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2-56:イツキちゃんは20歳以上ですよ?

「ガクガクブルブル・・・段々寒くなって来たのですよ?」


私が縮こまって体を震わせていると、漸くお母さんが私の異常に反応してくれました。

今までは今一つ反応が薄かったのですが、慌てて私の顔や首筋へと手を当てます。


「ひゃぅ!つ、冷たいのです」


お母さんの手がすっごく冷たく感じました。私の体温が上がっているだけでなく、お母さんの手もこの寒さで冷えているからなのでしょう。此のままでは、お母さんも風邪をひいてしまいかねないです。


「おかあちゃまのお手ても冷たいね」


私は、お母さんにギュッと抱きつきながら、上目づかいでお母さんを見上げます。

でも、先程までの心配した様子のお母さんでは無く、怪訝そうな表情をしたお母さんがいました。


「イツキちゃん、ねぇ、あなた何かお酒臭くないかしら?」


私を心配して、熱を測ったり、毛布を整えたりしてくれていたのですが、今は私の顔の前でクンクンします。

そして、何かを確信したかの様子で私の体をぺたぺたと触ります。そして、首からぶら下げて服の下に入れていた小さな革袋を引っ張り出し、その口を開いて匂いを嗅ぎます。


「これってお酒よね?イツキちゃん、これはどうしたのかな~?」


いつものようにおっとりとした感じで尋ねてくるお母さんですが・・・目が怖いです。


「うふふ、ふにふにほっぺちゃん、何かお話したくなるよね?これは何かなぁ?」


あぅぅ、ほっぺたを横にびよ~~んと引っ張られます。実は、この革袋はお父さんの荷物から拝借してきたのです。ほら、寒いときにはお酒を飲むと温まるって言いますよね?

イツキはちゃんと学習する子なので、この寒さ対策にお酒を用意したのです。お酒って飲んだこと無かったのですが、想像してたより飲みやすくてちょっと予定より大目に飲んじゃったことは確かなのです。


「え、えっちょ、ひゃ、ひゃひみちゅしゅうまぁ?」


「ふ、ふふふ、何って言ったのかな?まさか、蜂蜜酒うま~じゃないわよね?」


視線が、視線が氷の様なのです。その氷でイツキちゃんは氷像になっちゃいます?

お互いに視線での会話を続けていた私とお母さんですが、村の中心からバタバタとこちらに向かって来る人達に気が付きました。その先頭にはあのロリババアがいますが、あの無表情が明らかに焦っている様子に驚きを隠せません。


「ふぁにふぉとへふぉう」


「う~~ん、なにかしら?」


視線を村の中へと向けていたら、今度は村の外からもドシドシと音が聞こえます。

すっごく嫌な予感がして、振り向きたくないのですけどそっと後ろを見ると・・・おぅふ、先程の熊さん親子がこちらにすごい勢いで走って来ます。うん、熊って早いんですね、知らなかったです。


「な、何事かしら・・・」


ん?お母さんの視線は遠くのお空に・・・・あ、駄目だわこれ、熊さん方向からちょっと右へと向けると、お空が真っ黒に見えるくらいの鳥さん達がこちらに向かってきます。


「ふぇっふぉ、ふぉふぃふぁふぇふ、ふぉっふぇふぇふぁふぁふぃふぇ?」


「あ、ごめんなさいね」


漸くお母さんがほっぺたを解放してくれました。でも、お母さん、今この時に私の革袋からお酒を飲むのはどうかと思うのですよ?


「お酒でも飲まないと正気でいられ無さそうな気がするわぁ?」


うん、目が氷の視線から虚ろな視線にチェンジしてますね。

で、まず何とかしないといけない問題は熊さん親子かな?それとも鳥さんかな?


「ば、馬鹿、樹、何しでかして、くれた、の?」


何か息が切れているのか、それとも何時もの話し方なのか微妙に悩む感じでロリババアが叫んでます。でも、そんなに大きな声出せたのですね、吃驚です。


「な、何なのですか!何が起きてるのですか!」


町長さんも叫んでますけど、うん、顔がもう大変な感じ?澄まし顔のエルフとはとても思えないです。

そんな事を思っていたら、今度はイツキちゃんがグラグラ?おや?何でしょう、ついに熱で平衡感覚が?


「い、イツキちゃん!」


お母さんのお顔がだんだん下にって・・・


「あ、ジャガイモさんお元気ですか?」


私の真下にジャガイモさんが現れました。そのせいで身体が持ち上げられていたのですね。

ついでに、わさわさと雑草さんや、おお、あれは人面植物さんですね、リアルで見るとやっぱりグロイですね。


そんな事をぼ~~~っとしながら思ってたりしますが、べ、別に現実逃避してる訳じゃないですよ?

だから、私に掴みかかろうと必死にジャンプしているロリババアなんか見えないのです。


で、改めて状況を気にしてみると・・・・何かすっごい数の思念が飛び交ってるよ。

まだまだ自分で一々しっかりと意識しないと読み取れないのがすっごい不便なのです。


「おおお、何これ、すごいです。イツキちゃん大人気?」


思念の一つ一つが把握できないです。ほら、周りで一斉に話されると聞き取れないのと一緒なのです。

ただ、何か一斉にみんなが動いているような?うん、なんか圧倒されます。アイドルのコンサートってこんな感じ?ちょっとわくわくしちゃいます。


「馬鹿、ボケ、脳タリン」


此方が今の状況に浸っているのにノイズが酷いです。優しいイツキちゃんもちょっとムカっとしますよ?


「何ですか、五月蠅いのですよ?みんなのアイドルイツキちゃんに何か御用ですか?」


「ば、馬鹿!そんな事、言ってる場合、じゃないの!」


何かものすっごく必死な顔・・・ぷふぅ、笑えちゃうのです。

な、なんか段々イツキの性格が・・・

イツキちゃん、あなたアイドルどころか数少ないファンですら激減しそうな予感ですよ?


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