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2-34:村を追いだされちゃうのですよ?

森の中へと消え去って行くジャガイモさんの雄々しい背中を見送ったイツキです。

うん、残念な事にジャガイモさんは蔦に着いていたジャガイモ1個すら落して行ってくれませんでした。

むぅ、もしあのジャガイモさん全部を収穫できたらどれくらいあったのでしょう?

その事が非常に気になってはいるのですが、そんな事を気にする余裕が無くなってる我が家です。


「で、結局だがあのジャガイモの魔物は、あくまであんた達が持ち込んだもんじゃないって言うんだな?」


何やら偉っそうなおじさん達が数人連れだって我が家に来てるのです。

お父さんは顎の下に濡れたタオルを当てながら何か反論をしているのですが、顎が痛いのか今一つ勢いはないですね。


「こちらで集めた情報では、そこのお嬢ちゃんが何やら畑に細工したって聞いているが?」


別のおじさんが今度は私に冤罪を押し付けようとして来ましたよ?

失礼な事ですね!細工ってなんですか!細工であんなジャガイモさんが出来ると知っていたら、もっとしっかり準備をしてあのいっぱいのジャガイモを根こそぎ収穫するのですよ?


「あぁ~~、まぁ、なんだ・・・・」


むぅ?大人達がみんな残念そうな眼差しでこちらへ視線を向けますが、そうしたんでしょう?


「イツキ、言葉に出てるから、しばらく静かにしてなさい」


おおお!お母さんが目頭を押さえながら私に注意をします。どうやらあまりにジャガイモさんが残念すぎて、つい言葉にしていたみたいです。


「我々もあの後聞き取りをしている。あの場所には貴方の娘がジャガイモを植えていた事は解っている」


「ああ、それだけでなく貴方達の以前いた村で何があったかも確認している。特に貴方の家の庭にあった木がどれ程成長が早かったかなど」


「魔物達の襲撃の状況も聞き及んでいるが、それにも関係しているのでは?」


なんでしょう?おっさん達から出るわ出るはの我が家の情報。誰ですか?勝手に人の家の情報を流すの!

冤罪まで含まれていて、まるで我が家が魔物を引き寄せているかのような言動です。

これは、何としても訂正しなければ!

ふんす!っと意気込んで話し始めようとしたら、お母さんに抱えあげられてお隣へと・・・むぅ!なぜ?


「おかあちゃま?あの魔物を必死に私は撃退していたのですよ?」


「うんうん、そうよね~イツキちゃんは頑張ってたのよね?」


流石です!お母さんはあの私の活躍にちゃんと気が付いていてくれたのですね?!

でも、どこで見られていたのでしょう?


「ちゃんと説明しないとなのですよ?イツキは頑張って棒でバシバシ叩いたのですよ?」


「大丈夫よ、お母さんはちゃんとイツキの事解ってますからね」


お母さんの手が優しく私の頭を撫でてくれると、何か他の事がどうでも良くなってきました。

きっと他の人はともかく、お母さんがちゃんと解ってくれていれば良いのです。


お母さんの膝の上でゴロゴロしていると、どうやらお父さん達のお話合いは終了したようです。

ただみんなの表情を見ていると、どうもあんまり良いお話で終わらなかった?


「とにかく、我々とて鬼では無い、今日一晩よく考えてくれ」


一番偉っそうな顔をしていたおじさんが、家を出る時そんな事を言っていました。

一番偉っそうな顔であって、一番怖い顔ではないのです。ここ重要なのです!一番怖そうな顔の人は、終始こっちを睨み付けてましたもんね!子供をあんなに怖い顔で睨む?普通は睨まないよね?

大人げないおじさん達を見送った後、お父さんとお母さんはテーブルに座って難しい顔をしてます。


「村を出る事になる」


「しょうがないわね、大丈夫よ、家族みんなが一緒ならどこでも生きていけるわ」


何という事でしょう!我が家はまたもやお引越ししないとみたいなのです。

でも、これって私のせいなんでしょう。こんな私でも今までのやり取りを見てれば解りますよ。

いくらみんなに誤解だと言っても、疑いは晴れないのでしょうし、あの畑から運び出されていく痩せ細った雑草さんの姿を思い浮かべれば、もしかしたらあのジャガイモさんは私のせいなのかもしれない。


「おとうちゃま、おかあちゃま、ごめんなさい」


さすがに私だって両親にいらぬ苦労を掛ける気など無かったのです。

でも、結果を見れば一目瞭然なのです。


「イツキのせいじゃないさ、大丈夫だ」


「そうよ、大丈夫、な~~んにも心配しなくていいのよ?お母さん達にまかせなさい」


二人の言葉に、涙が溢れだします。そして、街を明日にでも出ていく事になりました。

時間を置けば置くほどに、冬が深くなっていきます。その為、少しでも早く村を離れる方が良いとの事です。ただ、目的地に着いてはお父さん達は解っているみたいなのですが、具体的な事は教えてくれませんでした。


「きっと次の街にはイツキもびっくりするぞ」


「そうね、島にあった村や、この村とは比較も出来いくらい大きい街だから」


うみゅ?そうなのですか、大きな街ですか、でも、そんな良い所があるなら最初からなぜそこに向かわなかったのでしょうか?たぶん、きっと理由があるのでしょう。でも、そこに行かなければならない理由を作ってしまったのは私なのです。


それならば、それならば!私が持つ全ての力を注ぎ込んで、お父さんとお母さんには幸せになってもらうのです!夜のうちにこの村で使ってしまった雑草さん達を回収しないとです、あの雑草さん達も今や私の数少ない武器の一つなのですよ!

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