら俺抜きで行ってくれ」
トールズはそう告げると、足早に部屋を出て行ったのだった。