2-43:世の中はお金がすべてなのです
その後10分程放置されたんですが、お姉さんが戻って来て我が家の未来計画検討会議が再開されました。
何を揉めていたのか気にはなりましたけど、お姉さんは残念ながら教えてくれませんでした。
「とにかく、移動するだけの体力を回復させる事が」
「いや、それだけでは、移動中の食料と水の確保が」
「まず今日どこで寝泊まりするかも」
お母さん達が色々と話し合っているのですが、私が口を出す雰囲気ではないので大人しくしています。
そうです、大人しくゆっくりとした動作で椅子を降ります。せっかく町に来たんですからお外を見たいですよね!入り口からお外を見ると、相変わらず?門の所で大勢の人がバタバタしてます。
周りの人も遠巻きにそれを見ていて、こっちに注目している人はいないです。
うん、この小屋の近くであれば安全だよね?見学してもいいよね?
島の村や、森の村とは違う、明らかにファンタジーの町らしい建物が並んでいます。
この先に見えるのは広場かな?噴水とかあるのかな?
下手すると町を早々に追い出されるかもしれないのです、町を見て回れるのは今が唯一のチャンスかもです。
「う~~んと、どうせなら中心に向かった方がいいかな?」
お母さん達は、特に変わる事無くお話合いを続けています。でも、先程からお母さんがチラチラこちらを見ています。イツキは良い子なのですから断りも無く居なくなったりしませんよ?心配させてしまう事が解ってるのに勝手に出かけたりしません。
「おかあちゃま、このお家の周りを見てても良いですか?」
「う~~ん、知らない場所だからイツキちゃんだけでお散歩はちょっと心配かなぁ」
うん、お母さんのいう事はもっともです。でも、ただ椅子の上で座ってるだけというのもキツイのです。
「このお家が見える範囲でもダメ?」
「そうね、イツキちゃんが知らない人に浚われて、もう二度とお母さんに会えなくなっても良いのならいいのよ?」
「あうぅ、それは嫌です!」
うぅぅ、何か想像しただけで涙が溢れます。そうですよね、記憶で見る日本だって子供の治安が年々悪くなってました。ましてやこの世界だと誘拐とか何が起きるか解んないですよね。
「我慢するぅ・・・」
しょぼんと肩を落としてお母さんの傍に戻ります。
すると、今まで会話していたお姉さんが、此方へ視線を向けていました。
「ん?」
「子供には退屈ですよね。それに子供にはあまり聞かせて良い話かとも思いますから、護衛を付けましょう。基本的に町中は安全だと考えていますが、言葉では不安でありましょうし」
すると特に何かをした様子も無いのですが、小屋の中におじさんが入って来ました。
どうやらこの人が護衛?してくれるみたいです。
「おれは護衛してれば良いんだな?」
「お願いします」
「えっと、お願いします」
お姉さんの返事に合わせて私もお願いしました。
でも、いつの間にお姉さんと会話が成り立っていたのでしょう?
「あ、の、ご厚意はありがたいのですが・・・」
うにゅ、お母さんの表情が曇ってます。不安ですよ~と自己主張してますね。
そうですよね、良く考えたらこのお姉さんと知り合いでも何でもないですし、不安の度合いが変わっただけですよね。
「あの・・・おにいさん?いいですか?」
「ん?なにかな?」
おお、ちゃんと屈んで目線を合わせてくれます。この人は良い人です!
でも、どうせなら飴ちゃんとかお菓子とかをくれれば更にポイントが高いのですが残念です。
「この小屋の周りを案内して欲しいです」
「ああ、好きに歩いて良いぞ」
それでは案内にはならないのですが。ともかく、小屋を出て町中を歩いてみましょう。
もしかしたら何か楽しい物が見つかるかもしれないですしね。
「おかあちゃま、お散歩してくる~」
未だに不安そうにしているお母さんに手を振りながら、小屋の外に出ます。
門の所ではいまだに喧騒が続いています。先程より人が増えていますね。本当に何があったのでしょう?
でも、私には関係がないので、とにかく周囲の探索を行いましょう。
つい門へと向かっていた視線を町中へと移すと、小屋の影に見慣れた物が見えました・・・雑草さん達だ。
おお、ここまで追いかけて来たんですね!ある意味すごいですよね!うにうに動いて来たのでしょうか?
ただ、相変わらず私と視線が合うとニパッ!っと満面の笑顔を向けてくれます。
「あ、そうだ!おにいさんこの町にも神樹ってあるんですか?」
そうです、やっぱり気になるんですよね。この町へ来るときの水場に居た神樹さんもどきは会話が出来なかったですし、この町の神樹さんはどうなんでしょう?
もし会話が出来ないのであれば、どこかにエルフさんは居ないかな?エルフさんは言葉で会話できると思うし、通訳だってしてもらえると思います。
「ん?ああ神樹様なら広場に枝を張っておられるが、純人族では会話が出来ないぞ。神樹様の木の実は怪我、病気の万能薬ではあるが、実が成る時期にはまだ大分早い。それでも見てみたいのか?」
「はい、神樹って見た事ないですし、不思議な力を持ってるんですよね?」
「ああ、まぁ向かってみるか。見ても特にどうこうとかは無いがな。まあ屋台だなんだと賑やかではあるがな」
人混みで逸れない様におじさんに手を引かれテクテク歩きます。そんな状況でもわくわくする気持ちを抑え、街中の道路を町の中心へと向かって歩き続けると先日見た樹より数倍は大きい神樹が次第に見え始める。
「うわぁ、すごいね、美味しそうな匂いがいっぱいです」
「え?そっち?」
何でしょう?おじさんが驚いていますが、そんな事は後で良いのです。
神樹を囲むように置かれている屋台から漂ってくる香りが凶悪なのです。
これは、焼き鳥でしょうか?あ、これは焼き芋?サツマイモがあるのかな?定番のトウモロコシは無いかな?あればぜったい食べたいのですよ?烏賊は海が無いから駄目だろうなぁ。
つい香りに誘われてふらふらと彷徨っちゃいます。でも、お金が無いのです!じ~~~っとおじさんを見ても視線を合せようとしないのです。このおじさんはケチなのです。
「う~~、やっぱり世の中すべてお金なのですね」
「あ~~、その、なんだ」
おじさんは言葉を濁しますけど、真理は真理なのです。
こうなったら知恵を絞るのですよ!・・・雑草さんはどこいったかな?