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2-58:みんなのアイドル爆誕なのです!

「みんな~~、イツキに会いに来てくれてありがとう~~~!みんなの応援で、イツキはこんなに元気だよ~~、これからも、イツキの応援をよろしくね~~~」


町の入り口横に作られた舞台の上で、私は目の前にいる大勢の角付達に笑顔で手を振っています。

お昼から始まったイツキちゃんお披露目コンサートは、2時間の講演時間を過ぎ、今日も無事恙無く終了を迎えます。


ヴォォ~~~~ン!バウバウバウ!クゥエエエエ~~!ガウガウガウ!


様々な鳴き声が、私の挨拶に答えて周囲に響き渡ります。


「みんな~~気をつけてお家に帰るんだよ~~~」


ヴォォ~~~~ン!バウバウバウ!クゥエエエエ~~!ウガウガウガウ!


うん、さっきとまったく同じに聞こえますね。あれ?違うかな?うん、まぁいいです。

とにかく、満面の笑みで両手を大きく振って舞台から退場します。

そして、舞台袖から楽屋となっている天幕へと戻った私は、そのまま設置されていたソファーへと崩れ落ちるように倒れ込みました。


「ううう~~疲れたよ~~、喉がガラガラになちゃうよ~~」


冬の乾燥した空気の為、こまめに蜂蜜入りのお水で喉を潤していても、連日の酷使に限界が近いのです。

それなのに、今日もこの後夜行性の角付さん達の為に、夜の部が控えていて更なる酷使は確定です。


「イツキ様、お疲れ様です。此方に蜂蜜入りの牛乳と、蒸かした芋をご用意しております」


視線を向けると、ここ最近お世話をしてくれる一本角のスレンダー美人のお姉さんが、机の上にはホカホカまだ湯気の立っている蜂蜜ミルクとジャガイモさんが置かれています。しかも、なんと、良く見ればジャガイモには特別に貴重なバターも用意されていますよ!


「バターです!今日は豪華なのです!」


くうぅ、ジャガバタなのです!昨日まではお塩を振ったただのお芋だったのに、いっきにランクアップしたのです。


「はい、先日町に来られた角付乳牛様達が、今後この町に暮らして頂けるとの事で、快くお乳をお分けいただけました。今後も定期的にお分けいただけるとの事で、非常に感謝しております」


「おおおおお!」


牛乳はこの世界では貴重なのです。保存技術が拙い為、日持ちがしないのでチーズやバターにしますけど、その方法も今一つであまり日持ちがしないのです。今までは角の無い牛さんが数頭いましたけど、皆さん開拓用の水牛さんだったので、この牛乳の安定供給は非常にありがたいのです。


「この後少しお休みいただいても構いませんよ、夜の部前には起しますから」


おおお、何という優しい言葉でしょうか!思わず涙でお目めがうるうるしてしまいます。

お口をモゴモゴさせながら美味しいジャガバターを味わっていると、扉を開けて町長さんとロリババアがやってきました。


「イツキ様、お疲れ様です。鳥種達が住処へと戻った事で、ようやく冬野菜の種を撒く事が出来ました。先日定住を希望された鶏様の小屋も無事完成しましたし、おかげで卵も安定供給ができそうです」


先日の涙と鼻水に塗れた顔を、今は満面の笑顔に変えて町長さんは色々と話を続けます。

でも、あの後に思念で無事を伝え、来なくても良い旨伝えたのですが、残念なことにそのまま戻った動物達は極わずかでした。此処まで来たんだし、ちょっと顔でも見に行ってみる?そんな感じのノリで今も続々と動物達はやってきます。

そして、町の中を周りを気にせずワンワンニャァニャァ大騒ぎ!

ただ、唯一幸いなことは滞在時間が非常に短く、私をしばらく見ると満足して帰って行くこと。

もっとも、そのせいでついには門の前に舞台を作られ、しまいにはそこでコンサートもどきをする事になったのです。ただ、そうすると皆さんご機嫌でお帰り頂けるのです。


「ううう、自分のカリスマ性がこれ程恨めしく思う日がくるなんて・・・」


町長さんの話を聞きながら、この疲れた状態で行わなければならない夜の部を思うと嘆きの一つも出ようという物です。


「・・・え?カリスマ性ですか?」


キョトンとした表情の町長さん。そして、お姉さんも怪訝な表情を浮かべて・・・る?


「ええ、だって、コンサート開かないと皆が悲しむから」


「あれって好きでやってるんじゃないのですか?動物達も期待した通りの珍妙な生き物が見れて満足しているだけで・・・あ、でもある意味喜んでいるから無くなると悲しむのかしら?」


「そうですねぇ、まぁ動かない状態より動いている状態を眺める方が満足しそうですし、このままで良いのでは?」


「ひ、酷い!」


何という事でしょう。この愚か者たちは私のカリスマ性にきっと嫉妬しているに違いないのです。

角付さん達のあの歓声!コンサート終了時の満足感!あれは舞台の上でしか感じられないのですから!


「うう、わたしは寝ますよ!寝ちゃうもん!」


「はい、では夜の部の少し前にお起しいたしますね」


お姉さんにそう言われますが、その言葉の印象が先程と180度違って聞こえます。

悔しいです、すっごい悔しいのです、ソファーにあった毛布に包まって不貞寝してやります!ジャガイモだって食べ終わりましたし、この後夜の部だって待ち望まれているんですから!

でも、絶対にこの間違った評価を見返してやりますよ!

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