2-29:少ないなら増やせばいいじゃないの
「ジャガイモさんは寂しいの~だから家族がいっぱい欲しい~♪」
お外へ出て、畑を探して走りながら、即興でお歌を作るイツキです。
沢山ジャガイモさんを作るには、それはそれはひろ~~いひろ~~い畑がいるのですよ。
村の中心から離れるように走り続けると、目の前には畑が広がっています。ただ、この畑は基本的に村の共有財産で、村の者達が分担して作業を行っているらしい?その為、勝手に作物を植える事は禁止?
でもですよ?目の前の畑は、すでに収穫の終わった畑なのです。
冬の作物を植えるのかどうかは知らないですけど、数日くらいは間借りしてもいいよね?
「るんたった、るんたった、ジャガイモさんを土に植え、お水をいっぱいあげましょう」
ぬふふ、やる事は単純なのです。穴を掘ってジャガイモさんを植えるだけなのです。
「おっきくな~~れ、おっきくな~~れ」
あとは呪文を唱えるだけ・・・あ、そうだ!おっきくな~れで思い出しちゃいました。
イツキちゃんの変身アイテムもあれば何かに役に立つかもしれないです。ここは植えておきましょう。
「えっと、えっと、種は・・・あった!」
島を出る際に雑草さんから貰ったのです。もともと種でしたからあって当たり前なのですが、種あったのですねと思っちゃいました。ただ、これを植えればまた雑草さんいっぱい生まれるんですよね・・・。
「次は普通の木の実がいいなぁ、お願いですよ」
ジャガイモさんからちょっと離れた所に雑草さんの種を植えて、お水をいっぱいあげときます。
じゃばじゃばじゃばじゃば・・・あとは、明日でいいのかな?
一通り作業を終えた頃に私を探しにデリカ達がやってきます。
うん?なんでしょうか?みんな手にジャガイモさんを1個ずつ持っています。
「イツキ、これあげる!」
「「「「あげる!」」」」
「ほわぁ~~~、良いのですか?ジャガイモさんですよ?蒸かせばホクホク、細く切って炒めても美味しいジャガイモさんなんですよ?バターを落しても、お塩だけでもすっごく美味しいジャガイモさんなんですよ?本当に貰って良いのですか?」
ん?私が本当に貰っていいのか確認をすると、だんだん皆の視線がふらふらし始まました。ついでに何かお腹がぐ~~ぐ~~鳴り始めてます。あ、奥にいる誰だっけ?はジッとジャガイモさんを見ています。
うん、解ります、やっぱりそうなのですね!
「うん、わかった!これは投資なのですね!イツキちゃんに増やして欲しいって言うのですね!」
ぬふふみんな凄いのです。この歳で私の偉大さに気が付いたのですね!これは、全力で頑張らないとなのです。皆の期待に応える義務が指導者にはあるのです!
「さぁ、みんなも思いを込めて、畑にジャガイモさんを植えるのです!」
「「「「「えっ?」」」」」
「イツキちゃんも今そこに植えた所なんです!明日には芽が出て明後日には実が成るかな?」
「いや、ならないって!」
「無理無理!そんなにすぐ実は成らないって!」
何かみんなが一斉に言い始めました。何でしょう?
「イツキ!もしかしてもう埋めちゃったの?」
「う?埋めたんじゃなくて植えたの!」
「それ一緒だから!今から植えてもすぐには無理だよ?っていうか多分駄目になっちゃうよ?」
「ならないよ?」
むぅ、みんなと意見が異なるのです。ここは、私が正しい事を知らしめねばなのです。
ジャガイモさんはきっと私の期待に応えてくれるのです!
「大丈夫だよ?明日にはきっと芽が出て蔓がぐるぐる~~ってなるよ?」
「ジャガイモは蔓できないからな!っていうか育つのに3か月はかかるし、もう時期は遅いぞ」
なんと!レリンさんまで来て全否定なのです!ジャガイモさんはきっと私の願い通り育ってくれるのです!
その為にも皆を納得させないとなのです。
「いいもん!明日になればわかるもん!」
「はぁ、わかった、明日みんなで見に来ようね」
ぬぅ、デリカちゃんが大きな溜息を吐きました。何たる無礼なのでしょうか。
ただ、ここで私に一抹の不安が発生?もし明日芽が出なければちょっと不味い気がしますよ?
ここは、追加でテコ入れしとくべきなんだと思います。
「ここでジャガイモさん応援しとくからみんな帰っていいよ!」
「え~~~見てても何にも変わらないって」
「いいの!」
私の説得が難しい事を悟ってデリカちゃん達は振り向き振り向き帰って行きます。
ただ、重要な言葉を残して!
「お昼には帰って来なさいよ~ご飯無くなっちゃうからね!」
「うん!」
お昼ご飯は大事なのです!お昼まであと時間はどれくらいなのでしょう?
と、ともかく、ジャガイモさんを応援なのです。
「おおきくな~~れ、おおきくな~~れ、蔓にいっぱいジャガイモさん!」
私は歌に思いを込めてジャガイモさんの周りを踊ります!
きっとこれで大きく育ってくれるのです!