2-66:新しい住処が・・・決まるといいなぁ
あの後、特に門で止められることなく私達一家は街の中へと・・・入れるわけも無く、城壁の外に作られた掘立小屋が立ち並ぶ一角に住むことになりました。
幸いなことに、この城壁の外に作られた町?は人の出入りが激しいそうで、空いている家があれば自由に使用しても良いみたいです。家の外に住人が住んでいる事を表す表札みたいな物を掲げれば良いのですが、この表札も門の所で販売していました。街の拡大に伴って城壁の中だけでは土地が足りなくなって、苦肉の策らしいのです。もっとも城壁内に住む為の市民権を得るには、お金をたくさん払うか、それとも街に貢献するかしないとだそうで、外から流れてきた人達はまずはこの城壁外の町に腰を落ち着けるのが定番となっているそうです。
そんな私達一家ですが、ある意味当たり前ですが街の中へと進むことは出来なかったのです。
で、城壁外の更に端っこにある掘立小屋を貰いました。
何故端っこかというと・・・お家の周りにわんさかお客さんが居るからなのです!
「おい、なんだよあれ、すげぇな」
「おいおい、肉食猫までいるぞ!やばいって」
「ママ~~、あれなぁに?」
「見ちゃいけません!ほら、お家に入りましょう」
「なぁ、あれって狩っていいのホゲェ!」
うん、何か吹っ飛ばされた人がいますよ?ジャガイモさん最近はフリッカーを覚えたのですね。視界の外から来るので避けるのが難しそうです。
で、そこのお子様、お友達になりませんか?!同年代の友達がぁ!!!
家の中へ逃げるように入って行く親子を、ついつい視線で追っかけちゃいますよ?ここ最近子供を見た事無かったです!ぬふふふ、これでイツキちゃんの配下ができるかもです!取り巻きフラグなのです!
そして、その後にイツキちゃん主導の内政チートで、爵位なんか貰っちゃって・・・ぬふふふふ、目指せ学園ハーレムエンドなのです!
「う~~ん、イツキちゃん?取り巻きのいるヒロインっていないような気がするな~お母さんは」
「!!!」
なんと、お母さんは私の心が読めるのでしょうか!ぬぅ、天使の能力は半端ないのです!
「いや、イツキ、お前さっきからブツブツ声に出してるぞ?」
「な、なんと!」
お父さんが驚きの新事実を教えてくれます。ぬぅ、声を発する事が出来なかった時代の弊害が此処にもなのでしょうか?これから気をつけないとなのです!
「さぁ、みんなでお掃除しましょう。今日からここで寝泊まりするのですから」
「お、この桶はまだ使えるな。よし、お父さんは水を汲んで来よう」
掘立小屋に入った私達は、家の中でまだ使えそうな物が残っていないか物色です。
「埃はあんまり無いのです?最近まで誰か暮らしてたのでしょうか?」
家の中には、まだ使えそうな家具やら何やら残されています。引っ越しするとは言え、総てを買い替えるとは思えないのですが、不思議なのです。
「ん~~どうなのかしら?でもそうねぇ、最近まで誰か住んでいたのは間違いが無さそうね」
お母さんとそんな事を話しながら、持っていた布を口の周りで縛って簡易マスクの準備完了なのです。
「さぁ、お掃除お掃除」
お母さんと一緒にハタキで埃を落し、箒で集めて外へとポイします。
ゴミとは違いますから特に指定場所へ捨てに行かなくても問題ないのですよ?
お父さんがお水を盥いっぱいに持って帰ってきたので、今度は水拭き開始です。
「ふわぁ、あっという間にお水が濁っちゃたのです」
「ほう、凄いな」
数回も注ぐと、水は真っ黒で、お父さんはまたもやお水を汲みに行きます。
で、お水を汲んで帰って来たお父さんが、何か挙動が変なのです。
「あなた、どうしたの?」
「あ、ああ、外がな、ちょっと何とも言えん事になってるぞ」
お父さんの言葉に、窓から外を見ると・・・お隣が見えますね。何も変な所は無いですよ?しいて言えば、お隣さんが荷物を持って何処かにお出かけしようとしてる?
「お引越しです?」
お隣さんの奥さんが、窓から覗いている私と視線が合うと慌てて目を逸らして何処かへ行ってしまいました。むぅ、何でしょうか、私が悪いことしたみたいで感じが悪いです。
「いや、イツキ、そっちじゃなくてな、ちょっと外に出ると解るぞ」
ちょいちょいと手招きするお父さんに呼ばれてお外へ出ます。で、お父さんに視線を追いかけてみると・・・おうふ、何でしょうか、そこには何とも言えない光景が。
「そうねぇ、まぁこうなるわよねぇ」
頬に手を当てて、お母さんが困ったわねぇとあまり困った感じがしない口調で言います。うん、でもこれは困ったちゃんですよね。
「一応こっちは何もない町外れだから問題は・・・ないんだよな?」
視線の先に広がる雑草さんやジャガイモさん、そして動物さん達が何と言いますか、集団でおいでです。
雑草さんはまぁともかくとして、問題は威圧感たっぷりにブンブン蔓を振り回しているジャガイモさんと、その蔓にじゃれ付いてる?大型肉食猫さん?その他にも多数の動物さんが適当にいっぱいいます。
「困ったわねぇ、せめてここでお食事は止めてくれないかしら?」
「ですよね~~~」
視線の先では、お口の周りを真っ赤に染めた狼さんや、そのお零れを狙う鷲さんなんかもいますもんね。
でも、もっと問題なのは、あっちから走ってくる兵士さんだと思うのです。