1-16:71年目の憂鬱
こんにちわ~ちょっとどころか思いっきりブルーの樹です。
このまま何もかも忘れて寝てしまいたいです。
全てはみんな夢でしたって夢落ちにならないでしょうか?
何やら夜間の戦いは動物さん達が有利に進めたようです。
わたしは見ていませんが、オオワシさんの気合がすっごい出ています。
他の動物達も、戦勝に盛り上がる雰囲気がバリバリです。
でも、戦争などしたくは無いのですけどね。
なんでみんな仲良く出来ないのでしょうか?
魔王の配下は戦闘メインの脳筋なのでしょうか?
う~~~、おおいに有りそうな話ですね。
廻りの動物達が喜びに騒ぐ中、もちろん怪我で倒れている動物、手足など何処かを失っている動物などもいた。しかし、これが野生の逞しさなのか、その動物達からも喜びの意識が感じられる。
あと、これは予想していなかったというか、考えてもいなかった事なのだけど、動物達の間でそれぞれ労りの思いがある事に驚いちゃいました。
傷ついたウサギのケガを丁寧に舐めて癒している狼?なんかそのまま御馳走ですね、がぶっってされそうで見ているこちらの方がドキドキしていました。
すでに息絶えた動物は、容赦なく食べられていましたから、そこら辺のドライ加減は難しいです。
そんな事を考えていると、恐らく相手を監視していたワシさん達が、次々に戻ってきました。
う~んと、戻ってきた感じからはそれほど逼迫した様子は無いですね?
でも、今夜もこの様な戦いが行われるのでしょうか?
今回の戦いは所詮素人であるわたしの提案です。
同じことを繰り返しても効力は半減するのではないでしょうか?
又、逆に同じことをすれば逆に利用され此方が大損害ってことだって有り得ると思います。
わたしが不安を感じている事に気が付いたのか、オオワシさんがわたしの下へとやってきました。
そして、相も変わらず何かを話しかけてきます。
うん、こちらも相変わらず言葉がぜんぜん解りませんね。
いい加減覚えないとではあるのでしょうか。
そんな中、どうやら相手に動きがあったようです。
森の子供達から何やら警報のような音が響き渡ります。
どうやら、相手がまた動き始めた様子です。
◆◆◆
太陽が間もなく頂上へと達するかという頃、調査隊と避難民達は漸く被害全体像を把握したのだった。
そして、驚くべきことに昨夜の戦闘における被害は、調査隊においては死者67名、重傷者121名、軽傷者はその他全員の312名、まさに調査隊における3割強が戦闘不能となっていた。
それに対し、避難民の死者約300名、重傷者約200名、軽傷者を含めた残は約6200名と当初の10,000名から大きく減退はしている。
しかし、この地へと辿り着くまでに離脱や死亡した者の数を考えれば、恐ろしいほど少ないと言える。
この事からもこの地へ無事辿り着いたと思われる避難民は7000名弱とトールズ達は考えたのだった。
「避難民達の様子はどうだ」
「は!現在食事を配給した事により比較的落ち着いております」
部隊長の一人がそう報告をする。
「そうか、それは良かった。ところで、避難民達の中に自分達を統率出来そうな者はいたか?」
「いえ、見事に指揮の出来そうなもの、戦闘力の有る者などが昨夜の戦闘で死亡しています」
「そうすると、避難民どもは正に烏合の衆という事か」
「はい、幸いなことに」
「ふむ、そして今夜が山になるな、日が沈むと共に避難民達に気が付かれないように撤退する。気付かれ騒がれそうな時は殺せ」
「よろしいので?」
「構わん、魔物どもは恐らくこちらの集中力が切れる未明に攻撃してくる。俺ならそうするぞ」
トールズの言葉に、部隊長は顔を引き攣らせる。
「ただ、必ず監視が付いている。だからこそ撤退を隠密に行わなければならないという事だ。最悪追撃で全滅する」
「了解しました。兵士達に徹底させます」
それぞれが担当する部隊へと戻っていく。その様子を見ながらトールズは、本来は傍らにいるはずのパットンがいない事に顔を顰める。
「あんな奴でも居れば少しは安心できたのだろうがな」