表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
181/302

2-65:イツキ、大きな街に着く

「うわぁ、大きな街だね!」


高さ2m程の城壁が目の前に広がっています。そして、その城壁の奥には一本の大きな樹が存在感をこれでもかと感じさせるように聳え立っています。

この近郊を統率する拠点となる都市だそうですよ?うん、当初目指していた町には入れなかったんです。

入場?拒否されたのですよ!我が家族は!イツキちゃんはこんなに良い子なのに、なぜか個人的に胡散臭い眼差しで見られて、とてもうちでは世話できないので立ち入りは拒否!この先へ行ってくれと、門すら潜れずに追いやられたのです。


「はぁ、このまま街に入れると良いなぁ」


「大丈夫ですよ、これだけ大きな街なのですから」


お父さん達が会話してますけど、その声にはやっぱり疲れが感じられます。

一応、前の町で食料とロバの馬車は分けてもらえたので辿り着けたのですが、それでも疲れは蓄積されていくのです。もっとも馬車の周りを見回せば、人はいないのですが人以外はうじゃうじゃいるのです。


「この子達が居ても入れてくれるかなぁ?」


相変わらず視線が合えばニパニパ笑顔を見せてくれる雑草さんやご飯の材料をくれるジャガイモさんだけならまだしも、角の付いた動物さんとかいっぱいの生き物が馬車を取り巻いているのです。


「そうねぇ、100匹どころの数じゃないものねぇ」


ちょっと困ったわ、という様子で頬に指を当てて首を傾げていますが、お母さんはきっとあんまり考えてないですよね?


「でもイツキちゃん、悩んでいても意味が無いわよ?大丈夫、きっと良いようになるわ」


「うぅぅ、せめて動物さん達はお家に帰ってくれないかなぁ」


我が家の常識人であるお父さんは、顔を顰めて動物さん達を見ています。うん、わたしもそう思います。


「貴方達は何でお家に帰らないの?」


たまたま荷台の中に来ていた角付のリスへ声を掛けます。

今までの様子で、この角付達はある程度はこちらの言葉、もしくは意思?感情?を理解出来るようです。

この為、私の言いたい事は理解できるはずなのですが、まったくもって此方側では何を考えているのか理解できないのですよねぇ。


「うん、何を言いたいのか解らないわぁ」


ぴょこぴょこと飛び跳ねるリスを見ながら、理解する事を放棄します。ボディーランゲッジと言ったって限度がありますよね?種族の壁はかくも高いのです!


「まぁお母さんの言う様に、行くしかないからな」


手綱を握りトコトコっとロバを操るお父さんが、前をみながらそう告げます。

でも、お父さんの横に座っていた角付のウサギさんが、お父さんの膝をタシタシと叩くのを見て、なんだかなぁって思っちゃいました。そのウサギさんをチラッと見るお父さんの眼差しが・・・うん、頑張って生きましょうね、お父さん。

でも、ふと思ったのですけど・・・・。


そ~~っとウサギさんに警戒されない様に御者台に近づくイツキちゃんですが、あと少しという所でそのウサギさんと目が合っちゃいました。


「えっと・・・・えへ?」


誤魔化し笑いをした後、がば!っとウサギさんに飛び掛りました!でも、でも、ウサギさんはひらりと身を躱して馬車の外へと跳ねていきました。


「あぅぅ、お肉が逃げた~~~」


折角のお肉だったのに!くぅ、よく考えたらここ最近はジャガイモばかりでお肉食べていなかったのです!


「あぅあぅ、こうなったら・・・」


先程まで足元で跳ねていたリスさんを探します。どれだけお肉が採れるか解らないですけど、でもお肉はお肉ですよね?

周囲をじ~~っと探しても、おかしいのです、先程まで居たリスさんが見当たらないのです!


「え~~っと、イツキちゃん?もしかしてリスさんを探しているのかな?」


「うん、さっきまで居たの。かくれんぼしてるの?おかあちゃま知ってる?」


傍らにいるお母さんへと視線を向けると・・・・いました、いたのですよ!お母さんの頭の上にちょこんと座っているリスさんです。むぅ、足元を探していたから気が付かなかったのです。


「イツキちゃんは何でリスさんを探しているのかな?」


「ふぇ?もちろん・・・・・・な、なでなでするのよ?可愛いから、お友達になるのよ?」


お母さんのまるで聖母のような眼差しを受けて、とても可愛いリスさんを食べようとしたなんて言えないのです!

むきゃぁ~~~~~~視線が、視線が痛いのです!イツキちゃんの心臓にザクザクと罪悪感と言う矢が刺さるのです!


「ふふふ、そうよね、リスさんは可愛いわね」


うう、マジお母さんは天使なのです。私はお母さんの頭の上からこっちへやって来たリスさんを手の平に載せて人差し指でナデナデします。リスさんも角を指にゴシゴシと擦り付けてきます。あの角って感覚あるのでしょうか?不思議なのです。


そんな風に注意がリスさんに向いてしまった私は、その後お母さんがボソリと呟いた言葉を聞き取れませんでした。


「ん?お母さん何か言った?」


「え?あら、何かつぶやいたかしら?」


頬に手を当てて考え込むお母さん。無意識だったのかな?

私は暇なのでこの際リスさんで遊ぼうと手の平の上に視線を向けると・・・尻尾を逆立ててお母さんに対し威嚇をしているリスさんがいます。不思議ですね、どうしたんでしょう?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ