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1-13:71年目は波乱含み

悩み倍増中の樹です。

何かわたしの楽園が攻められているそうなのです。

ついに魔王の侵攻が始まったのでしょうか?


でも、フェアじゃないと思いませんか?

わたし達武器なんか持ってないですっていうより持てないのですが。

銃でなく、剣だという所に多少の安堵はあるのですが、それで厳しい事には違いありません。


これは拙いです。このままではわたしだって切られて終わりですよね?

子供たちも同様です。だって樹なんですよ?

戦うどころか歩けませんよ?逃げれませんよ?

どうしろというのでしょう?


そんな事を思っていると、次々に傷ついた動物たちが集まってきます。

あぅ、中には手足を失っている子もいます。

怪我してる動物がすっごっく痛々しいです。


モコモコフワフワでつぶらな瞳なんですよ?

なんでそんな酷いことができるのでしょうか?

あ、ご飯ですか?お肉ですか?それなら仕方がないのでしょうか?


でも、そんな事を考えていても何一つ良い計画がたちません。


う~~う~~、人と動物の戦いですものね、それこそ装備の差がって・・・あ、そうですよね。


えっと、まともに戦うと危険ですけど、人って基本的に動物より身体能力って低くないですか?

空も飛べないですし、走るのも遅いですし、厄介なのは道具を使うくらいですよね?


うん、周りの動物さん達が真剣にわたしの話を聞いてくれます。

こんな日が訪れるなんて!いつも蔑ろにされてたわたしの復権の日です!


そうです、ですから道具を使わせなければ勝てます!

夜は火がないと周りが見えないから篝火を炊くと思います。まずこれを消しましょう。

そうすれば圧倒的にこちらが有利です。

あと、こっそり食べ物に毒を混ぜたりとか?忍び込むのはネズミさん達がお得意ですよね?

あと、蛇さん達が茂みに隠れて奇襲とかですか?

ほら、何か勝ち目が見えてきましたよ?


魔王の軍隊だと夜目も利くのでしょうか?不安はありますが、とにかく頑張りましょう!


え?わたしですか?わたしは動けませんからあとは皆さんにお任せですよ?

ただ立っている事しかできない樹に何を期待されるのでしょう?

ねぇ子供達、あなた達も一緒ですよね?


◆◆◆


日が次第に沈み始める。

そこかしこで篝火が炊かれ始め、一部では夕食の用意がなされている。

当初予定されていた以上の時間が掛かった為、残された食料は決して多くはなかった。

幸いにも森へと向かった兵士や、難民達の何割かが食べられそうな植物を見つけてきている。

また、日中の戦闘で倒した魔物達の肉も食べることが出来、その事に数日前までの飢餓に対する恐怖感は薄れていた。


「さすがにすぐ野営地を作るのは無理だったな」


「はい、木の切り出しもまともに出来ておりません。一日二日で出来る作業とは思えません」


「そうだな、しかし明日の朝には多数の死体が転がっている事だろう」


「夜襲をしかけてくると?」


「ふむ、お前は町育ちか、獣の習性を知らないようだな。獣とは夜動くものだ、それ故夜襲云々の前に普通に狩りをする感覚で襲ってくるだろう」


トールズの言葉にパットンは顔を顰める。


「篝火を出来るだけ追加せよ。獣なら火を忌避するだろう。ただ、これが魔物で火を恐れないのであれば諦めろ、暗闇から奇襲を受ければ明らかに人のほうが弱いだろう」


「ならば、指揮官殿は馬車へと避難願います」


パットンの言葉に、トールズは馬鹿にしたように鼻で笑う。


「お前は馬鹿か?今この集団の中で一番戦い慣れしているのは俺だ。襲撃を察知出来るのも俺だろう。曲りなりにもアーツ使いだからな。その俺が寝るわけにはいかん、まぁ日中寝させてもらうさ」


そう告げると集団の中央へと歩いていく。そして、一番ガタが来ている馬車に火をつけるように指示を出した。


「とにかく今夜を凌ぎ切る事だ。明日のことは明日考えろ」


そう叫ぶと、次々に周囲へと更なる指示をだしていく。

その指示を聞きながら、パットンはトールズの優秀さを理解すると共に胸の中がむかむかする物を感じた。

なぜなら、調査隊を中心に避難民達を囲うように配置していく。それは、完全に避難民を囮とする為のものであると理解したからであった。

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